内容説明
本書は、教育学の黎明期の教育思想を検討した『日本教育学の系譜』(14年刊)の続編である。昭和前期の教育学について、京都学派とマルクス主義を思想軸に、個々の哲学者・教育学者の思想形成に作用した時代の特質を描き出す。主に西田幾多郎、田邊元、木村素衛、稲富栄次郎らの思想と、ソヴィエト教育学の受容に関して検討を行う。
目次
はしがき[森田尚人]
序 章 日本教育学をめぐるパースペクティブの位相──京都学派とマルクス主義を軸にして見える教育学説史・思想史の形[矢野智司]
第1節 前著『日本教育学の系譜』との関係
第2節 近代日本教育学説史・思想史の再検討
第3節 日本教育学における京都学派の哲学の忘却
第4節 西田幾多郎の教育学構想とその後の教育学の展開
第5節 京都学派におけるフォイエルバッハの人間学とマルクス主義受容の諸形態
第I部 戦前期の京都学派とその周辺
第一章 大正新教育のなかの西田幾多郎──ベルクソン哲学を媒介として[矢野智司]
第1節 西田哲学を軸に新教育の思想を捉える
第2節 西田哲学の純粋経験の立場から自覚の立場への転回
第3節 「自覚の教育学」における新カント学派─ベルクソン─西田
第4節 ベルクソンに基づく新教育の思想における西田哲学の働き
第5節 西田哲学の新教育の実践現場への滲透
第6節 ハイブリッドな新教育思想の可能性
第二章 京都学派における「形成」概念の諸相と教育──西田・三木・木村を中心に[森田伸子]
はじめに──教育と「人間形成」
第1節 近代の諸相と形成概念
第2節 西田における形成の問題
第3節 構想力による形成──三木清における社会形成の論理
第4節 形成主体の形成──木村素衞における教育の論理
おわりに──「形成」から教育へ
第三章 死者との実存協同と世代継承的公共性──田邊哲学を臨床的人間形成論として読む[田中毎実]
はじめに
第1節 科学と教育──ロゴスの行方
第2節 絶対媒介の意義と疑義
第3節 種の論理──個と悪の行方
第4節 懺悔道の哲学──自力の行方
第5節 「死の哲学」と「死者との実存協同」
第6節 「死者との実存協同」から世代継承的公共へ──田邊元と森昭
第II部 戦後教育学の原型
第四章 稲富榮次郎の教育哲学と現代教育学への影響=作用──ライフヒストリーにみる教育哲学会創設にいたる人間模様[小笠原道雄]
はじめに
第1節 略年譜に見る稲富教育学の展開──挫折・深化・発展
第2節 稲富榮次郎による教育哲学会創設
インテルメッツォ〈間奏曲〉──恩師稲富榮次郎先生へのオマージュ
おわりに
補論 戦後教育学の反省──「道徳の時間」特設をめぐる稲富榮次郎の立場からみる現代の問題
第五章 戦後日本におけるソヴィエト教育学の受容──矢川徳光のマルクス=レーニン主義教育学を中心に[森田尚人]
はじめに
第1節 戦前期日本のソヴィエト教育への関心──吉田熊次『ソ聯邦に於ける教育改革と教育思想』
第2節 スターリン体制成立期の教育学論争──矢川徳光『ソヴェト教育学の展開』を手がかりに
第3節 ソヴィエト・マルクス主義と「人格」の概念──ルビンシュテインの決定論をめぐって
おわりに
あとがき──回顧と感謝そして希望[小笠原道雄]
人名索引
事項索引
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