内容説明
YouTubeで文学的世界観を作り出している、にゃんたこの初エッセイ!
にゃんたこワールド全開の日常と哲学がここに凝縮。短編ストーリー「沈む熊」、「いつくしみをたたえて」も収録。
【本文より】
生活の中に、青春を懐かしむ余白をもつ人間のことを大人と呼ぶのだとすれば、私の心はずいぶん前からすっかり大人になってしまっている。年齢を重ねただけの子供を大人と呼ぶことができるのか? というモラトリアム的な問題はさておき、とにかく最近、青春時代のあれこれを思い出すことが多い。けれど、「大人である」私が、たとえば高校生の私を懐かしく思うのと同じように、高校生の私もまた、「大人である」私にひどく恋い焦がれていた。
高校一年生の夏休みに、生まれて初めて髪の毛をブリーチした。ブリーチ剤を頭に塗りたくられて、ラップをぐるぐると巻かれる。60ワットの照明器具然としたドーナツ状の謎の物体が頭の周りをぐるぐると回る。頭皮が燃えるように熱くなり、その熱さが次第に痛みへと変わっていく。昨晩食べた八匹の子持ちししゃものことを思い出す。コンロの中ってこんな感じだろうか。
一時間の耐久の末、憧れのブロンドヘアを手に入れた私は、顔にも年齢にも不釣り合いな濃いメイクに違和感を覚えないほどには浮かれきっていた。大人の女はブロンドヘアが似合う、という類稀なる偏見と理想。そこに若さゆえの超主観的な実行力が加わって、悲しみのブロンドティーンが誕生してしまった。(続く)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
たこちゃん
66
書いた!2021/01/20
olive
42
笑わせて掴みはOKにし、心動かされる言葉を紡いで〆る上手さ。こんなこといいな書けたらいいな...のび太の気持ち。朝起きて、顔洗って歯を磨く。そういうことが当たり前のようにできない日が多々ある。(本文より)そいう当たり前のことができない日々がほぼない私。クラスでは同じグループには属していない私たちだが、欠けているものが美しいと思う気持ちも、人を嫌うなら一人で嫌いになれ、人を愛したら雑音を消して一人で愛し続けろ。その気持ちは同じだ。2022/08/16
KON
24
YouTuberにゃんたこさんのエッセイ。些細な日常から心温まる話まで、巧みな文章で楽しませてもらいました。この本を読んで癒された自分はそれなりに疲れていたのだと思います。皆様、たまには自分を労ってください。その時には是非この本を。2021/11/25
でら
22
Youtubeでのにゃんたこさんを知らない自分が読んで面白い!となったので、この方の動画を拝見している人が見たらもっと楽しめるんだろうなぁ。 エッセイってどうも小説と違う所があるから少し敬遠していたけど、たまには読んでみるといいかも、って思わせてくれるような一冊でした。2021/06/30
Our Homeisland
20
ここ読書メーターの紹介のタイトルのインパクトが凄い本投票(?)で私が一票を投じた本。ユーチューバー(インスタグラマー?)で著書はこれが初めてのようでした。いろいろな長さが混ざったエッセイ。なかなか鋭い視点を持っていて文章も分かりやすくてうまいです。それに考え方に一本の芯が通っていることがよく分かる本でした。「世間や人が良いと評価するものが良いのか?評価して良いと思うのは自分だろう。」という非常に大切な話が何度か出てきて納得できました。文章は軽やかですが、著者ご本人はかなりしっかりした重厚な人だと思います。2022/01/23
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