内容説明
舞台は江戸時代の下町。腕ききの刺青師・清吉の心には、人知らぬ快楽と宿願が潜んでいた。ある日ふとした折に見かけた娘の足。その娘こそ、彼が憧れる肌の持ち主だった。
1年後、偶然にもその娘が訪ねてきた。娘を麻酔薬で眠らせ、一心に女郎蜘蛛を娘の背中に刺し込む清吉。そして娘は――。谷崎潤一郎24歳の処女作「刺青」。
ガキ大将の仙吉と、良家の子息の信一、信一の姉、そして私。踏みつけたり、姉を縛り上げるなど、4人の少年少女の「遊び」は次第に過激なものとなってゆく。子供の倒錯した世界を描く「少年」。
普通の刺激に慣れ切った私は、女装をして浅草の街中を歩くことに悦楽を覚え始める。だが、映画館の貴賓席で、かつて暫く関係を結んでいたT女と出会い――。秘されたものに魅了された男を描く「秘密」。
耽美、サディズム、マゾヒズムが交錯し、それでいて格調高い物語の数々。著者初期の代表作8編を収録した短編集。
永井荷風による「同時代人の批評」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
60
谷崎初期の短編集です。その世界は妖艶で不思議な雰囲気で満たされていました。耽美、サディズム、マゾヒズムといった変態的要素も、谷崎の手にかかると美しく耽美な空気へと変わるのが素晴らしいです。2021/06/20
まこみや
48
この本に収められるのは谷崎の初期の作品である。出発点にして谷崎はすでに谷崎潤一郎であった。第一にその高踏的、耽美的指向。第二に精神的ないし肉体的嗜虐が快楽へと転じるマゾヒズムの嗜好。第三に残忍不快を描いてもそれを逆手にとって煌びやかな詩情を感じさせる文体。つまるところ谷崎潤一郎は徳川文明と西欧文明の交点に立って(その点では漱石、鷗外、龍之介、荷風と同じだが)、自らの美学と好尚を延長させることで大谷崎へと飛躍していったのだろう。時にそれは権力の睨むところになったにせよ。2024/11/17
そら
43
初期の頃の作品8編。初期だから?いつもの「突き抜けたアホらしさ、バカバカしさ」がまだなくて、8編それぞれ色が違って、バラエティーに富んでいて、ちょっと驚いた。特に最後の2作品「神童」と「異端者の哀しみ」は他の人が書いたのでは?と思ってしまうぐらい。堕落していく青年の内面がテーマで、谷崎潤一郎なのに真面目!と思ってしまった(^_^;)。「少年」の拷問ごっこは引いたわ~。平山夢明みたいなホラー小説の部類と思えば納得できるかも?「悪魔」「続悪魔」はストーリー的にもホラー。どれも引き込まれた。良かったです(^^)2022/01/31
ソーダポップ
41
谷崎文学の最も初期における、八篇からなる代表的短編集。谷崎24歳の処女作「刺青」。そして「少年」や「秘密」など、全編にわたって肉体上、精神上痛切に得られる快楽や、残忍と恐怖によって描かれていました。サディズムとマゾヒズムの世界が格調高く洗練された芸術的感動の作品集でした。2021/06/19
ホシ
23
谷崎の初期短編作品集。寝苦しい熱帯夜に耽美派を読むのも一興にやあるらんと思いましたが、草食系を骨の髄まで自認する小生は別にムラムラするでもなく、昼間の暑気にやられた体を尚更ぐったりさせるだけでした(呆)。ただ最後の『異端者の悲しみ』は良かった。ともすれば貧苦に挫折しそうになる己の魂と向き合い、最後は一縷の光の下に静謐さをもって物語が終結します。貧困は自身を惨めにし、生きる意味を分からなくさせます。貧困問題が取り沙汰される世の中にあって私たちに示唆を与えてくれる作品のような気がしました。2021/07/25
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