内容説明
戦況報告は、どのようにして権力になっていったのか? ――大本営発表は、あの時代、単なる戦況報告ではなく、権力そのものであった。意図的な情報のみを一方的に押しつけられ、「事実」は国民に隠されたのだ。関係者の証言をはじめ、発表回数や発表場面、発表の表現など、当時の資料を解析することにより、何が見えたのか? 大本営発表の登場から消滅までを解説する。
※本書は2004年4月光文社新書から刊行された「大本営発表は生きている」を改題し、大幅に改訂したものです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みなみ
8
Kindle Unlimitedで読了。太平洋戦争を戦況によって時期を区分し(開戦直後の勝っている時期から終戦直前の崩壊期など)時期により大本営発表の内容を考察・分析する。勝っている時は戦況が正確に詳しく伝えられていったが、負けが混んでくると言葉に修飾が増え、内容が曖昧になっていくさまが伝わる。また、大本営が新聞や報道に口を出して細かい語句まで直させたことも書かれている。そのような嘘で塗り固めた空間がずっと続いていたのは異常なことだ……2022/10/30
siomin
1
太平洋戦争中に軍部により発せられた大本営発表。それはいったい何なのかを掘り起こした一冊。 「大本営発表」には胡散臭さがありますが,日本軍の威勢の良かった初期は事実を述べていたものの,戦況悪化に連れて虚飾が目立ち,最後は発表すら滅多に出されなかったという流れは興味深いところ。虚飾のなかには願望まで混じっていたようで,目を覆うばかりです。 もともとは「大本営発表は生きている」の題名のように,今とて政府なり会社なり団体なりの発する情報はすべて真実だと思わず,知る権利を守るべきと警告しています。その通りですね。2015/11/19
くわたろ
0
大本営発表とか、戦時の情報統制の研究。戦況が悪くなるほど勇壮な修飾語が増えてくるのがなんとも。そもそも昭和期軍人のなんちゃって漢文が読みづらい。陣中日記や従軍記はまだいいけど、公的な文書になるほど悪文なのよね。大本営報道部員の読書量が少なかったとは思えないけど、修飾過多の悪文を良しとする価値観が蔓延していたのか。2008/10/12
inu
0
反して日本では、戦力そのものがほぼ頂点に達している状態で戦争を続けているわけだから、戦果を確認する余裕などない。もっぱら戦闘に加わっていた部隊からの自己申告で戦果は判断される。当然なことに、自らの戦果は大仰に報告し、大本営陸海軍報道部はそれをさらに自らに都合のいいように判断して手直しをする。こうして虚構の報を発した大本営陸海軍報道部は、虚構を信じる国民の反応を確かめて自らもまたそれを信じる、という錯誤の連環のなかに落ちこんでいったのである。 2024/09/27
すばる
0
「大本営発表」とは国民を騙すためのものと思っていたが、意外にも太平洋戦争初期(勝利していた時期)にはきちんと発表されていたとか。戦局が厳しくなると国民には徹底的に嘘をつくように変化している。同じ事態が現在で起こるなどあり得ないが、間違った情報に踊らされないようにしっかりと教訓を胸に刻もう。2019/11/20