内容説明
泡粒のように浮かんできては消えてゆく旅先の記憶。ペスカーラ、名瀬、シャトー=シノン、台南、トラステヴェレ、コネマラ、タクナ、長春、中軽井沢……。日常を離れた旅の途上で、人は凝り固まってしまっていた観念や思い込みを脱ぎ捨て、心も躯も身軽になる。こんな時代だからこそ読みたい、活字で旅する極上の20篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
信兵衛
31
いろいろな町を訪ねた時の経緯、その時の状況が合わせて語られており、それは人生の回想に繋がっています。 そこが本書の読み処でしょう。2021/03/16
踊る猫
27
蓮實重彦や吉田健一が書いたような「手すさび」「随筆」を想起しつつ、しかしこの著者が記すものにはそうした「人を食った」「悪意」がないなと思う。こちらが思わずむかついたり笑ってしまったりするような底意地の悪さがなく、代わりにどこか実直な生きづらさ・生真面目さを感じたのだった。その意味では意外とこれは堀江敏幸のような書き手の誠実・篤実な回想に通じるものであり『おぱらばん』『熊の敷石』が好きな人なら気に入るものなのかもしれない。ここにいる、ということそれ自体も疑わしくなり掘り返す記憶がどこかの別世界・妄想の彼方へ2023/08/16
まさ
25
旅の中で出会う街を「さびしい」と表現するその本意は筆者の心の持ちようにあるのだろう。その街でワクワクするような非日常を求めるのではなく、結果として日常に溶け込む場所になっているのだから、しっくりときているのだ。「さびしい」は生きる上での誉め言葉でもあるのだろうな。普段通り、それでよいのだ。2025/05/11
きゅう
17
旅の話が読みたいと言っていたら、本好きの上司が貸してくれた。国内・海外のさまざまな町を旅してきた筆者が、旅の記憶を辿りながら現在における自らの心情を見つめ直す、時間と記憶と精神をめぐる紀行文。何度も足を運んだ町、一度きりの滞在をした町、通り過ぎていっただけの町、その地を訪れた回数や過ごした時間の多寡に関わらず、「さびしさ」を感じた町に惹かれる筆者の気持ちはなんとなくわかる気がする。ただ物珍しい、楽しいだけではなく、心の深いところにちくりとした感覚をもたらすような旅。2021/06/19
びっぐすとん
16
図書館本。初読作家さん(積読の中に著書はあるが)。こんなにあやふやな記憶で、特に名所でもない町について書かれた旅の本は読んだことがない。確かにさびしい。しかし普通の人々が暮らしている町ってそんなものだろう。我が町だって観光に来る人なんかいない。旅の途中、通りすぎる町を見るたびに「私にとっては全く知らない馴染みのない町(非日常)なのに、ここに住む人にとってはここが日常の町なんだ」ということがとても不思議なのを思い出す。旅に行きたくなる本というより天気が悪くて手持ち無沙汰な日に読むのが似合う本。2021/07/29
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