内容説明
ブラック企業の同期三人組。早朝から深夜まで働き会社に泊まり込む毎日。疲弊しきった三人はある日深夜の居酒屋に行く。一杯のビールで人間らしく笑いあった三人だが、極悪上司の壮絶な追い込みにあい――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
131
ハードカバーで読んで号泣して、2年ぶりに文庫化&改題での再読です。やはり冒頭のブラック企業の描写は読んでて目を背けたくなり、胸がつまります。その後、それぞれの視点から綴られる展開は見事な繋がりをみせ、ブラック描写も見事に吹き飛ばしてしまう名作だと思います。タイトルにあるようにビリー・ジョエルの「ピアノマン」がずっと頭の中でリフレインし、読後もなりやまないこと必至です。残念ながら、本作に出てくるようなブラック企業は実在するのかと思うと、複雑ですね。テレビドラマ化もされてるので、しっかり観たいと思います。2021/08/27
坂城 弥生
56
ただ必死に立ち直る人達の連作短編集。でもひとつの行動が誰かを動かして、誰かを救う連鎖がある救いのある話だったと思う。2021/02/17
さぜん
54
「逃げ出せなかった君へ」の改題文庫版。第1章が強烈に印象に残る。ブラック企業の新入社員同期3人の過酷な労働環境。虚構だろうと思うが世間ではパワハラで追い詰められるニュースは後を絶たない。夏野が自殺をし彼に関わる人達のその後の人生が描かれるが、誰もが彼の死を悔やみ自分を責めつつ懸命に生きようとする。逃げる事は決して弱さではない。優しさも弱さではない。とにかく生きるのだ。読後はそんな力強さに励まされる。2021/01/31
あみやけ
43
再々読です。数年前の自分の年間ランキング一位です。とってもよくできた連作短編です。テーマは暗いけど、なんだか前向きな感じになります。こういうことは少なくなっていると信じたいですが、仕事なんてなんとでもなるんですよね。毎回、キンキンに冷えた生ビールを飲みたくなります。そして、ビリー・ジョエル。2024/08/03
いそG
34
ビリージョエルの「ピアノマン」が好きだったので、「ピアノマン」と検索して出会った本。この本、元々は「逃げられなかった君へ」というタイトルだったので、改題されなければ出会えなかったかもしれない。 やはり、本は、出会いだ。 ブラック企業と、人生で一番美味いビールと、名曲ピアノマンとを軸に、独立した話しが見事に繋がっていく。 思っていたのとは全然違う話しだったけど、とてもよかった。 ここまで酷くはないが、私も長時間労働の真面目なハードワーカーなので、他人事ではなく痛かった。 そう。逃げていい。逃げていいんだ。2023/05/15