ちくま新書<br> ヨーロッパ冷戦史

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ちくま新書
ヨーロッパ冷戦史

  • 著者名:山本健【著】
  • 価格 ¥1,210(本体¥1,100)
  • 筑摩書房(2021/02発売)
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  • ISBN:9784480073730

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内容説明

ヨーロッパはいかに二つの陣営に分断され、ベルリンの壁はどう築かれたか。ベルリンの壁崩壊から、なぜ分断が一挙に統合へと向かったのか。ドイツ問題を軸に、東西間の対立と緊張緩和の過程を描き、冷戦の国際政治力学を浮き彫りにする。さらには、軍事的・経済的な対立と緊張緩和が交錯するドラマが活写される。ブレグジットで欧州統合が大きな曲がり角を迎え、世界が再び地域主義の様相を呈しているいまこそ参照すべき、最新研究に基づく現代ヨーロッパ国際政治史入門。

目次

はじめに
第一章 ヨーロッパの分断──一九四五~四九年
1 鉄のカーテン
ソ連の戦後構想
チャーチルのパーセンテージ協定
ポーランド問題
ドイツの戦後処理
ドゴールのフランス
ベヴィンのイギリス
2 ドイツをめぐる対立
フランスとソ連の対独政策
イギリスの対独政策
アメリカの対独政策
バイゾーン
3 分断ヨーロッパの制度化
トルーマン・ドクトリンか共産党の排除か
マーシャル・プラン
欧州経済協力委員会とコミンフォルム
4 東西ドイツの誕生
ソ連のドイツ占領政策
ロンドン勧告と通貨改革
ベルリン封鎖と大空輸作戦
東西ドイツの誕生
ドイツ問題
【コラム1】チトーの冷戦──ユーゴスラヴィアの独自外交
第二章 冷戦の軍事化と経済的分断──一九四九~五三年
1 第三勢力からNATOの創設へ
第三勢力構想
チェコスロヴァキア政変
北大西洋条約へ
2 ヨーロッパの経済的分断
ソ連による経済的東欧支配
西側の経済秩序と経済冷戦
西ヨーロッパの統合
3 ドイツ再軍備問題
ソ連の核実験
朝鮮戦争の影響
プレヴァン・プラン
4 東側陣営の対抗
大軍拡とプラハ宣言
スターリン・ノート
二つの陣営
【コラム2】北欧の冷戦──NATOか中立か
第三章 二つのドイツと二つの同盟──一九五三~五五年
1 チャーチルの冷戦
チャーチルの首脳外交提案
禁輸の緩和
ニュールックと核依存
2 ドイツと欧州安全保障をめぐる対立
東ベルリン暴動
アデナウアーと外相会議の提案
ソ連の対案
ベルリン外相会議
3 EDCの挫折、ワルシャワ条約機構の誕生
ソ連のNATO加盟提案
EDCの挫折
ワルシャワ条約機構の誕生
4 二つのドイツとハルシュタイン・ドクトリン
ジュネーヴ四巨頭会議
ソ連と二つのドイツ政策
ハルシュタイン・ドクトリン
デタントの三つの領域
【コラム3】ヨーロッパ・デタントの傑作──オーストリアとハンガリー
第四章 東西両陣営の動揺──一九五六~五八年
1 ポーランドとハンガリーの一九五六年
ラジオ・フリー・ヨーロッパ
スターリン批判とポーランドの一〇月
ハンガリー革命
2 西ドイツの核武装問題
英仏共同三段階軍縮提案
ラドフォード・プランと西ドイツの反応
ユーラトム
スエズ戦争
3 核共有・非核地帯・反核運動
アメリカと核共有
仏・伊・西独協力の終焉
ラパツキ・プラン
反核運動
4 経済・文化交流デタント
英ソ・仏ソ首脳会談
西独・ソ連通商協定
動き始めた経済文化交流デタント
【コラム4】ハルシュタイン・ドクトリンの発動──ユーゴスラヴィアと西ドイツ
第五章 第二次ベルリン危機と同盟の分裂──一九五八~六四年
1 第二次ベルリン危機勃発
