ちくま学芸文庫<br> バロック音楽 ──豊かなる生のドラマ

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ちくま学芸文庫
バロック音楽 ──豊かなる生のドラマ

  • 著者名:礒山雅【著者】
  • 価格 ¥1,210(本体¥1,100)
  • 筑摩書房(2021/02発売)
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  • ISBN:9784480510075

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内容説明

17世紀初頭、宮廷文化が芽吹きはじめる中で、バロック音楽は開花した。華やかな祝祭が催される一方で、戦争・疫病・凶作に苛まれる不安な時代。強く激しい感情表現こそがバロック音楽の本質であり、即興的装飾と通奏低音などの技法、新様式、音楽理論がそれを支えた。本書はバッハ研究の第一人者が、荘厳な教会音楽や華麗なオペラ誕生の背景、伊独仏英各国の事情、作曲家たちの試行錯誤などに注目し、その歴史的意義を強調する。バロック音楽の全貌を平明に描きつつ、芸術史・思想史と結びつけなおした必携の入門書。

目次

はじめに
Ⅰ 装いに真実を求めて──バロック音楽の始まり
変化するイメージ
モンテヴェルディのミサ曲と晩課
十七世紀初めの社会
新様式と古様式の対立
装いと空間の多様性
劇場的な音楽空間
感情表現への意欲
あなたの涙は私の血
第二作法の展開
モノディの創出
「バロック音楽」とは
通奏低音の表現力
Ⅱ 音楽による祝祭──オペラの誕生
祝祭に寄せる好み
最古のオペラ作品
傑作《オルフェーオ》の誕生
ヴェネツィアにおける発展
《ポッペーアの戴冠》
空間の立体的活用
スカルラッティとナポリ楽派
リュリの音楽悲劇
Ⅲ この世における聖の開花──宗教音楽の高揚
バロック時代と宗教
反宗教改革の芸術
パレストリーナとモンテヴェルディの〈クレド〉
マリア崇敬の音楽
オラトリオの誕生
カリッシミの《イェフタ》
ルターの宗教改革
コラールの成立
ルターからバッハへ
Ⅳ 廃墟に流れる歌──ドイツ音楽の目覚めと発展
民衆的生命力の胎動
塔からの吹奏
楽器の王、オルガン
スウェーリンクとオランダ
シャイトからブクステフーデへ
三十年戦争
ドイツ音楽の父、シュッツ
死に憧れる音楽
Ⅴ 歌うヴァイオリン──イタリアにおける器楽の興隆
器楽の自立と発展
先駆者、ガブリエーリとフレスコバルディ
みやびな宮廷楽器、チェンバロ
ヴァイオリンの発展
当時と今のヴァイオリン
コレッリのトリオ・ソナタ
コンチェルト・グロッソの完成
ヴィヴァルディのソロ・コンチェルト
Ⅵ 大御代を輝かす楽の音──フランス音楽の一世紀
ブルボン王朝による中央集権化
サロンにおけるリュート熱
大御代にときめくリュリの調べ
復活するシャルパンティエ
ヴェルサイユ宮廷の音楽
管楽器の発達
礼拝堂の音楽
クープランのクラヴサン音楽
「古典的」なバロック音楽
農民たちの暮らしと音楽
Ⅶ 趣味さまざま──国民様式の対立と和合
イタリアが上か、フランスが上か
活躍するカストラート
クープランによる「趣味の和」の試み
ラモーのオペラ
国による音楽の違い
バッハによる伊仏対立の記念碑
踊る音楽の組曲化
組曲の基本形式とその応用
舞曲の様式化
Ⅷ 音楽を消費する先進国──イギリスとヘンデル
音楽の大消費国、イギリス
十七世紀初頭のイギリス
ピューリタン革命と王政復古
イギリスのモーツァルト、パーセル
消費国化とヘンデルの登場
ヘンデルのオペラ作法
《リナルド》のアリア
オラトリオへの転進
ヘンデルの器楽曲
Ⅸ 神と人間に注ぐ愛──バッハにみるバロック音楽の深まり
古く、また新しいバッハ
オルガンの巨匠、バッハ
応用されたトリオ・ソナタ
深遠な無伴奏の世界
多彩な協奏曲
教会音楽の深さ
生と死のドラマ
《マタイ受難曲》
「ペテロの否認」の語ること
バッハ的慈愛の源泉
Ⅹ 数を数える魂──バロック音楽の思想
音楽の与える感動
音楽の目的と作用
デカルト理論の応用
音楽は一種の数学
音楽作品における幾何学的な秩序
意味深い数の使用
音楽と数学の緊張関係
《平均律クラヴィーア曲集》
絵でみる音楽観
手術を記録する音楽
  コーヒーを飲みながら、音楽を──十八世紀における音楽の市民化
光の世紀の始まり
才人テレマンと出版活動
愛好される音楽の条件
オペラ・ブッファの進撃
コーヒーをめぐる音楽劇
過渡期に活躍するバッハの息子たち
百科全書時代のフランス
新時代のイタリア
スカルラッティの奔放な鍵盤芸術
  現代に息づくバロック──受容史と今日的意義
日本におけるバロック・ブーム
バロック音楽のその後
ロマン主義時代におけるバッハの復活
ドルメッチとランドフスカ
新古典主義の時代
戦後の復興はバロック音楽とともに
校訂楽譜の出版
戦後のバロック演奏の傾向
古楽器の語ること
第二次バロック・ブームとその今日的意義
年表
参考文献
参考CD・DVD
文庫版解説 バロック音楽の〈光と影〉 寺西肇
人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

