歴史学の慰め:アンナ・コムネナの生涯と作品

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歴史学の慰め:アンナ・コムネナの生涯と作品

  • 著者名:井上浩一【著】
  • 価格 ¥3,168(本体¥2,880)
  • 白水社(2021/02発売)
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  • ISBN:9784560097762

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内容説明

皇女にして、西洋古代・中世でただひとりの女性歴史家

歴史学は何のためにあるのだろうか? 私たちがより良い未来を生きるためである。しかし辛い日々を送る者にとって、歴史学が生きる糧となることもあった。歴史学が男の学問だった西洋古代・中世にあって、アンナ・コムネナは、不幸な我が身への慰めを歴史学に見いだした。ビザンツ帝国中興の祖である父アレクシオス一世の治世を描いた『アレクシアス』は、こうして誕生した。
権威ある「緋色の生まれ」としての誇り。皇帝である父への敬愛。皇妃となっていたはずの人生。ヨハネス二世となる弟との確執。アンナは、政治や戦争といった公のことがらについて真実を伝えるのが歴史家の務めであることを承知のうえで、自身の人生や溢れくる思いまでも歴史書に盛り込んだ。
本書は、第一部でアンナ・コムネナの数奇な生涯を語り、第二部では、ビザンツ歴史文学の最高傑作と言われる一方で批判も受けてきた『アレクシアス』を、ビザンツの歴史学や歴史書の性格、ビザンツ知識人にとって歴史学とは何だったのかという文脈から分析する。そして、長らく指摘されてきた年代の誤りの謎や、世界の翻訳者たちが苦心してきた不可解な記述の謎をも考察していく。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ようはん

23
皇帝の弟に対してクーデター未遂事件を起こして修道院に追いやられ、後半生では稀有な存在であった女性歴史家として生きた…というアンナ・コムネナの人生はここ最近で知り読んだのがこの本。彼女の生涯やその著作である父アレクシオス1世の伝記「アレクシアス」の考察で父親への賛美や弟への徹底的な冷遇と歴史家としてはかなりバイアスをかける傾向があったのが解るが、一方で軍事・政治の経験豊富で男性が書くのが常識であった歴史書に対し中世ヨーロッパの女性で挑戦したのは彼女1人だったという点でやっぱり偉業だったのではないかと思う。2022/01/16

六点

23
アレクシオス1世の娘として「緋色の産室に産まれ」「修辞学・哲学・幾何学・音楽を深く学び」2度ほど弟であるヨハネス2世を弑逆しようとした女性である、皇女アンナ・コムネナは後半生を歴史家として生きた。凡百のビザンティン皇女とは大きく異る人生である。井上先生は歴史家としては大きく想像の翼を広げる。この本の行間から、人生を「不幸だ」と嘆きながら生きた、一人の魅力的な女性の姿が浮き上がってくる。巻末の「参考文献抄」もビザンティン帝国の歴史への素晴らしい案内となっている。さあ次は何を読もう?2021/07/30

MUNEKAZ

21
ビザンツ皇女にして歴史家アンナ・コムネナと、彼女が著した父帝の伝記『アレクシアス』を紹介した一冊。「緋色の生まれ」の誇り、弟との政争に敗れての隠棲、愛する夫の死と、自らの人生を「不幸」と形容する彼女が、亡き夫の遺志を継ぎ、偉大な父の評伝を記すことで、心の平穏を得ていく様が情感豊かに描かれる。過去を見つめることが、今を生きる上での大きな糧となる。歴史学の持つ効用が、一人の女性の数奇な生涯を通して伝わってくる内容。また後半部の『アレクシアス』の検証も面白く、歴史学とは何かについて総合的に学ぶことができる。2021/05/12

崩紫サロメ

19
ビザンツ帝国の皇女として生まれ、弟への暗殺未遂以降、学問の道に生きたアンナ・コムネナの生涯とその作品『アレクシアス』を扱う。著者がアンナを「越境する歴史家」として描いている点が印象的。頌詞や悲劇、伝記を取り入れたその著作は一般的な歴史学の範疇からは逸脱している。しかし、史料解釈・批判という歴史学の基礎に立脚したものであることを著者は具体的な箇所を検証する。「越境する歴史学」というのは恩師(フランス近代史)がよく口にしていたものであるが、思わぬところで思わぬ形でそれを考えさせられた。2020/09/14

Toska

16
皇帝の娘にして歴史家という類稀なる女性アンナ・コムネナとその作品を描く。これまで読んだビザンツものの中でも一二を争う面白さ。とにかくアンナの個性が図抜けていて、自意識もプライドも愛憎も権力への意志も学識も全てが破格。これは生き辛かっただろうと思う。彼女を取り巻く人間模様も多彩で、アレクシオス1世に対する見方はかなり変わった(当時の皇帝としては珍しいほど優しい人だったらしい)。マスオさん的ポジションの夫ブリュエンニオス。それから、何と言っても皇族の女性たちの強烈さが印象に残る。2022/12/18

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