ちくま新書<br> 日本の教育はダメじゃない ――国際比較データで問いなおす

個数:1
紙書籍版価格
¥1,012
  • 電子書籍
  • Reader

ちくま新書
日本の教育はダメじゃない ――国際比較データで問いなおす

  • ISBN:9784480073716

ファイル: /

内容説明

昨今、メディアや識者からは、日本の教育に否定的な意見ばかりが目立つ。その結果として、教育現場の実態とはかけ離れた教育政策にすがりついてしまう。しかし巷間言われるように、日本の教育は本当にダメなのだろうか? 国際比較データを駆使して新しい姿を描き出す。思い込みを解きほぐし、不安や疑問に答え、未来に向けて提言をする。専門分野も国籍も異なる気鋭の研究者2名が、教育をめぐる議論に新しい視点を提供する。

目次

はじめに
日本の教育を壊さないために
他国との比較から日本を見る
完璧な住宅などない
本書の対象
Ⅰ 日本教育の通説を疑う
第1章 学力は本当に低いのか?
通説1 知識がない
学力を比較する目的
「20世紀型学力」を比較する
なぜシンガポールに勝てないのか?
通説2 創造力がない
「新しい学力観」「ゆとり教育」「アクティブラーニング」
「創造性」を測るピザ
実は創造性が高い東アジア諸国
通説3 問題解決ができない
解決策を導く力
日本は協同的問題解決が得意?
通説4 学力格差が大きい
基本事項はわかっている
社会階層と学力
「ほどほどに不公平」な日本
通説5 大人の学力が低い
日本の大学生は勉強しない?
大人になっても高い学力
「素晴らしい」日本の大学生
通説6 昔に比べて学力が低下している
低下傾向はない
学力低下とゆとり教育の撤回
ゆとり教育撤回には根拠がない
結論 日本は学力が高い
問題があるのは大人のほう?
日本社会の未来と教育
第2章 教育の代償は大きいのか?
通説7 勉強のしすぎ
子どもたちの生活
少ない勉強時間
社会階層の高い子は勉強しすぎ?
受験地獄は存在するか?
勉強しないのに高い学力
自国を見るのは難しい
通説8 高い学力は塾通いのおかげ
受験のプレッシャー
塾通いの前から学力は高い
通塾率が上がっても学力は同じ
通説9 授業が古臭い
日本に学ぶアメリカ
日本の授業の質の高さ
見た目に騙されてはいけない
通説10 勉強に興味がない
興味と学力は両立しづらい
学びに必要な強制力
通説11 自分に自信が持てない
自信がなければダメなのか?
「自己」認識の違い
キリスト教の「自己」
通説12 学校が楽しくない
日本の子どもは学校を楽しんでいる
「満足」って何?
通説13 いじめ・不登校・自殺が多い
日本におけるいじめの実態
不登校とドロップアウト
若者の自殺率
通説14 不健康
肥満の少ない日本
体育と給食が健康をつくる
結論 教育の代償は大きくない
日本の子どもたちの現状
「驚くべき」データ
Ⅱ 日本教育を壊さないために
第3章 もうそういうの、やめませんか?
提案1 現実を見ない教育政策をやめよう
日本の教育はけっこういい
「住人」「管理会社」「不動産仲介者」の喩え
提案2 「安定した不安」を持ち続けよう──保護者へ
メディアはいつも批判的
アクティブラーニングは何のため?
「安定した不安」を持ち続ける
教育への不満の内実
国際的な視野を持つ
あなたたちはダメじゃない!
レッテルよりも現実を見よう!
提案3 レベルの高さに気づこう──学校の先生・教育行政へ
日本の先生は優秀
抜群に忙しい日本の先生
まず落ち着きましょう
世界に評価される授業研究
世界から日本を見よう
なぜ教員免許更新制を導入?
教員のいない教育政策
経済界・政界からの圧力
経済界が問題では?
学力と経済の「神話」
反論はデータを駆使して
提案4 もっと世界に発信を──教育研究者・メディア関係者へ
批判的な教育研究者たち
アメリカからの輸入品
日本の方がいいのになぜ模倣するのか?
なぜアメリカなのか?
問題山積のアメリカ
国際比較から日本を見よう
もっと世界に発信を
日本を肯定するのは「国家主義的」か?
国家主義を防ぐために
国際比較データを疑え
メディアへの提案
単純な「物語」を描かない
あとがき
参考文献・データ

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

りょうみや

23
タイトルどおり多くの国際比較データで、日本の教育は悪くない、むしろ良いことを示している。そもそも完璧な教育などない、日本の教育者による教育評価の大半は批判前提の過小評価、経済界などは何でも教育制度のせいにするなどが主な主張。この本を読んで、日本の教育制度に足りない面は、どのような教育がよい教育かを考えるという「教育学」ないし「教育哲学」の教育だと改めて思える。2021/03/07

キョートマン

15
タイトルの「ダメじゃない」という部分が良く内容を表していると思った。日本の学校教育は日本人のイメージ以上によくやっているという印象を受けた。ただ、それはボトムアップの話であって、優秀者をさらに伸ばすような観点の話はなかった。日本の教育は大衆をうまく教育できているようなので、次は金の卵をもっと優遇する方向にも力をいれるべきだと個人的には感じた。2021/04/29

寝落ち6段

14
概ね支持できる内容だ。最新のPISAテストでも日本は優秀な結果を出している。欧米の教育施策が上手くいっていないこともある。しかし、諸手を挙げて賛同してはいけない。本書でも述べられているが、飽く迄、登場するデータは選ばれたものであり、データ自体も状態の一部を切り取ったものに過ぎないということを読者は理解しないといけない。本書が最も大切にしているのは、物事を鵜吞みにせず、思い込まず、多角的多面的に比較検討することである。教育は、人格の形成を目指すもの。それを念頭に置き、全国民が考え合うことが大切だと思う。2024/03/20

kenitirokikuti

13
著者らは、台湾で教えている日本人と、日本で教えているアメリカ人である。日本では「教育に問題がある」と意識的に無意識的に広く信じられているのだけど、ではじっさいに国際比較データを見るとどうなのか。著者たちでさえ、スコアの良さに驚かせられたのだという。著者らは第二次安倍政権下の教育改革に批判的なのだが、そんな彼らでも、現在の日本の教育の良さについて取り扱うと、日本側から「国家主義的だ」と非難の声が上がるそうな▲あと、どうも学力と経済成長ってそんなに繋がりがないらしい。2021/02/27

ATS

9
いままでの日本の教育が国際的にどんな状況であるかをピザやティムズなどのデータをもとにして解説している。結論はタイトルあるように日本の教育はまぁまぁうまくいっているよう。勉強時間なども過剰に多いわけではないのに成績はよい。日本の教育問題は教師側の労働環境の改善であろうと思う。日本の教師の労働時間は諸外国と比してべらぼうに多いのである。部活動や事務処理など分業化することでもっと授業などに資源を割くことができるはず。なんとなくで改革を断行することも慎重になるべき(教師の更新制導入など)。示唆深い本であった。2021/03/16

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/17321591
  • ご注意事項

最近チェックした商品