内容説明
単身化・高齢化がすすむなか、地域における相互扶助関係の再生に多大な期待が寄せられている。本書は東京都多摩市を対象とした質的調査・量的調査をもとに、地域のつながりについて、”それができない理由”も含め具体的に明らかにした。成功事例の紹介に留まりがちな地域研究のなかで、住民の葛藤にまで踏み込んだ画期的著作である。
目次
まえがき
第I部 導入編
第1章 郊外をとらえ返す
1 郊外を研究するにあたって
2 郊外の推移
3 大衆化された郊外へのまなざし1:1960年代から80年代
4 大衆化された郊外へのまなざし2:1990年代以降
5 本書の目的と研究のアプローチ
第2章 開発に翻弄された自治体:多摩市の概要
1 地勢
2 歴史
3 人口と世帯
4 産業
5 研究への足がかり
第3章 それぞれの近隣社会
1 漸進開発地区:関戸
2 混在地区:乞田・貝取
3 戸建て地区:桜ヶ丘
4 賃貸・公営団地地区:愛宕
5 分譲団地地区:鶴牧
6 データによるエリア特性の確認
第II部 実証編
第4章 住民のつくりだした「コミュニティ」:コミュニティセンターの分析から
1 コミュニティセンターの悲哀と本章の課題
2 コミュニティセンターの沿革
3 関戸:開発とのせめぎ合い
4 乞田・貝取:コミセンと伝統との融合
5 桜ケ丘:高階層地区の自立と結束
6 愛宕:公営団地地区の困難
7 鶴牧:中・高階層の分譲団地
8 それぞれの住民の「コミュニティ」:結びにかえて
第5章 つながりの再構築:福祉コミュニティの実践
1 郊外開発から地域福祉を検討する視点
2 社会福祉協議会のサロン活動
3 関戸のサロン活動:キーパーソンとしての地付き層の活用
4 乞田・貝取のサロン活動:不要なのか? 必要なのか?
5 桜ヶ丘のサロン活動:戸建て地区におけるつながりづくり
6 愛宕のサロン活動:公営団地における共同性の構築
7 鶴牧のサロン活動:分譲団地のサロン
8 福祉的連帯構築のために
第6章 住民が蓄積した社会関係資本
1 地域のソーシャル・キャピタル
2 ソーシャル・キャピタルと歴史性
3 調査概要と諸変数
4 分析結果の提示
5 ソーシャル・キャピタルの不均衡
終章 地域社会のゆくえ
1 住民の体現したコミュニティとつながりづくり
2 さらなる議論の展開
3 「つながる地域」は実現するのか
参照文献
あとがき
索引