内容説明
「子どもの変容」が語られて久しいが、そもそも「子ども」とは一枚岩で語られるものなのか。戦前期の教育制度、少年法、工場法、未成年者飲酒禁止法、公娼制度の成立過程の議論から、子ども像を一枚岩に定義しようとする動きと多様な年少者像のすれ違いやだらしない共存の様を明らかにし、「子ども」をめぐる語りを問い直す。
目次
はしがき
序章 「子ども」の近代を問い直す
1 「子ども」の近代は一枚岩か
2 「揺らぎ」「変容」論の平板さ
3 「新しい子ども社会学」批判の潮流
4 「子ども」の近代を捉える視角
第I部 「子ども」の近代とはいかなるものか
第一章 教育の「児童」・司法の「少年」――「子ども」の近代の成立とその内部の差異
1 「子ども」の成立とはいかなる事態か(1)
2 「児童」の発見・教育の自律――学校教育の年少者像
3 保護と責任のあわい――少年司法の年少者像
4 「子ども」の同型性と差異
第二章 「児童」の構築・放置される外部――「子ども」の近代の成立をめぐる身体と言葉
1 「子ども」の成立とはいかなる事態か(2)
2 「児童」の発見と貧困層の実態への譲歩――明治一〇年代の攻防
3 教育的論理の確立と発達する身体の実体化――明治期後半の展開
4 「児童」をめぐるネットワーク・逃れゆく年少者
5 「子ども」の近代・錯綜する年少者像
第II部 年少者へのまなざしの複層性
第三章 労働力から「児童」へ?――工場法成立過程に見る「児童」の成立の裏側
1 「児童」の成立=「児童労働」の禁止か?
2 教育的論理と資本の論理の対立構図の誕生――明治二〇年職工条例案から第一回農商工高等会議
3 資本の論理の譲歩と「実態」をめぐる攻防――第三回農商工高等会議
4 年齢による教育的論理と資本の論理の線引きへ――工場法成立前夜
5 空白期間なき移行の成立――工場法改正と工業労働者最低年齢法
6 「児童」への囲い込みの恣意的なネットワーク
第四章 フィクションとしての「未成年」――未成年者飲酒禁止法制定過程に見るだらしない「子ども/大人」語り
1 「児童」への囲い込みのあからさまな綻び(1)
2 教育的論理と酒のリアリティ――推進論とその不確かな前提
3 揺れる論理と法と酒――反対論の枠組み
4 論調の転換と法案の曖昧な成立――未成年者飲酒禁止法制定へ
5 蒸し返される議論・空転する言葉――改正論議の四半世紀
6 残る本音・曖昧に運用される制度
第五章 自由意志なき性的な身体――公娼制問題に見る「子ども」論の欠如
1 「児童」への囲い込みのあからさまな綻び(2)
2 自由意志というフィクションと年少者保護の視線の不在――娼妓解放から近代公娼制へ
3 教育的論理への接近と距離――公娼制の完成
4 教育的論理の無力・欲望のリアル――公娼制の揺らぎと国際条約における年齢規定をめぐるせめぎ合い
5 必要とされる身体・すり抜ける言葉
終章 語られない年少者像・語り続けられる「子ども」
1 「子ども」の近代
2 複層性の語られなさをめぐって
あとがき
文献
索引
初出一覧