ちくま文庫<br> 現代語訳 文明論之概略

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ちくま文庫
現代語訳 文明論之概略

  • ISBN:9784480430380

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内容説明

維新から間もない激動の時代に書かれた『文明論之概略』は、「人類の目指すべき最大の目的」としての文明の姿を鮮やかに描くと同時に、当時の日本が置かれた状況を冷徹に認識して、「自国の独立」の重要性を痛切に説く。物事の本質を見抜き、時代を的確に捉える知性。巧みな例示とリズミカルな文体。福澤諭吉の最高傑作にして近代日本を代表する重要著作が、いま現代語でよみがえる!

目次

はじめに
第一章 まず、議論の基準を定めよ
「議論の本位」とは何か
なぜ議論がかみ合わないのか
深い議論と浅い議論
異端妄説こそが世の中を進歩させる
第二章 なぜ西洋文明を目指すのか
「文明」には段階がある
西洋文明も究極の文明ではない
文明には「事物」と「精神」がある
精神を求めることの難しさ
腕力から智力へ
日本文明と中国文明のちがい
「国体」とは何か
政治の本筋
血統
皇統と国体、どちらが重要か
「惑溺」を払うべし
古さを誇ることの愚かしさ
第三章 文明の本質
文明とは何か
文明以前の段階
自分勝手な基準を文明に押し付けてはならない
「本」と「末」を正しく見分けよ
君主制と合衆政治
政治制度は手段である
第四章 一国の智徳
国の智徳とは何か
人間の心はさまざまに移り変わる
「統計」という方法
原因には「近因」と「遠因」がある
「時勢」を考える必要性
孔子は時勢を知らなかった
楠木正成は時勢に敗れた
時勢を作るもの
時勢論は運命論ではない
第五章 続・一国の智徳
智力の強弱
明治維新が成功した本当の理由
攘夷論は近因、智力が遠因
智力は数では決まらない
スパイほど愚かな手段はない
人が集まれば議論も変わる
習慣の威力
第六章 智と徳の違い
四種類の智と徳
わが国の「徳」は受け身の徳
世の中が進めば私徳では足りない
徳を否定しているわけではない
徳は「内」、智恵は「外」
徳には進歩がない
徳は試験できない
智恵は試験できる
徳の進退、智恵の進退
道徳だけでは不十分
智恵の力を発揮させよ
宗教の広まり方と優劣とは別問題
日本に徳は不足していない
智恵こそが優先課題
宗教は時代で変化する
善人がなす悪、悪人がなす善
智徳論のまとめ
第七章 智徳を行なうべき時代と場所
時代と場所を判断することの困難
古代の人民の扱い
智力の発達
私徳から公徳へ
徳の場所は限定されている
規則と徳は相容れない
規則の効能
第八章 西洋文明の歴史
西洋文明の特徴
ローマ帝国と中世暗黒時代
教会の権力
民主制の要素
君主制の要素
ゲルマン民族による自由独立の気風
封建制の時代
教会の最盛期
市民の台頭
十字軍
中央集権化
宗教改革
人民と王権
第九章 日本文明の歴史
権力の偏重
治者と被治者
政府は変わっても国のあり方は変わらない
人民は政治にかかわらない
人民の地位が上昇しない
独立した宗教がない
独立した学問がない
儒教の限界
武士にも独立の気概なし
権力争いが政治のすべて
第二歩を考えて初歩を踏み出せ
権力偏重は文明の進歩を阻害する
経済の二大原則
日本の税制
蓄財と消費が別々になる害
経済活動に必要な習慣
第十章 自国の独立
文明論の課題とは
日本を支配していた風習
いま休息している余裕はあるのか
国体論の無理
キリスト教の無理
「外国交際」こそが最重要の問題である
品行に与える影響
切実な危機感を持つべし
世界の状況を知るべし
「天地の公道」よりも「報国心」
軍備だけではどうにもならない
「国の独立」こそが目的である
目的と手段
訳者解説

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

75
名前は知っているけど、中身は読んだことがなかった『文明論之概略』。それが現代語で読みやすくなっているのがこの本である。今、読めば、余りの西洋文化への礼賛ぶりに首を捻る。しかし、本書は外国との対等な関係を結ぶべく、国の独立を推奨している。ハリボテとしての文明を目的にするよりもそれを手段にして人々に貢献する事、生得的な徳と後天的な智のそれぞれの効能や規制の大切さ、善人が為す悪と悪人が為す善などを説いている部分が印象深い。2019/06/30

おさむ

51
近代日本史の古典を今さらながら初めて読む。現代語訳が読みやすい。約140年前の思想なのに全く古びていないことに驚愕する。明治の初期にこれだけの主張を展開できる諭吉先生、やっぱりcoolです。さすが1万円札!笑。冷静かつ客観的に日本の置かれた状況を分析し、先ずは自国の独立を最優先させるべきだと説く。自由の気風を重んじ、異端妄説こそが世の中を進歩させる。あの丸山眞男が愛読し、3冊に及ぶ岩波新書の読本を残しただけあります。これからも何度も読み返したい。2017/02/09

姉勤

46
明治8年に著されたとは思えないほどの、人間社会への通底した洞察力。文明とは、文理を進めつつも旧倫を軽んぜず、道徳を深めても教条に溺れず、知の進歩と徳の伸張を両輪として、個人を高め集団に及ぶ。科学技術も法律も伝統も宗教も、人を育てる乗り物であって、それらが主ではないと。付録する西洋文明と日本文明への概論は、最近流行りの、白人的な史観を外れた世界史論を先取りした風にも見える(まあ、戦後に漂白されたか、去勢されたか)。世界大戦も冷戦も共産主義も経ずして辿り着いた結論には、さすが最高額紙幣の顔は伊達ではなく。2017/02/09

ホシ

25
欧米列強が日本に押し寄せる中、危機感を持って、でも、民衆に悲壮感を与えまいとして自国独立の重要性を説こうとした福澤の気迫が伝わる一冊です。「日本は西洋に比べて徳が劣る国という訳ではない。しかし、智は決定的に劣っている。どんな政治体制であろうとも、どんな宗教を信じようとも、まずは古い慣習から脱却し、人民一人ひとりが絶えず智徳を磨いて報国心を持つこと。これが文明国の初歩の姿である」と解しました。現代情勢を考える上でも非常に示唆に富む内容で福澤の博識と先見の明、そして比喩の巧みさに感服するばかりでした。2019/10/26

ロビン

17
明治8年に著された福沢諭吉の文明論現代語訳。漫画「るろうに剣心」の時代設定が明治11年であることを思うと諭吉の先見性の凄みが分かる気がする。古くから儒教で説かれてきた「徳力」「私徳」偏重を批判し「智力」「公徳」の大切さを強調したり、権利意識の醸成を訴えるなど主張自体はほぼ現代では常識的になっていることであるが、しなやかでバランス感覚豊かな姿勢には学ばせられる。日本に公権力に対する私立の勢力がないことを批判する箇所は熱がこもっておりさすが慶應義塾の創立者だと思わせられた。「論語と算盤」と併せ読むといいかも。2019/05/08

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