内容説明
高度経済成長華やかなりし頃、少年が幼少期を過ごした東京には、郷愁あふれる景色が広がっていた……。幻想文学の鬼才、怪奇小説の名訳者として知られる著者が幼い日に見た情景とは? 懐かしいメニューの数々をきっかけに、在りし日の風景をノスタルジー豊かに描き出す。お子様ランチに興奮した三越の食堂、着流しで悠々と街を歩く祖父の姿、そして浅草の遊園地で一緒に遊んだねえやさんとの日々。独自の文体で描いた南條商店版『銀の匙』。
目次
まえがき
花ちゃんのサラダ
花ちゃんのお勝手
きみよし焼き
ひさご通り
日本橋の「スエヒロ」
オブラート
かりんとう
「へいはち」考
金魚の糞
おすもじ
三越の食堂
カリーライス
三笠会館の唐揚げ
鯛めし
あとがき
謝辞
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Inzaghico (Etsuko Oshita)
9
「花ちゃんのお勝手」、「日本橋の『スエヒロ』」、『三越の食堂』、『三笠会館の唐揚げ』といった見出し、昭和世代に直球で迫ってくる。この人は、わたしより10歳ほど上だが、商家の生まれで、両親が外国暮らしで、祖母と一緒と住み、「ねえやさん」に育てられた。「花ちゃん」というのは、そのねえやの名前だった。ちなみに、ねえやの本名は美智子さん。昔はそういう時代だったんだな。2020/12/30
イースクラ
2
著者より一回り下だけど、読んでて思い出した…高校時代訳あって三味線を習いに行った駒込の古いお家。煙管で一服し、吸い終わるとそれを煙草盆に叩き付ける怖い師匠。ねこが居て、不安覚えたこと…この本の中に出て来る人や景色と一緒で、もうどこにもいない。2021/06/26
田中秀哉
1
南條商店版『銀の匙』とはよく言ったもんで、珠玉の短編集でした。今はもう味わえないであろう昭和の東京をノスタルジックに描いています。2021/03/24