歴史から理論を創造する方法 - 社会科学と歴史学を統合する

個数:1
紙書籍版価格
¥2,200
  • 電子書籍

歴史から理論を創造する方法 - 社会科学と歴史学を統合する

  • 著者名:保城広至
  • 価格 ¥2,200(本体¥2,000)
  • 勁草書房(2021/02発売)
  • ポイント 20pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784326302406

ファイル: /

内容説明

本書は方法論の基礎をかみくだいて説明する入門書でありながら、社会科学と歴史学のギャップを埋める最新の研究書。自分の理論に都合のいい資料しか使わない社会科学者と、狭い研究対象に埋没してしまう歴史家。両者の溝を払拭する研究法を指し示しながら、初学者向けにも基本を解説する。専門用語を易しく説明する「ショート解説」つき。

目次

はじめに

序章 歴史と理論:古くて新しい緊張関係
はじめに
1 歴史学者による社会科学者批判
  歴史社会学の名著  歴史学者による社会科学者批判(1)  近代日本政治の理論と歴史
  歴史学者による社会科学者批判(2)  両研究に内在する問題点
2 社会科学者の見解
  狭い歴史学者の視野?
3 歴史と理論の断絶にはらむ問題
  本書の目的  本書の構成

第1章 中範囲の理論:イシュー・時間・空間の限定
はじめに
1 パターンと個性
  理論とは何か?  法則性と一過性?
2 「自然主義」と社会科学
3 社会科学理論の社会への影響
  予言の自己否定性  予言の自己実現性  理論の現象消失性
4 中範囲の理論
  イシューの限定  時間の限定  空間の限定  中範囲の理論へのひとつのアプローチ
おわりに

第2章 「説明」とは何か?
はじめに
1 「説明」に関する三つの見解
2 因果関係の解明としての 「説明」
  社会科学者の因果説  歴史家による因果説
3 統合としての「説明」
4 記述としての「説明」
  歴史研究者の記述説  歴史学の叙述傾向  社会科学者の記述説
5 解釈・理解としての「説明」?
  文化人類学者の解釈学  ポスト実証主義と解釈学  社会構成主義者の理解説
6 二つの「説明」概念を同時に満足させる
  因果説と記述説の統合
おわりに

第3章 帰納/演繹、アブダクション
はじめに
1 帰納法とその問題点
  J.S.ミルの五つのカノン  実験の不可能性  自然実験という試み
  帰納的飛躍:「すべてのスワンは白い」?  理論負荷性:ウサギにもアヒルにも
  理論負荷性を問い直す
2 社会科学における演繹法の陥穽
  前提の不確実性と結論の不確実性
3 アブダクション
  アブダクションと仮説演繹法  アブダクションとさまざまなディシプリン
おわりに

第4章 構造的問いと事例全枚挙
はじめに
1 単一事例の問題点
  単一事例の擁護  単一事例への批判
2 構造化、焦点化された比較の方法
  ヘンペルのカラスと比較の単位
3 事例全枚挙
  分析対象範囲の問題  事例を全枚挙する利点  従属変数からの選択という問題
 おわりに

第5章 過程構築から理論化へ
はじめに
1 過程追跡という手法
  ベイズの定理と過程追跡  理論志向 「過程追跡」の問題点  プロスペクト理論とキューバ危機
2 歴史過程の構築
  現象の発端と事例の定義  プレイヤーの特定  プロセスに沿った分析
3 抽象化、比較分析から理論化へ
  分割表による体系的比較  戦後日本の地域主義外交の例
おわりに

終章 さらなる議論を!
  本書が論じてきたこと  本書の意義と限界

謝辞
引用文献
事項索引
人名索引

ショート解説一覧
ショート解説00-1  定性的研究と定量的研究
ショート解説0-1   一次資料と二次文献
ショート解説0-2  「プロクルーステースの寝台」問題
ショート解説0-3  中心極限定理
ショート解説0-4  経済学「方法論争」
ショート解説0-5  パラダイム・シフト
ショート解説1-1  前向きの解
ショート解説1-2  最小二乗法
ショート解説2-l  D-N説明とI-S説明
ショート解説2-2  社会構成主義
ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

あんころもち

5
社会科学論文においてとりわけ重視されるのが因果関係。何を以って因果関係が説明されたことになるのかは、社会科学でとりわけホットなトピックであり続けている。本書は、そのような視点から、伝統的なケーススタディ(事例研究)に対して高い要求を掲げるものである。著者は自分の研究を紹介しながら、イシュー・時空・空間で限定された「すべての事例を研究」することを要求する。本書ではダメな例として数多くの「先行研究」を紹介しており、数多くの学者に喧嘩を売る一冊になっている。2016/08/29

八八

4
歴史学、史料から記述して仮説を立証する。社会科学、理論を念頭に置き証拠を収集し立証する。歴史学と社会科学は互いの欠点を指摘して争うか、成果を無視する傾向がある。だが、当然ながら2つの学問成果を用いて論じる事は大変重要である。筆者は歴史学と社会科学の方法の問題を取り上げて、論じ方や仮説の立て方などを1つづつ検証しながら2つを架橋する方法を提示する。本書は歴史学の方法や論じ方などに触れている為、大変参考になる。2019/02/19

Schuhschnabel

3
役に立つ本ではあるが、2つの点で「イタい」という印象を受ける。1つは、学部生でも知っているような科学哲学の基本用語を訳知り顔で歴史学や社会科学に当てはめて、さもいいことを言ったように振舞っているところである。これについては筆者も断りを入れているので大目に見よう。もう一つは、歴史学の目的を社会科学との対比のために事実の発見に限定しているところである。歴史を物語ることそのものに対する価値を正当に評価しなければ両方の利点を生かす方法にはならないだろう。2021/06/01

Mentyu

3
歴史研究者が陥りやすい個別事例への耽溺と、一方で社会科学系の研究者がやりがちな都合の良い研究成果だけをかいつまんでしまう現象というのは日ごろ自分が抱えていたもやもやを言語化してくれていて良かった。教科書的な構成ということもあり、自分のような学部生にとっては用語や概念の説明をショート解説として時々入れてくれているのは助かる。数理的な部分など理解の及ばない部分もいくつかあったが、今後研究の指針を考えていく上では手元に置いておきたい本だと思った。2016/02/10

2
「社会科学と歴史学の統合」とあるが、著者は社会学寄りなので基本的には社会科学の立場から論理展開が進められている。理論を構築するにあたり、恣意的な事例選択の回避は永遠の課題であろう。しかし、本書においてはあまりにもその点に固執し過ぎているような印象を受けた。中範囲理論や事例全枚挙を駆使しても、グレーゾーンに位置するような事例が出てきた場合にそれをどう扱うかは結局研究者自身の判断にかかってくる。一人で方法論を模索するのにも限界があるのではないかと感じた。2019/12/10

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/9405581
  • ご注意事項

最近チェックした商品