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内容説明
核、拉致、正恩の真相がここにある
没後5年、いまなお日本と米中韓を
振り回す「死せる正日」。
北朝鮮研究の第一人者が、機密文書など600点に及ぶ
文献や独自インタビューから初めて浮かび上がらせた、
2代目独裁者の「特異な人格」と
世襲王朝の実像。
【主な内容】
はじめに 稀代の「劇場型国家」を築いた男
第1章 不可解な「2つの死」
第2章 からいばりの少年
第3章 後継者への階段
第4章 工作機関の掌握と拉致
第5章 かすめ取った頂点
第6章 荒廃、そして核
第7章 未完の遺訓
金正恩委員長への手紙――あとがきに代えて
なぜ、いま、金正日なのか
《正恩の世襲体制をつくり上げたのは、父、正日であり、正日は晩年、政治経験がほとんどない息子が代を継いでも、体制を揺るぎなく、維持・運営させていくために、それこそ心血を注いだ。金正日という人物への理解抜きには、正恩体制の実体をつかむことはできない。
11年12月の父の死で発足した金正恩政権について「数年もたないだろう」と予測され、筆者も政権の長期安定には懐疑的だった。しかし、正恩は徐々に権力基盤を固め、現在のところ、即座に崩壊する兆しは見られない。
金正日が父、金日成の死によって最高権力を手にした1990年代にも、まさに同じように言われた。(中略)しかし、現実の歴史では、クーデターが成功することも、政権が崩壊することもなかった。》(本書より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
12
産経の連載が元。金正日の人物像に焦点を絞り、世襲体制確立の経緯、核・ミサイルへの執着等が描かれる。乱痴気パーティーと権力闘争に明け暮れる様子は如何にもといった所。興味深い点は後継者争いで正男と高英姫(正哲・正恩の母)による暗闘の件、01年正男の日本での不法入国拘束に英姫らの画策があったという。03年9月、英姫が交通事故で重体になった背景に正男がいる、と英姫の妹の高英淑が断じたとある、どこまで信憑性があるか分からないが、金ファミリーの骨肉の争いに振り回される方も堪らない。最も辛いのは北の人民であろう。 2017/02/26
チェアー
12
最後まで読んでも金正恩体制がなぜ崩壊しないのかは分からなかった。基本的にはこれまで記されてきた日成、正日の評伝。ほとんどが人格の評価と批判にさかれているため、国際政治との関係や、政策の評価はほとんどない。どこかで読んだような話が多く、新発見はほとんどなかった。2016/10/20
あんぽんたん
3
金正日と北朝鮮の歴史に迫ることで、現在の正恩体制の不可解な点を紐解くことができると提言。客観的で詳細な金正日像を本書に綴る。藤本健二氏も正日について書いているが、そこには血肉の通った人間らしさを垣間見ることができた。一方で本書には、日成からの世襲と権力維持のために奔走し謀略を巡らせる無慈悲な正日がいる。真逆であれど、どちらも真の正日なのだろう。そして、その捉えどころのない老獪な正日に世界は騙され踊らされ、現在の北朝鮮があることを肝に銘じなければならない。資料に基づく客観性と面白さが両立された良書であった2021/12/17
南の風
3
2016年刊。著者は、朝鮮半島慶尚道出身の両親を持ち、中国黒竜江省の朝鮮人移住者たちの寒村で平壌放送や北朝鮮映画を見ながら育ち、北京の大学を卒業後、日本に留学して日本国籍を取得したという経歴の持主。日中韓北朝鮮を知る貴重な存在。■本書は、北朝鮮の三代にわたる世襲共産主義国家の要が金正日にあるという観点で書かれており、金日成に重きをおいて考えていたバランスを覆された。現在の北朝鮮問題の背景と、けっして楽観が許されない見通しを知ることができる。■金正恩の頭の中が少し理解できるような気がした。2017/09/27
田中峰和
1
独裁者も存命中の悪事は露呈しないが、死んでしまうと北の王朝でも拡散する。父から絶大な権力を受け継いだが、堂々たる体格や首領としてのカリスマ性は譲られなかった金正日。彼はそのギャップを埋めようともがき、劣等感に苛まれた。弟が池で溺れるのを見て、怖くなりその場から逃げた正日。弟殺しの忌まわしい記憶はさらに彼の性格を屈折させた。スパイ映画に感化された正日は、美貌のスパイを対韓国工作のトップに抜擢し、海外での拉致や暗殺を充実させた。とにかく子供じみた男だ。拉致は文化交流だとまで強弁した男の息子に常識は通用しない。2017/01/04