内容説明
聖母マリアの名を冠した医院を経営し、慈善活動でも注目される美容外科医の深淵貴夜には、封印した過去があった。最愛の人に裏切られ、救いの手を差し伸べる人には喰いものにされ、絶望の淵にあったとき、「ずっとあんたを想ってた」と、彼女の過去を知る男が現れる。暗闇から這い上がろうと愛を葬るとき、彼女の中で善と悪が反転する――世間からこぼれ落ちていかざるを得ない人たちの生を、誰もが陥るかもしれない悪を通して描き出す。死の意味とは?人間の剥き出しの欲望を描ききった『狂歌』で第10回日経小説大賞を受賞した著者の最新作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
221
タイトルが気になり、読みました。佐伯 琴子、初読です。 もっと医療ミステリっぽいのかと思いきや、少し【読メエロ部】的な要素も入ったエンタメ小説でした。主人公達がナチの残党のようにアルゼンチンを目指すのか良く解りませんが、アルゼンチン・タンゴが好きなので、許します。2021/04/25
モルク
108
封印した過去をもつ美容外科医の貴夜は、権力者の庇護を受け野心的に事業を展開していた。夫が交通事故で植物状態に…。生と死を考えさせるテーマである。なんとか命だけは…と、延命に走った家族も、時の経過とともに疲弊しその思いも変化してくる。一度選択した以上後戻りはできない。安楽死、尊厳死といっても画一的ではなく家族の事情も様々。だが、貴夜たちの行為により薄っぺらいものとなる。最後まで読みきれるかと何度も挫折の危機に。何とか読みきったが、頭の中をアルゼンチンタンゴだけが流れていた。2021/07/01
akiᵕ̈
54
この物語のストーリー性、言葉の表現、登場人物なにひとつ、共感できず。大きな括りでのテーマは尊厳死、延命についてなんだけど、どの人も自分勝手で、特に主人公である美容外科医の貴夜が読み進めていく程にその狂気っぷりがある意味ホラー。帯に彼女には“封印した過去があった”とあり、どうやって貴夜という人物が出来上がったんだろうと期待するも、特に深堀なく、あまりに薄っぺらくお粗末感が否めず。本屋さんで、日経小説大賞受賞第一作という帯にも興味を持ち、初読み作家さんだったけど、とても読みづらく難儀しました。(苦笑)2021/03/10
そら
51
美容外科医の貴夜はしたたかに権力者を後ろ楯に野心を募らせていく。冒頭から深夜枠の淫靡なサスペンスを見ているような展開に戸惑いながらもせっかくなので読み進めていく。アルゼンチンタンゴやマリアへの崇拝など、かなり個性が強めで読者の好みが別れるような軸があり、結論として人工呼吸器を装着した延命に対する是非を問題定義としたサスペンスだった。猟奇的になっていくストーリーに結末が気になり読了したが、目まぐるしい展開がちょっとくどかった。2021/05/16
長くつしたのピッピ
20
新聞の書評がよかったので手に取った。整形外科医の苦悩かと思いきや、命の選別や安楽死の是非へとつながり、脈略が無く、読んでいて疲れた。テーマに一貫性が無かった。2021/06/04