夜叉神川

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夜叉神川

  • ISBN:9784065218525

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内容説明

「ここは夜叉神川の上流。
両側に高い崖が迫る谷、聞こえるのは川の音と、山で鳴く鳥の声だけだ。」――『川釣り』より。

「昔、亡くなったおばあちゃんが教えてくれた。魂という漢字に鬼の字が入るのは、もともと人の心に鬼が棲んでいるからだと。」――『鬼が森神社』より

全ての人間の心の中にある恐ろしい夜叉と優しい神、その恐怖と祝福とを描く短編集。
「川釣り」「青い金魚鉢」「鬼が森神社」「スノードロップ」「果ての浜」        
夜叉神川の上流から下流へ、そして海へと続く全五話を収録。 
野間児童文芸賞受賞後初作品

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

nico🐬波待ち中

77
夜叉神川の側に住む子供たちの周りで起こる摩訶不思議な出来事5話。子供の世界は複雑で、自分の気持ちを巧く表現できずつい残酷な言葉を平気で言ってしまうことも。そんな不器用な子供たちに警笛を鳴らすように、不思議な現象に次々と誘い込まれる。「鬼はだれの心にも棲んでいる」そんな怖い鬼だけれど、大人になるにつれ見て見ぬ振りが出来るようになる。素直に反省出来る子供の期間だから、鬼も神のごとく優しく叱ってくれるのかもしれない。ラストはどれも、長かった夜が明け眩しい朝日が昇るように、ほっと息をつけるものばかりで安心した。2023/05/07

itica

72
大人でもけっこう怖い。夢か幻?鬼?それとも、うつせみ?夜叉神川の上流から始まり、徐々に下流に移り、最後は海にたどり付く5編の物語。この世のものでないものの怖さ。これは肌感覚で感じる恐怖。しかし、それより怖いと思うのは、人間の持つ欲や恨み、嫉妬と言った負の感情だ。誰でも心の奥に鬼を住まわせていると言う。慈しむ心、謙虚な心を忘れたら誰でも鬼になってしまう。本当にそうだよね。昔、人間が犯した罪も忘れてはいけないよね。二度と同じことを繰り返さないためにも。 2021/03/06

よこたん

58
“神さまでありながら魔物でもある。ある者には祝福を与え、ある者には恐怖を与える。” 川もまた表裏一体の存在である。命を育む場所でありながら、時には容赦なく奪い去る。釣りあげた魚は敬意を持って食べよう。そうでないと…怖い目にあう。人を呪えばどうなるか。きっと待つのは、穴二つ。ぞっとして、気持ちがざらつくような物語と、寂しくてやりきれない、受け止めてあげられない無念さが押し寄せる物語と。サトウキビ畑を走り回る子どもの足音と気配。“人が石に刻むのは、忘れないでほしいから。”南の島の悲しい歴史に涙がこぼれた。2021/02/27

モモ

55
夜叉神川の上流から話は始まる。辻くんとの楽しい川釣りのはずが徐々に不協和音が響く。生き物を無意味に苦しめる様子がひどい。そして天罰が下る…。川のほとりの家では、学校に通えなくなった琴の部屋に古い金魚鉢が置かれた。そこに閉じ込められた者は、外に出ることができない。川の支流にある鬼をまつる神社。人の心に鬼が棲むという言葉の通り、友人の心の鬼が怖い。隣の偏屈おじいさんの自殺を止める飼い犬と小学生に胸打たれる。最後の波照間島での戦争中のひどい話が実話で驚いた。ざわざわと不穏な音を立てながらも心に残る話で良かった。2021/05/08

東谷くまみ

42
夜叉神川の上流から海へと続く連作短編集。其々たった40頁ほどだが、そこで繰り広げられる世界があまりに濃密でまとめて読むと毒にあたりそう。息をつめる、鳥肌が立つ、心が冷える。そんなお話の中で松井さんと僕とのこれからが今までと違うものになるんじゃないかとじんわり胸に温かい気持ちが広がる、希望を呼ぶ花「スノードロップ」が好き。最後の短編「果ての浜」は波照間島から西表島への強制疎開という悲しい歴史を描いていて涙が零れた。海蛍となった子供たちの無邪気な願い、弟のために走る兄、「あんちゃん」と叫びとりすがった弟。→2023/08/29

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