世界から守ってくれる世界

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世界から守ってくれる世界

  • ISBN:9784863112735

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内容説明

不仲な両親の間で、体と心が2つに裂かれるような痛みを味わう薫子。
性的違和を感じ、ある日突然セーラー服で登校し始めるクラスメイトの中鉢。
それぞれが抱える戸惑いに互いにシンパシーを覚え、心友となった2人が見つけた「居場所」とは……。

暗闇の中、「ありのままの自分」を受け止めてくれる「居場所」を目指し、遠くの光に向かって歩く。
14歳の揺れ動く心情を細やかに、そしてユーモラス描いた、心にあかりを灯すデビュー作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

美紀ちゃん

71
泣けた。多様性。家族の問題。親からの虐待。自分の性別の問題。 悩みがそれぞれでモヤモヤは深い。 近藤薫子の心は男の子で、中鉢章雄の心は女の子。 履歴書の氏名を書く欄のところ、男か女か、どちらかにマルをつけなければならない。天使っていう欄はない。天使は両性具有。将来いずれ、どちらかにマルをつけなければならない。 性別記入欄は未来の扉の前に立つ門番で、 その門番を説得する言葉をまだ見つけられていない。不安。 中鉢からの手紙のところで泣いた。保健室の先生がグッジョブ!2020/11/23

せ~や

70
読みやすい本でした。言葉足らずな文章も、14歳の主人公を表したようでした。性別や自分が決まっていく、家族が離れたり壊れたり修繕されたりしていく。14歳の世界は、すごくグチャグチャしてる。選ばないといけない中で、選ばず全部大切にしたい。グチャグチャで、身勝手で、先の見通しも浅はかで、うまく言葉にも出来なくて、それでも目の前の世界を変えたくて、壊れそうになりながら必死にもがく二人の14歳の姿と心情がなんだかとてもリアルでした。友達や親戚、近所の大人とか避難所があったから、当時立ってられたのかも。☆4.52021/05/26

だまだまこ

67
自分は女であることに何も疑問を持たずに生きてきた。でも自分の性に違和感を持って、型にはまることを強要され続けるのは、自分を否定し続けることと同じだ。「男と女」その2つの言葉の間にある多彩な心と身体の形。14歳の薫子の目で見る世界は、いろんな意味で振り切れていて、見て見ぬふりをしてきた沢山の問いを突きつけられた気持ちだった。心が女と宣言した中鉢章雄と、親から言葉のDVを受ける薫子の姿を見て、共感というより、彼らの問いにどう答えるべきかどう守れるべきかと考えていた。誰もが自分を大切にできる世界であってほしい。2020/12/05

itica

63
両親の不和は子供を傷つける。親の無知と傲慢も子供を傷つける。クラス内に満ちる悪意に気づかない振りをするのは心を消耗させる。読めば読むほど怒りと苦しさが増してくる。14歳は親にとってはまだ保護が必要な子供だけれど、大人より余程、真実が見えているときがある。子供を侮ってはいけない。そういう私も子供が14歳の頃、きちんと向き合っていただろうか。いずれにしても大人になるための通過点は、痛みを伴うものなんだと思う。今、その瞬間に立ち会ったような気分なんだ。 2021/05/09

モモ

59
もしも自分の体と心が一致していなかったら。心は女だけれど、体は男。そして、その事実を家族が受けとめられなかったら苦しみは倍増してしまうのだろう。両親が不仲でつらい生活をおくる薫子。イケメンの中鉢がカミングアウトしてセーラー服を着てきたことで、周囲はとまどう。中鉢と仲良くなった薫子が、自分の家族と中鉢を必死に考えていく様子がひりひりと胸にせまる。『世界はひとつなんかじゃない。ここがすべてだと思うな』実の親とも距離をとるためのシェルターは『世界から守ってくれる世界』。中学生、高校生にも読んでもらいたい一冊。2020/12/13

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