内容説明
読み進めるごとに出来事の〈意味〉が反転しながらつながっていき、数十年の歳月がひとつの大きな物語に変わる──。解説を寄せるミステリー評論家の千街晶之氏が「その執筆活動の集大成である」と絶賛する、道尾秀介にしか描けない世界観の傑作ミステリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イアン
153
★★★★★★★★☆☆道尾秀介「神」三部作の第2弾。母の遺影を撮影するために写真館を訪れた歩実は、ある男性の遺影を前に絶句する母を目撃する。水質汚染事故や火振り漁での出来事など、特定の事象を様々な角度から描くことでそこに至った背景を浮かび上がらせている。淡い恋心を抱く女子高生が主人公の第1章と、小5男子が親友の父の救出に動く第2章。無関係に思えた2つの物語が数十年を経てリンクする複雑で精緻なプロットは上級者向けのミステリといえるだろう。嘘、偶然、勘違いが生んだ数奇な運命に素直に感謝できる歩実は、やはり強い。2023/04/22
KAZOO
123
久しぶりの道尾さんの文庫です。中編くらいの三つの話が収められていて時間は異なるのですがある地域の二つの町の人物たちが出会い話をつむいでいくのですが、ちょっとした誤解や小さなウソがポイントとなります。最後にはその話がうまく収まるような感じで読む方としては道尾さんらしいと感じました。2021/02/22
H!deking
112
おーし、これこれ!道尾秀介作品はほぼほぼ読んでて、好きなのもそうでもないのもあるけど、これは好きなやつです!めちゃくちゃ面白かった!風はどこから発生して、誰にどんな風に影響及ぼすのか。詳しい話しは置いといて、とにかくこれはおすすめ!2021/02/24
Kazuko Ohta
73
「好きとは言えないのに読んでしまう作家」のうちのひとりが道尾秀介なのですが、本作を読むと、私やっぱり彼が好きなんだわと思う。裏表紙から想像したのはオカルトの入ったミステリー。遺影専門の写真館が舞台で、死んだはずの人が写っているとなればそう思いませんか。だけど違った。いったい各章の登場人物はどう繋がっているのか。とてもややこしいので、500頁弱のボリュームでもとっとと読むことを勧めます。でないと、誰が誰かわからなくなる。いろいろある人生だったとしても、いろいろあったからこそ今がある。あなたがいる。よかった。2022/02/14
ピース
67
あの時あれを選らばなければ…あの時あんなことがなければ…自分の人生は全く違ってただろう。しかしこれを選んだから、こんなことがあったから今がある。ある意味考えても仕方ないことなんだけど。確かに最高のシチュエーションになってたなら源哉と歩実の二人は生まれてこなかったけど、現実には二人は生まれた。そして出会った。たまたま偶然 に。この現実の重さをひしひしと感じる話だった。2021/01/22