内容説明
▼最初に創造された人、アダムをめぐるイスラームの〈人間探究〉の系譜を辿る。
ユダヤ・キリスト教にも共通し、イスラームでは神に創造された「最初の人間」であるだけでなく、「最初の預言者」として重要な存在である「アダム」。イスラーム神秘主義者、スーフィーたちは、アダムを人間存在の原型・理想として把捉し、「人間とは何か?」という実存的な問いを解明しようとした。これまで顧みられなかったイスラームの「アダム」に「人間学」の視点から迫る、画期的な研究。
目次
序 宗教研究とイスラーム神秘主義
一 宗教学はいかにイスラームを理解してきたか
二 宗教学はイスラームをいかに理解すべきか
三 スーフィズムからイスラーム神秘主義へ──人間性の探求
四 イスラーム神秘主義における人間探求と「体験主義」
五 アダムからみた人間
第Ⅰ部 クルアーンの内的な意味を求めて──アダム神話とその解釈学的想像力
第一章 解釈学的想像力の場としてのアダム
一 アダム神話のコンテクスト
二 クルアーンにおけるアダム神話
三 ハディースにおけるイスラーム人間論
第二章 アダム神話の追体験──「原初の契約」における始源への帰還
一 イスラーム神秘主義における神的合一の表象
二 自己の消滅と神との存続
三 「無始の永遠」への回帰体験とアダム神話
四 選良の一性と「原初の契約」
第三章 イスラームの死生観と人間
一 「原初の契約」における神と人間──創造から終末まで
二 タバリ―のクルアーン解釈における人間
三 人間の生と死に関する五つの解釈
第四章 名を与えられたアダム──生と死のはざまで
一 アダムに授けられた名前──イスラー思想における神名論
二 クシャイリーの神秘主義における神名論
三 『美麗なる神名注釈』における「生を与える者」と「死を与える者」
四 『神の徴しの精巧さ』における生と死
第Ⅱ部 アダムにならいて──イスラーム神秘主義哲学における人間
第五章 イブン・アラビー学派における存在的流出論の展開
一 存在の開けと「自己顕現タジャッリー」概念
二 初期スーフィーたちの「タジャッリー」概念
三 イブン・アラビーの「タジャッリー」概念
四 カーシャーニーの「タジャッリー」概念
五 『霊感の徒が示唆するところを知らしめる精妙さ』における存在顕現論
第六章 霊的権威カリフとしての完全人間
一 『叡智の台座』における霊的権威カリフの位置
二 霊的権威カリフとしての人間アダム
三 完全人間論におけるムハンマドの形而上学的基礎づけ
四 聖者性と人間完成への道──預言者の継承者たち
五 カイサリーの完全人間論におけるカリフ
六 霊的権威カリフとしての聖者
第七章 絶対存在から人間へ──神名の体現者としてのアダム
一 神名の臨在における「アッラー」
二 存在の開けにおける慈悲
三 存在の地平における神と人間
四 完全人間としてのアダムと神名の臨在
第八章 完全人間論の展開──アダムをめぐる神秘主義的人間学
一 男/女の解消とイスラーム神秘主義
二 イブン・アラビーの人間観──完全人間という理念型
三 完全人間の存在論的顕れ
四 ムハンマドとアダム──最初の完全人間
五 人間を創り変える──アダムとイヴのあいだ
結
あとがき
主要参考文献
注
人名・著作名索引
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