どら猫さとっち

3
NHKFM「古楽の楽しみ」の案内役のひとりだった著者が、バロック音楽の魅力を語った、入門書にも最適な一冊。僕がバロック音楽、古楽の魅力に目覚めたきっかけは、著者の礒山雅先生だった。バロック音楽の構造や幅広い選曲、ユーモアも溢れたトークも魅力的だった。しかし2年前に不慮の事故でこの世を去った。突然の訃報に、未だに信じられないままでいる。本書も礒山先生が語っているような感覚があった。改めて彼の存在の大きさに気づく。2020/12/03

植岡藍

3
礒山さんの本ということで即購入。イタリア、フランス、ドイツといった国ごとの特色や歴史を踏まえながらバロック音楽の変遷を辿る。個人的には、オペラや歌曲は馴染みがないので知らないけれど雰囲気に触れるという補完ができて良かった。原著は30年近く前に書かれたもののため、この本自体が古典のように思うけれど大まかな音楽史を掴むのには未だ古びない価値があるように思う。2020/10/12

なおた

1
目次に目を通して「ドイツ音楽の父、シュッツ」という項目を見つけて、早速、読んでみた。ドイツは「三十年戦争(1618~48)」を経験している。「戦前に1800万あったといわれるドイツの人口は、戦争が終わってみると、わずか700万人に減少していた。経済もこれによって大打撃を受け、およそ200年たち遅れたといわれている。」(本書69頁)シュッツ(1585~1672)は33歳の頃から戦争がはじまり63歳まで祖国が戦禍にあった人物…ということになる。その彼を著者は、以下のように評している…続きはコメント欄にて。2025/07/21

261bei

0
バロック音楽がドラマチックな感情表現を目指して始まったこと(ロマン派の音楽に慣れ親しんだ現代人は一旦ルネッサンス時代の音楽と対比しないと分かりにくいだろうが)、その精華がオペラとオラトリオだということ、独仏伊のバロック音楽の展開と、音楽消費地イギリスの重要性、そして政治史的にはブルジョワの台頭、音楽史的には古典派への移行、さらにロマン派時代におけるバッハ再発見、戦間期の新古典主義、現代の古楽復興までがコンパクトかつわかりやすく描写されている。2025/05/13

かわかみ

0
ほぼ半世紀前に出版された皆川達夫氏の著書と比べると、文章が易しく読みやすい。ちくま学芸文庫としては昨年の刊行だが、底本はNHKブックスが1989年に刊行したもの。バブル経済が爛熟した時期にNHK市民大学講座でバロック音楽を取り扱い、テキストとして出版したわけである。西欧でバロック音楽が盛期にあったのは絶対王政の爛熟期である。その後、西欧では市民革命と理性の時代、日本はバブル終焉の後は失われた20年だった。最終章にバロックから古典派への移行と、現代の日本と世界におけるバロック音楽への関心について述べている。2021/09/30

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