講談社現代新書<br> フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔

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講談社現代新書
フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔

  • 著者名:高橋昌一郎【著】
  • 価格 ¥979(本体¥890)
  • 講談社(2021/02発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065224403

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内容説明

21世紀の現代の善と悪の原点こそ、フォン・ノイマンである。彼の破天荒な生涯と哲学を知れば、今の便利な生活やAIの源流がよくわかる!

「科学的に可能だとわかっていることは、やり遂げなければならない。それがどんなに恐ろしいことにしてもだ」

彼は、理想に邁進するためには、いかなる犠牲もやむを得ないと「人間性」を切り捨てた。

<本書の主な内容>

第1章 数学の天才
――ママ、何を計算しているの?
第2章 ヒルベルト学派の旗手
――君も僕もワインが好きだ。さて、結婚しようか!
第3章 プリンストン高等研究所
――朝食前にバスローブを着たまま、五ページの論文で証明したのです!
第4章 私生活
――そのうち将軍になるかもしれない!
第5章 第二次大戦と原子爆弾
――我々が今生きている世界に責任を持つ必要はない!
第6章 コンピュータの父
――ようやく私の次に計算の早い機械ができた!
第7章 フォン・ノイマン委員会
――彼は、人間よりも進化した生物ではないか?

********

ノイマンがいかに世界を認識し、どのような価値を重視し、いかなる道徳基準にしたがって行動していたのかについては、必ずしも明らかにされているわけではない。さまざまな専門分野の枠組みの内部において断片的に議論されることはあっても、総合的な「フォン・ノイマンの哲学」については、先行研究もほとんど皆無に等しい状況である。

 そこで、ノイマンの生涯と思想を改めて振り返り、「フォン・ノイマンの哲学」に迫るのが、本書の目的である。それも、単に「生涯」を紹介するだけではなく、彼の追究した「学問」と、彼と関係の深かった「人物」に触れながら、時代背景も浮かび上がるように工夫して書き進めていくつもりである。
――「はじめに」より

********

 ノイマンの思想の根底にあるのは、科学で可能なことは徹底的に突き詰めるべきだという「科学優先主義」、目的のためならどんな非人道的兵器でも許されるという「非人道主義」、そして、この世界には普遍的な責任や道徳など存在しないという一種の「虚無主義」である。

 ノイマンは、表面的には柔和で人当たりのよい天才科学者でありながら、内面の彼を貫いているのは「人間のフリをした悪魔」そのものの哲学といえる。とはいえ、そのノイマンが、その夜に限っては、ひどく狼狽(うろた)えていたというのである。クララは、彼に睡眠薬とアルコールを勧めた。          
――第5章「第二次大戦と原子爆弾」より

********

人類史上 最恐の頭脳!

目次

はじめに 人間のフリをした悪魔
第1章 数学の天才
――ママ、何を計算しているの?
――獅子は爪跡でわかる!
第2章 ヒルベルト学派の旗手
――フォン・ノイマンに恐怖を抱くようになりました!
――君も僕もワインが好きだ。さて、結婚しようか!
第3章 プリンストン高等研究所
――ジョニーはアメリカに恋していた!
――朝食前にバスローブを着たまま、五ページの論文で証明したのです!
第4章 私生活
――ゲーデルを救出すること以上に、重大な貢献はありません!
――そのうち将軍になるかもしれない!
第5章 第二次大戦と原子爆弾
――どうして自分には、彼にできたことが見通せなかったのか!
――我々が今生きている世界に責任を持つ必要はない!
――我々が今作っているのは怪物で、それは歴史を変える力を持っている!
第6章 コンピュータの父
――ようやく私の次に計算の早い機械ができた!
――もし彼を失うことになれば、我々にとって大きな悲劇です!
――彼は少し顔を出しただけで、経済学を根本的に変えてしまったのです!
第7章 フォン・ノイマン委員会
――明日爆撃すると言うなら、なぜ今日ではないのかと私は言いたい!
――彼は、人間よりも進化した生物ではないか?

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

mae.dat

183
マンハッタン計画の中心にも居ましたからね。リミッターがぶっ飛んだ頭脳で、悪い事考えてたんじゃ無いかって思いがち。かもしんない。でも違うんだよ。デビルもサタンもデーモンも日本語では全部悪魔に訳されてしまいますからね。勘違いがあるかも。適切な訳語欲しいな。「天才は周りに理解されず、故に孤独である」みたいな事を言われることがあるかと思いますけど。ノイマンに於いてはそんな事はそんな事なかったみたいですね。自身の脳を使って考える事が大好きだったとか。どんな世界を見ていたんだろう。体感してみたいものよのぅ。2021/06/14

パトラッシュ

171
マンハッタン計画の中心人物としてノイマンの名は知っていたが、数学から物理学、経済学に至る広い分野で超人的な活躍をした実像を初めて知った。彼を知る人は己の凡才ぶりを思い知らされ、天才を超えた神か悪魔かと恐れおののいたと繰り返し記されている。あまりに多才なためアインシュタインのように単独分野で有名にならなかったが、歴史を大きく動かすため人類世界に遣わされた頭脳なのは間違いない。実際、彼がいなければ世界大戦の行方は大きく変わり、ネット社会の到来も遅れていただろう。その影響はヒトラーやスターリンよりも深く大きい。2021/09/28

ねこ

167
本書はノイマンと共に生きた同世代の数学者のことも書かれ20世紀の科学の遍歴が描かれています。読み物としてもとてもおもしろい。さすが限界シリーズ3部作の著者。フォン•ノイマンは数学者でありながら、原子爆弾、量子論、ゲーム理論、コンピュータ開発、大気モデルからの天気予報…と多岐に渡る創始者です。まさに天才中の天才!アインシュタインとはタイプの違う天才だったようです。彼の思想の根底にあったのは科学で可能なことは徹底的に突き詰めるべきだったとか。善悪は忖度せず突き進む彼がもしゲノムに手を出していたら…さてどうかな2023/10/27

trazom

129
フォン・ノイマンを取り巻く天才たちが綺羅星のように登場し面白く読んだ。フォン・ノイマンが「20世紀最高の知性」と称賛するゲーデルや、ともにコンピュータの父であるチューリングなどの、天才であるが故の人格的異常に対し、フォン・ノイマンは一見穏やかな常識人。しかし、彼の思想は、科学優先・非人道的で「我々が今生きている世界に責任を持つ必要はない」とする虚無主義だと言う。「人間のフリをした悪魔」は可哀想な気はするが、規格外の才能と自信を秘めて紳士的な振る舞いをするこういう人こそ、最も恐ろしいということかもしれない。2021/06/15

ひろき@巨人の肩

121
ジョン・フォン・ノイマンの生涯を通して彼の哲学を考察する本書。ノイマン型コンピュータの父として認識していたが、原爆開発含めそれ以外の多数の功績に驚いた。応用数学により世界を記述する天才的な実務家という印象。著者の分析通り、彼の哲学は科学優先主義、非人道主義、虚無主義から成り立ち、能力の高さ故に「ヒトのフリをした悪魔」と評された。量子力学の数学的基礎、ゲーム理論と経済行動は挑戦したい。20世紀科学史において、プリンストン高等研究所とノイマンが天才と認めた不完全性定理の提唱者ゲーデルを知れたことも収穫。2021/11/22

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