内容説明
ともに歩んできた光あふれる美しい町よ! 復興へのメッセージ――神戸の坂なら、たいてい海がみえるのである……。戦前の水害、灰燼(かいじん)に帰した空襲、そして阪神淡路大震災。神戸は幾度も大きな災厄に見舞われてきた。そのたびに耳にした人々の慟哭と復興への槌音。この美しい港町で歩み続けてきた著者の熱いメッセージが込められた、エッセイ&神戸が舞台の初期短編小説9編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
66
著者の神戸を舞台にした随筆と小説を収録した一冊。神戸の道とか異人館に関する文章は読んでいるだけであの風光が脳裏に蘇ってくるようだが、何より心に染みたのは震災一年後に書かれたもの。未だに高速から落ちそうになっているバスや壊滅した長田はよく思い出せる。震災から三十年を経て当時を偲ぶよすがはルミナリエくらいになっているけど。小説の方は神戸が舞台にこそなっているものの、懐かしき昭和の中間小説といった趣。「遠矢浜心中」で京阪神の地理がアリバイ崩しに利用されているくらいか。とあれ尽きせぬ神戸の魅力に触れれる本でした。2025/05/02
やまほら
1
神戸を舞台にした小説と随筆。小説は、推理小説として読むとあれっと思うのもあるけど、当時の時代を感じさせるのがいいです。2019/05/25
Mark
1
震災1年後のエッセイからは、作者の神戸を愛する気持ちが伝わってきた。今でも当時の記憶は鮮明に残っている。ほんと、神戸空港よりもっとすべきことがあったはずなのに。計画を推し進めた人たちに責任取って欲しい。神戸はなんとかここまで復興したけど、東北はまだまだ助けを必要としている。当時助けてもらった事を今一度思い出して、今自分に出来ることをせねば。2012/12/14
mari
1
震災1年後に描かれた神戸の町が15年を迎えた今読んでも甦ってくる。神戸を知り尽くしている作者だからこそ、その情景が浮かんでくるような気がする。私にとっても、神戸は大切な「ふるさと」。2010/01/20
yo
0
陳舜臣さんの作品は、ずいぶん昔に、中国が舞台の歴史小説を読んだくらいしか無い・・・と思う。何を読んだかも覚えていない(^^) 「江戸川乱歩賞」受賞作家であることは今回初めて知った。収められている短編小説も歴史小説とは違う、ミステリーっぽい雰囲気のものが多い。 出て来る地名も馴染みのあるところが多いのだが、僕が生まれる前の時代設定なので、そのギャップも面白い。 著者の神戸への愛情が溢れている作品。2008/01/26