内容説明
誕生して百二十年余りが経過した映画は,地上のあらゆる言葉と音と映像を統合していくシステムといえる.誕生以来,製作と受容の在り方は恐ろしく多様化し,大衆娯楽にも総合芸術にもなりうるが,そのような映画という表象体系の持つ無限の可能性と論理を,その本質に自覚的な世界中の映画監督を切口に,改めて問い直す試み.
目次
原初の光景とその失墜 クリス・マルケル┴アフリカ映画の始まり センベーヌ・ウスマン┴歴史の塵埃 テオ・アンゲロプロス┴『資本論』を映画にする アレクサンダー・クルーゲ┴アレクサンダー・クルーゲとの対話 竹峰義和・四方田犬彦┴映像の網状組織のなかで ジャン=リュック・ゴダール┴亡命と模像 ラウル・ルイス┴陰鬱な祝祭 アレクセイ・ゲルマン┴家のなかの死 マルコ・ベロッキオ┴零落した神とアイスクリーム ジョアン・セーザル・モンテイロ┴世界の凋落を見つめて デレク・ジャーマン┴少年少女の残酷物語 楊徳昌┴記憶のための戦い ジョスリーン・サアブ┴時間の墓場 タル・ベーラ┴少年テロリストが監督になるまで モフセン・マフマルバフ┴傷魂と転生 陳凱歌┴チェーホフへの到達 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン┴亡霊による歴史の顕現 アピチャッポン・ウィラーセータクン┴廃墟の近傍 王兵┴後記┴初出一覧┴索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mark.jr
5
総括的な映画・映像論というよりも、個別の作家を掘り下げて紹介した本なのですが、かなり国籍バラバラの監督が出てきており、拾い読みするだけでも楽しい。それにしても著者も認めてますが、アメリカの作品・監督が全く出てこない(国を限定してるわけでもないのに)映画本も珍しいです。2023/09/16
chiro
2
著者の40年に渉る映画批評家としての眼から選ばれた監督についての論考。ますその選択が著者らしいもので個人的にはここで取り上げられている監督で作品を身にしているのはゴダールとゴダールとアンゲロプロスくらいだがこの評を見るとその作品に接してみたくなるものばかりであった。2025/05/11