内容説明
直すのは人の心、自らの過去――フランスの田舎町を渡り歩きながら、中世フレスコ画の修復に打ち込む、孤独で風変わりな日本人男性・アベ。名も無き人々が胸に秘めた想いに接し、さながら神父(アベ)のように彼らを受け止めるうちに、アベは町に溶け込んでいく。人生の哀歓と男の手仕事の魅力を絡めて描かれた、著者独自の世界が広がる、5つの連作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
106
藤田さんのフランス経験による現地のさまざまな場所での人間関係を壁画修復師の主人公がかすがいになるような感じで修復していく物語です。5つの連作で題名を期待すると肩透かしの巻になります。私も最初読んだときは、そこを期待したのですが、人間関係修復師のような感じです。2017/12/07
KAZOO
98
ここ10年の間に3度目の読書です。藤田さんの作品の中ではこれが一番好きです。5つの連作で主人公は日本人でありながらもフランス各地の田舎での教会やお城などの中世のフレスコ画の修復の仕事をしながら、その場所での人間関係のしがらみをほどいていきます。自分も心のうちに重いものを抱えながらの旅なのですが、この続きも読みたかった気がします。2023/08/09
GaGa
40
う~ん、これは自分がいけないのだが、想像していたようなストーリーと180度違っていた。もっと名画蘊蓄とかがつまっているのかと思った。ただ、つまらない話ではない。さくさくと読めたし…でも、それだけだったかな(苦笑)2013/05/19
ぜんこう
17
壁画修復師がその土地で出会う人間関係(?)も修復する・・・と僕が書くとちゃちな話に聞こえますね(^^;) 壁画の話は少ないんですが、風景などの描写がうまいです。フランス行ったことないけど、なんとなく村々の風景が目に浮かぶような感じ。 なんとなくこの作者さんの書くものにリズムがあうと言うのか、気持ちよく読めるので、他の作品もまた手にとってみようかと思います。2015/08/15
KAZOO
8
北森鴻さんの「深淵のガランス」は絵画修復師の話でしたが、藤田さんのは教会などの壁画修復師の話です。とは言うものの壁画を修復すること自体よりもこの主人公の周りにいる人々の様々な話が連作で書かれています。私は嫌いではないのですが、表題を見ると勘違いしてしまう人がいるかもしれません。藤田さんもこのような小説を書いているのだなあという印象を受けました。2013/06/10