ちくま新書<br> アメリカを動かす宗教ナショナリズム

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ちくま新書
アメリカを動かす宗教ナショナリズム

  • 著者名:松本佐保【著】
  • 価格 ¥770(本体¥700)
  • 筑摩書房(2021/02発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480073785

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内容説明

アメリカの社会、政治、外交を考える上で、宗教、すなわちキリスト教の役割ははずせない。伝統的なキリスト教が衰退する一方で、プロテスタントの非主流派「福音派」が政治化・多様化し、それがトランプ前大統領誕生へとつながり、世界に大きな影響を与えたのだ。福音派の歴史や信仰から現代社会に与える影響、アメリカでの宗教ロビーの役割をわかりやすく解説。新型コロナ感染症に対するカトリック、福音派の動きや、2020年大統領選挙に与えた影響も盛り込む。

目次

はじめに
第一章 トランプ再選の鍵を握っていた「福音派」
五月に起きた「ブラック・ライブス・マター」暴動
聖書を原理主義的に解釈する福音派
白人ナショナリズムと結びついた福音派の歴史
トランプを支持した福音派の労働者階級と中流の白人たち
州や地域による人種差別と宗教差別の違い
福音派カリスマ牧師たちとメガ・チャーチ
政治とつながってきた福音派大学の系譜
第二章 「神の国アメリカ」で高まる宗教ナショナリズム
政治以外の世界でも宗教が身近な「神の国」
人口二%のモルモン教徒と三%のユダヤ教徒の存在感
重要性を増してきた「豊かな南」
宗教保守的な状況が続く地帯「バイブル(聖書)・ベルト」
多民族国家ならではのエスニック・マイノリティ
中絶問題が政治に与える影響
宗教保守にとっての重要な争点、進化論否定
キリスト教の伝統的な道徳観に反するLGBT問題
第三章 いつから宗教票が大統領選挙で重視されるようになったのか
二〇一六年のトランプ勝利は白人の福音派が要因
カーター大統領の裏切りにより「政治化」した福音派
福音派の「偉大なる大統領レーガン」と共和党への寝返り
レーガンの福音派票動員と選挙資金集め
福音派票の取り込み作戦
ヘリテージ財団創設者によるキリスト教保守ロビーの始まり
ジェリー・ファルウェルの宗教帝国「モラル・マジョリティ」
キリスト教右派最大のロビイスト、ビリングスの暗躍
福音派を票田として最大限に取り込む仕組み
大統領選挙と共に成長してきたメガ・チャーチ
カトリックの保守化から「保守票」の形成
宗教票動員戦略のゆくえ
第四章 宗教ナショナリズムが動かすアメリカ政治
福音派が望む選挙公約を実現したトランプ前大統領
トランプ政権を支えた宗教三巨頭
白人福音派の七六%が支持したイスラム教徒の入国制限
不法移民に対抗するメキシコとの国境の壁
宗教団体の政治活動を可能にする「ジョンソン修正案」の廃案
大統領選挙に多大な影響を及ぼす「家族調査評議会」
オバマケアの廃案
「宗教の自由政策」の政治・外交的な意味
福音派の支持を狙ったエルサレムへのアメリカ大使館移転
キリスト教シオニズムの拡大とアメリカ政治への影響力
対中東政策に影響力を与える団体「AIPAC」
イスラム系過激組織を脅威とするキリスト教シオニスト
エルサレムへの大使館移転の国内外での政治的評価
保守とリベラルが拮抗する最高裁判所判事の指名
第五章 世界の宗教リーダーを目指すアメリカ「宗教の自由」外交
国際協調を重視しないトランプの唯一の連携は「宗教」
外交政策としての「国際的宗教の自由法」の起源
国連で世界に向けて宗教迫害を批判
対中国強硬外交は、「宗教の自由外交」のため
「国際的宗教・信教の自由促進行政命令」に署名
中国の法輪功信者に対する迫害
貿易戦争は宗教戦争
宗教と安全保障との関係
第六章 「宗教と科学」の対立は、アメリカをどう動かすか
トランプ支持層のキリスト教福音派は科学と対立
コロナ死者数倍増へのトランプ批判
科学に積極的なカトリック教会と現教皇と親しいバイデン
環境問題を含むバイデンの選挙公約
バイデンの「グリーン・ニューディール政策」
宗教と科学の正しい対話構築の重要性
トランプは何に負け、バイデンは何に勝利したのか
あとがき
メガ・チャーチ全米ベスト20
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

南北

55
アメリカの大統領選に大きな影響を与える要素の1つであるプロテスタントの福音派について分析した本。アメリカ南部の諸州にはメガチャーチと呼ばれる伝道スタイルがあるが、カリスマ牧師に率いられ、週末の平均信徒数が1万人以上のところもあり、大統領選にも大きな影響を与えている。資産家からの寄付で社会福祉活動を行うところも多く、ヒスパニック系住民もカトリックから福音派に改宗する人もいるようだ。今回の共和党候補はトランプ前大統領に決まりそうだが、民主党候補も含め、次期政権への対応策を今から考えておく必要があると思う。2024/02/13

HANA

53
トランプ元大統領の当選でにわかにクローズアップされたアメリカの宗教右派。本書はその歴史から状況、それによって動かされるアメリカ外交などを解説した一冊。一口に政治に絡む宗教といっても福音派からカトリック、保守からリベラルと様々な要因が絡み合って、日本の報道で解説されているようにキリスト教=保守という単純な構図ではアメリカという国を解読できないのがよくわかる。あとID説はよく知ってたけど、アメリカの政治に付き物のロビー活動を始めたのが福音派とは知らなかったなあ。宗教から見たアメリカ政治面白く読めました。2021/02/16

yutaro13

35
宗教から見る米国政治。プロテスタント非主流派「福音派」の動向について詳しい。福音派が支持する政策を掲げたことがトランプ政権誕生の一因だが、それは宗教保守が政治化した際レーガンが取った戦略だった。イスラム系移民排斥、エルサレムへの大使館移転など政策を次々に実行。結果的にはイスラエルとアラブ諸国の歴史的和解に繋がる。中国には宗教の自由外交を掲げて圧力をかけ、内政では保守系の最高裁判所判事を指名し宗教ロビーの支持を得る。宗教政策では一定の成果をあげたトランプが敗れたのは、コロナ軽視と経済的打撃が要因との分析。2021/05/15

ホシ

27
キリスト教福音派を中心に宗教が米国政治に及ぼす影響を解説します。宗派、地域、人種、社会的位相、政治信条などがファクタとなって米国政治は複雑な様相を見せます。全て整理できた訳ではありませんが、かなり理解が進みました。そもそも「福音派」という宗派があるのではないんですね(汗;想像をはるかに超えて米国は宗教と政治が「ズブズブ」でした。日本の創○学会ウンヌンがかわいいレベル…。逆に日本は宗教が政治に接近することに異様なまでに警戒する国なのかな?とも思いましたね。2021/06/29

崩紫サロメ

26
バイデンの大統領選出、それにトランプが訴訟を続けている状況で書かれたもの。トランプの支持基盤となった福音派についての考察であるが、それほど単純なものではなく、カトリック保守派、正教会保守派などが絡み合って「宗教ナショナリズム」を形成しており、福音派のカーターの政策を「裏切り」と感じたらレーガンを支持してきたし、現在も反中意識からウイグルのイスラム教徒を支持するなどの行動が見られる、「労働者の尊厳」は極めてキリスト教的な概念でありながら、福音派と資本主義が一体化しており柔軟な対応ができなかったことも指摘。2021/06/01

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