分断都市ベルリン
フルシチョフの最後通牒
西側の分裂
ベルリンの壁
2 ドゴールの冷戦
ドゴールの国際政治観
フーシェ・プラン
イギリスのEEC加盟問題
ドゴールのノンとエリゼ条約
3 東欧諸国のソ連への反発
コメコン始動
コメコン改革とルーマニア
キューバ危機と東欧諸国
4 核管理をめぐる陣営内政治
部分的核実験禁止条約
多角的核戦力と核拡散防止条約
ソ連の西ドイツ接近
冷戦の共同支配体制
【コラム5】ドイツの冷戦と第三世界──「民族自決」対「新植民地主義」
第六章 対話と軍拡の時代──一九六四~六八年
1 二国間デタントの進展
西ドイツの二国間デタント
英米の二国間デタント
ドゴールのデタント
2 東側の軍拡と多国間デタント構想
平和覚書
安保会議構想
ウルブリヒト・ドクトリン
東側陣営の軍拡
3 西側の軍拡と多国間デタント構想
NATOの戦略と軍拡
アルメル報告
レイキャヴィク・シグナル
多角的核戦力から核拡散防止条約へ
4 プラハの春
チェコスロヴァキアの改革
ワルシャワ条約機構軍の介入
通常業務
二国間デタントと陣営
【コラム6】地中海・バルカンの冷戦──反ヨーロッパ・デタントの国々
第七章 ヨーロッパ・デタント──一九六九~七五年
1 ブラントの東方政策
ブラントの構想
新東方政策
ポーランドとワルシャワ条約
基本条約と国交正常化
2 欧州安全保障協力会議
西側陣営の変化
ベルリン問題
安保会議と軍縮会議
ヘルシンキ宣言
3 ECとコメコン
ECの成功、コメコンの失敗
ECと冷戦
4 石油危機とヨーロッパ
東西貿易と東欧諸国の経済
石油危機の影響
債務危機
多国間デタント
【コラム7】フィンランドの冷戦──中立国のバランス外交
第八章 混在する緊張と緊張緩和──一九七六~八四年
1 ヨーロッパ・デタントの停滞
ベオグラード再検討会議
軍縮会議
ユーロミサイル危機と二重決定
2 ポーランド危機
「連帯」誕生
ソ連の介入への懸念
戒厳令布告
経済制裁をめぐる米欧対立
3 マドリッド再検討会議
人権と軍縮
休会中の米欧合意
マドリッド会議の妥結
二重決定の実施
4 両ドイツ間のデタント
シュミットとホーネッカー
コールとホーネッカー
陣営の持続
【コラム8】ソ連のアフガニスタン侵攻とEC諸国──幻の中立化構想
第九章 終焉の始まり──一九八五~八九年
1 ゴルバチョフと西欧諸国
ゴルバチョフの新思考外交
ストックホルム軍縮会議
ヨーロッパの核軍縮
ゴルバチョフと西欧諸国の首脳たち
2 ゴルバチョフと東欧諸国
矛盾に満ちた東欧政策
重荷となる東ヨーロッパ
ヨーロッパ共通の家
3 ポーランドとハンガリーの一九八九年
ポーランドにおける「連帯」の復活
ポーランドの準自由選挙
非共産主義者の首相誕生
ハンガリーの急進的改革
鉄のカーテンの綻び
4 NATO諸国の一九八九年
ブッシュ政権と東ヨーロッパ
短距離核戦力と通常戦力の軍縮
一九八九年の陣営
【コラム9】バルト三国の独立と西側の対応──自決の原則はどこへ?
終章 ドイツ再統一とヨーロッパ分断の終焉──一九八九~九〇年
1 ベルリンの壁崩壊
ドイツ問題の復活
東ドイツの破綻
壁の崩壊
ブルガリア、チェコスロヴァキア、ルーマニア
2 ドイツ再統一へ
コールの「一〇項目提案」
ブッシュとサッチャーの反応
ミッテランのヨーロッパ国家連合構想
ゴルバチョフのドイツ再統一受容
東ドイツの選挙
ドイツ再統一とヨーロッパ統合
3 分断の終わり
アメリカの安心供与
ミッテランの拒否
ドイツとヨーロッパの分断の終わり
4 ヨーロッパ冷戦とは何だったのか
安定をめぐる対立
ヨーロッパ冷戦の終焉
一つのヨーロッパへ
あとがき
参考文献一覧
人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬参仟縁

