内容説明
ベートーヴェン生誕250年記念文庫化。全9曲を第一人者が徹底解説!
ベートーヴェンの九つの交響曲について、新日本フィルハーモニー交響楽団との連続演奏会(チクルス)をふまえて、指揮者・朝比奈氏がみずから、スコアと実際の演奏に即して楽曲の細目(技術面・演奏家心理・演奏習慣・解釈比較など)について語る。演奏論であると同時に作品論。ベートーヴェンの交響曲を聞き込んだ人にも、驚きと興味を持って受け止められることとなろう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
1959のコールマン
63
☆5。罪な本だ。読んだらベートーヴェンの交響曲全集CDを各指揮者で取り揃えたくなってしまいそう。敷居は低い。9つの交響曲全部を知らないとサッパリわからない部分も出てくるが、朝比奈氏の独特のユーモアがそれを補って余りある構成になっていて、さすが(音楽之友社版が)9刷までいった理由が良くわかる。しかし指揮者の使うスコアと奏者が使うパート譜が結構違うというのには驚いた。私が無知なだけか。「だいたい『田園』なんて題がいけません。そんなのんきなシンフォニーじゃありませんよ」p144。うわあ。大胆な事言うなあ。2021/01/07
あんさん
12
某アマオケでエロイカを演奏する本番があり読み始めた本。いろいろ勉強になりました。たしか大フィルの団員だった楽器の師匠からだと思いますが「オッサンと酒を飲んだら、ベートーヴェンは第九の第三楽章を聴けなかったんだぞ、って泣くんや」と聞いた言葉が、ずっと頭の中で響いてました。2023/05/15
ひでお
8
朝比奈隆氏の指揮するベートーヴェンは何度となく実演に接しました。あれはもう20年以上前になりますね。その時は、やたらと遅いテンポにとまどったものですが、本書を読むと、指揮者が何を考えてあのような演奏をしていたのかが、なんとなく伝わってきました。「楽譜通りに演奏する」といいつつ、いろいろにいじっていましたが、それも原典原理主義ではなくて、音楽としての解釈の結果なのだなあと、自分なりに納得しました。また昔の録音を引っ張り出して本書を開いて聞いてみたくなりました。2022/06/13
choku_tn
2
朝比奈隆が新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮して1988年~1989年に挙行したベートーヴェンチクルスの各演奏会後に音楽評論家の東条碩夫と行った対談をもとにした書籍。 演奏の回顧、スコアの改変を含む細部の処理、作品に対する見方、海外の思い出など縦横無尽に語りまくる朝比奈隆を東条碩夫がうまく制御してリズミカルで流れのいい内容にまとめている。 日本のオーケストラのダイナミックレンジが狭いことへの不満が結構辛辣で面白かった。