内容説明
言葉の力で他人を魅惑しようと努めながら、真の書き手となり得ない作家の、12の物語。確実不変な事実の世界は、存在するのか? ――事典に載せられた単語のように、不変で確実な〈事実の世界〉は、存在するのだろうか? 物質の欠如が夢想へと駆立て、言葉の虚構性のなかに、夢見る力を委ねようとするが……。言葉の力で他人を魅惑しようと努めながら、自ら物語るという行為を怖れる書き手、作者と作品の奇妙な関係を描く、12の短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
わった
9
読んでる最中の感覚が面白い本でした。作者の描写が細かく、リアルできれいで丁寧な風景描写が続く。描写自体は生々しいというか、とてもリアルで納得できる感じ。なんてすけど、文章が絡み合うと急にファンタジックになる。一文一文は理解できるし、描写は現実的でリアルなのに、重なり合うと急に幻想的になる。牛乳瓶割ってた子が、あれ?この人誰だったんだっけ?と混乱する。 登場人物が多くて混乱する、とかではなく。 気づいたら、時代も情景もぐっちゃぐちゃになってる。 すごく新鮮な感覚で読みました。面白かった!2023/06/20
ルミ
0
再読2016/05/22
丰
0
Y-202005/06/22
Rin
0
村上春樹の概念を三島由紀夫の言葉で装飾したような抽象美溢れる短編集だった。牛乳壜と母の表象は『銀河鉄道の夜』を彷彿とさせる。わたしと他者、過去と未来、此処と向こう側。主客も時間も空間もすべて交錯して融合して、ひとつの大きな無限の夢をつくっている。抽象的で夢幻的で捉えどころのない銀河のような靄。既視感や既聴感は誰の記憶だろう。2025/02/02