下層化する女性たち - 労働と家庭からの排除と貧困

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下層化する女性たち - 労働と家庭からの排除と貧困

  • 著者名:小杉礼子/宮本みち子
  • 価格 ¥2,750(本体¥2,500)
  • 勁草書房(2021/02発売)
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  • ISBN:9784326653942

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内容説明

従来、性別役割分業という社会通念が、主婦パートに代表される低賃金の非正規雇用の労働条件を規定してきた。近年は若年層で非正規雇用が急増し、ひとたび労働と家庭から排除されると、一気に貧困に陥ってしまう実態がある。本書は、見えにくい女性の貧困問題を可視化し、女性たちを支援する現場の報告も交えつつ社会的支援策を検討する。

目次

はじめに[宮本みち子]

序章 課題の設定──労働と家庭からの排除と貧困[宮本みち子]
 1 欧米における女性の貧困化・下層化
 2 日本における女性の貧困化・下層化
 3 労働と家庭からの排除
 4 女性に対する支配構造
 5 女性の貧困・子どもの貧困と家族政策

第I部 労働と家庭からの排除の現状と課題

第一章 女性労働の家族依存モデルの限界[山田昌弘]
 1 若年女性をめぐるパラドックス
 2 願望と現実の反転
 3 家族に包摂されることが前提の女性労働
 4 経済・社会構造の大転換と女性労働の変貌
 5 労働による包摂の限界
 6 家族による包摂の限界
 7 貧困化している女性の希望と対策のつけ回し

第二章 見えにくい女性の貧困──非正規問題とジェンダー[江原由美子]
 1  「女性の貧困が見えない」?
 2 社会問題化を阻むもの──「女性労働の家族依存モデル」
 3 二つの変化が生み出した「若年女性の貧困化」──「若年女性の非正規労働者化」と「若年女性の有配偶率の低下」
 4  「女性労働の家族依存モデル」と「女性の経済的自立モデル」
 5 社会構造次元の性別役割分業批判に向けて

第三章 ままならない女性・身体──働くのが怖い、産むのが怖い、その内面へ[金井淑子]
 1 問題への接近回路─言葉や兆候に聴く
 2 「若者問題」のジェンダー非対称性──格差社会のジェンダー再配置
 3 「全身○活」時代、「氷河期世代」の生き難さ
 4 「彼女たち」を見失わないために
 5 「身体の最領土化」に抗する思想を

コラム1 中高年女性が貧困に陥るプロセス[直井道子]
 1 未婚女性はどのようなプロセスを経て中高年に貧困に陥りやすいか
 2 未婚女性と仕事
 3 四〇─五〇代の未婚女性の住まい
 4 年金と老後不安
 5 未婚女性をめぐる時代的変化の考察

第II部 貧困・下層化する女性

第四章 女性ホームレスの問題から──女性の貧困問題の構造[丸山里美]
 1 なぜ女性は貧困なのか
 2 見えにくい女性の貧困
 3 「もやい」の女性相談者から見える女性の貧困の特徴
 4 単身女性の増加と若年女性の貧困化
 5 女性がホームレスにいたるまで
 6 今後必要な政策

第五章 折り重なる困難から──若年女性のホームレス化と貧困[山口恵子]
 1 女性が貧困であること
 2 三人のケースより
 3 折り重なる困難から
 4 おわりに

コラム2 戦後日本型循環モデルの破綻と若年女性[本田由紀]
 1 看過されてきた問題系
 2 失われる前提
 3 「下層化する若年女性」をどうするか

第III部 支援の現場から

第六章 「よりそいホットライン」の活動を通じて──若年女性の「下層化」と性暴力被害[遠藤智子]
 1 はじめに
 2 よりそいホットラインの構成
 3 女性専門ラインの相談の特徴
 4 若年女性たちの性暴力被害
 5 性虐待の相談について
 6 性暴力についての相談事例
 7 暴力の発見・予防が「下層化」を食い止める

第七章 生活困窮状態の一〇代女性の現状と必要な包括支援──パーソナルサポートの現場から[白水崇真子]
 1 はじめに─年越し派遣村を契機にはじまったPS事業
ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬弐仟縁

41
男性の賃金や雇用が不安定化⇒女性の未婚率も上昇(8頁)。日本では、中高年の正社員を解雇しにくい。正社員の抑制、低賃金労働者としてバイト、派遣等で置き換える(32頁)。労働、家族、親、男性の経済状況悪化しているのに、対策が中途半端のまま、放置。これが現状なら(大)問題(43頁)。問題は、日本社会における非正規労働者の待遇が、女性労働の家族依存モデルを前提にしたものであること、このような性差別的な社会構造が成立していること自体にある。2016/03/13

ゆう。

38
見えにくい女性の貧困の実態を「社会的排除」を一つのキーワードに可視化することを研究課題とした本です。その排除とは「労働と家族からの排除」と捉えています。本著ではかつて女性は家族に包摂されていたなかで、ポスト工業社会化のなか「家族依存モデル」が限界に達し、低賃金で不安定な労働市場に女性が進出している実態を読み取ることができました。家計補助的低賃金に置かれている女性の実態を考えることができたように思いました。また、支援の実態についても述べられています。一つの実態を知る上では、学ぶことの多い書籍でした。2018/01/08

fu

28
最近読んだノンフィクション本の中で、群を抜いて秀逸。データが豊富な点が良い。簡潔にまとめきれるものではない為、読了後なかなか感想が書けずにいた。高度成長期においては女性は家庭に包摂されるものという大前提(女性の包摂先は親か夫。若年女性97%結婚。女性の貧困は不可視化)があったが、2000年以降未婚増加。労働からも家庭からも包摂されない場合、女性の貧困が増加した為、可視化された。2011年充足感の調査によると、専業主婦8割が充実感高く、非正規雇用、未婚、低学歴の人が充実感が低い(学歴は親の家計の影響度高)。2015/11/21

ジュリアンヌ

11
若年女性の問題は見えにくく、問題化しにくいという。それはこれまでの日本で一般的だった女性は男性(夫や父親)に経済的に依存せざるを得ない社会構造的が原因となっていたからだ。男女両立が進ん現在でもそういった規範意識があるため女性の貧困、社会的排除などの社会的問題の発見が遅れたという。「自立とは何だろうか。フルタイムで働く自立は絵に書いた餅になり、もはや一人ひとりがそれぞれ持つ資源をパッチワークのように組み合わせて、人とのつながりを増やして、SOSを出しながらなんとかやっていけることが自立ではないだろうか」2016/10/03

Narr

9
①長らく不可視だった女性の貧困問題に切り込んで、特にこれまで論じられていなかった若い女性たちに焦点を当て、若年男性以上に進む貧困化の現実を明らかにする。第四章では女性ホームレスに注目し、貧困問題の構造、必要な政策を記している。自分の身の回りを見れば「ああそうだな」と納得しかできない現状を再確認。女性の中でも、特に不利な状況に置かれた女性の貧困化と下層化が際立っていること。それらは男性の陰に隠れがちで可視化しづらいことが認められる。また子供の貧困化とも表裏一体で繋がってる。こういう本少ないからありがたい。2019/05/21

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