内容説明
近代政治の主権概念は人間と動物の区分と不可分であり、政治は常に人間に固有なものとされてきた。つまり西欧思想においては、人間と人間ではない生きものたちの政治関係の発明が回避され、獣と主権者のアナロジーによって動物たちに日々ふるまわれる根底的な暴力が否認されてきたのだ。デリダが人生の最後に発明した「動物-政治」概念から、「動物の民主主義」を考える。
目次
序論 ゆえにデリダは政治的動物であった
動物の苦難
反ユダヤ主義とユダヤ的アイデンティティ(一九三〇─一九六二年)
デリダの独立(一九六二─一九六七年)
内部からの追放者、あるいは動物の形象としてのマラーノ(一九六七─二〇〇四年)
第一章 肉食─ファロス─ロゴス中心主義
肉食的供犠の意味と機能、あるいは肉食─ファロス─ロゴス中心主義の脱構築
動物の供犠と人間的主体性の創造
第二章 パルマコン
パルマコンと肉食的供犠
動物の供犠の「パルマコン的」解釈
第三章 動物─政治
動物─政治と生─政治
動物─政治の帝国としての獣と主権者のパルマコン的アナロジー
主権の病に侵される動物たち
第四章 自由
自由から応答へ
飼い慣らしの自己─免疫的暴力
飼い慣らしの「奇妙なエコノミー」
動物の自由と応答可能性=責任
第五章 触覚中心主義
動物の触覚
触覚=触れることの法
触覚中心主義の脱構築
触れることの動物倫理、贈与なき捧げ物
結論 デリダの動物倫理の未来
「アニマル・スタディーズ」の根底的な反─人間主義
フェミニズムと人間に固有なものの脱構築
脱構築と法─政治の問い
後書き 動物─政治的民主主義のために─いかにしてデリダは動物たちを来たるべき民主主義へと参入させるのか
動物─政治というデリダの新概念
動物─政治とは、暴力と死をもたらすものである
動物─政治的主権はアナロジーである
解説