30
新書としては分厚い類の本。分冊して上・下巻にしてもよかった。ユーラトムは、ECSCの生みの親ジャン・モネの発案。ECSCの原子力エネルギー版(178頁)。過去問で仄聞した。初見なのは、MLF。フルシチョフがNATOの多角的核戦力容認の姿勢。東側で問題化。西独がMLFに含まれていたため(237頁)。MLFとは、核戦力を持つ多国籍軍(238頁)。米国はMLF実現に見切りをつけ、NPT実現を目指すようになったという(279頁)。2021/05/11

kk

21
第二次大戦の終結からドイツの再統一に至るまで、欧州における冷戦の展開を簡潔に紹介。主な出来事を点描しながら、その時々のイシューや各国の思惑などを手際よく説明。取り上げる事柄の選択や記述の深さなど、そのバランスの良さに感心させられること頻り。お話の縦糸として、陣営間対立と陣営内団結の関係などに着目。冷戦期に青春時代を過ごしたkk、冷戦のことは何となくわかってるよーな気がしていましたが、これを読んで、知らなかったこと、勘違いしてたことが多々あることに気付かされました。頭が整理できて良かったです。2023/01/24

MUNEKAZ

19
タイトル通り「ヨーロッパにおける」冷戦史。やはりキーになるのはドイツ問題で、「統一ドイツ」か「二つのドイツ」かの論争が、あらゆる問題とリンクされ、東西の歩み寄りを妨げる要因となっている。逆にこのリンケージが外れた分野から、「緊張緩和」の流れが生まれているのも面白い。また陣営内での互恵関係が盛んな西側陣営に対し、そうしたものが薄い東側陣営というのも印象的。西欧に招かれたアメリカに対し、東欧を占領したソ連というスタートの違いが全てか。EUやNATOの東方拡大も、ソ連(ロシア)の徳のなさの証明に思える。2022/03/23

モリータ

12
◆2021年刊、著者は西南学院大学法学部教授、専門はヨーロッパ外交・国際関係史。◆米ソ対立は背景とし、東西ヨーロッパ対立を焦点にした冷戦史。軍事、経済、政治の三つの領域における対立と緊張緩和を中心に記述(特に経済領域=東西貿易の発展についてはより詳細)また各国史の寄せ集めではなく東西「陣営」のあり方(その内部の協調と対立、多国間デタントか二国間デタントか)を描きながら、対立を乗り越えるための構想や提案も丁寧に紹介される。◆ドイツ問題がキーポイント。核・ミサイル等の軍事戦略・技術については類書で補いたい。2021/08/19

無重力蜜柑

11
旧東側諸国の史料も使い第三世界にも目を向ける「グローバル冷戦史」の研究がますます盛んになる中、敢えて「ヨーロッパ冷戦史(≠米ソ冷戦史)」という視座から書いた本。アジアやアフリカ、南米と比べたヨーロッパ冷戦の特徴は、「東西対立」という枠組みが内部対立を孕みつつも冷戦末期まで強固だったことであり、陣営内の結束が東西デタントと相関関係を持って浮動したことらしい。陣営の結束を固めようとすると東西関係は緊張し、デタントを進めようとすると結束が揺らぐ。特に焦点となるのは東西ドイツの立ち位置である。2022/05/13

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