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内容説明
土地や血統の宿命からは決して逃れられないと知りつつも,普遍的な個性や愛を信じようとした有島武郎(一八七八―一九二三).二つの力学が絡み合うなか,『或る女』『カインの末裔』『生れ出づる悩み』などの有島文学は産み落とされた.矛盾に満ちた葛藤の果てに有島が夢見た地平をめざして,その作品と生涯を読み解いていく.
目次
序 世界はやがて一つのミリウに┴第一章 二つの地/血から未開地へ┴第二章 地球と人種┴第一節 修士論文と二つの地人論┴第二節 『迷路』の人種主義┴第三章 愛と伝統主義┴第四章 海と資本主義┴第一節 大洋に揉まれて┴第二節 「あいだ」ならぬところ┴第三節 資本家見習い譚としての『カインの末裔』┴第五章 生きにくい女たちの群像┴第一節 経済に縛られる女┴第二節 可能性を航海する┴第六章 個性以前のもの┴第一節 雷雲めぐり┴第二節 懐郷する芸術を超えて┴第三節 個性を蔽うもの┴第七章 継承されてしまう財産┴第一節 習性的生活再考┴第二節 『親子』における士族的なもの┴終章 土くれどもの空┴第一節 すべてを使い果たせ┴第二節 米騒動の前後┴あとがき┴参考文献┴略歴と作品索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
39
明治から大正にかけての近代日本の矛盾を、有島武郎は一身に具現していた。成功した元薩摩藩士の家に生まれ海外留学も果たしブルジョワとしての生活を送る一方、アナキズムに関心を寄せ白樺派に参加し自らの士族的部分を嫌悪した。こうした思想的生活的葛藤を有島がいかに文学化したかが描かれるが、不倫相手と心中した経緯が省かれるなど伝記的要素は薄い。特に財産放棄までしながら小作人に裏切られた事情が、晩年の創作意欲の減退と結びついていたのか解明されていないのは惜しかった。有島作品は数十年も気にしなかったが、改めて読んでみるか。2020/11/11
ころこ
33
著者の仕事に惹かれて読みましたが、正直全く感心しない内容でした。有島武郎が中途半端に有名であるものの、本書を読んでもなお読み返そうとは思わないほど魅力がなく映ります。著者の「安っぽくて俗っぽい」チープな異端性を批評的に論じるのならば岩波新書は在野研究者にとって相応しくない場所に違いありません。更に著者は「新書よりも論文を読め」といっており、本書のです・ます調の文体の問題、要するに何を言っているのかよく分からないという指摘などは、発話内容と発話行為のズレに多くの読者が気付いているからではないかと感じました。2021/02/05
さえきかずひこ
16
筆者は本書で明治期の金持ちの家に生まれ、米国留学や欧州に遊び、大正期のわが国でよく読まれた小説家について、自由に柔らかく論じている。中盤から後半にかけては有島の代表作でもある『或る女』を、そこから派生した戯曲『断橋』を参照しつつ、三木清の動的な個性論を援用し論じるが、有島作品の核にある愛をめぐって、拡がりに満ちた批判的な考察を展開するくだり(第6章)が読みどころである。有島という人間の機微を照らす荒木優太の筆致から読者の私たち一人ひとりの内にもまた平凡で愛すべきテクストが溢れていることに気づかされる良書。2020/10/24
田中峰和
7
サブタイトルの地人論は、文明の地理的条件を説いたギヨーの説を内村鑑三が紹介し、有島がそれに拘ったことから。アメリカに留学した有島は白人へのコンプレックスを持つに至ったのは漱石と同じ。白人を第一に、東洋人を第二に、黒人を最劣等と評価したのは、時代を感じる。素封家の父をもつ彼はその後も、ヨーロッパに遊学したが、帰国後キリスト教信仰を捨てた。土地や決闘の宿命から逃れられないとしながらも、個性や愛を信じようとするところから彼の文学は生まれた。矛盾に満ちた葛藤の果てに有島が何を見たのか。作品と生涯が読み解かれる。2020/10/31
Shun'ichiro AKIKUSA
6
です・ます体で書かなかったほうが叙述内容の性格にあっていたのではないだろうか。2020/10/21
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