近代ヨーロッパとキリスト教 - カトリシズムの社会史

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近代ヨーロッパとキリスト教 - カトリシズムの社会史

  • ISBN:9784326200559

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内容説明

世俗化のトップランナーとみなされてきた近代ヨーロッパ。しかし、その文化や生活習慣、制度や政策の基層には、今なお、キリスト教、ことに中世以来の伝統宗教であるカトリックの存在が垣間見える。カトリシズムというプリズムを通して、近代ヨーロッパとキリスト教との対抗・相互補完の歴史を探る論文集。

目次

序[中野智世]

第I部 教育・文化と信仰継承

第1章 神のいる学校――一九世紀フランスにおける女性教師の養成[前田更子]
 一 公教育のなかの宗教
 二 女性教師と修道会、公権力
 三 教師をめざす娘たち
 四 神のない教育はない、神のない道徳はない
 五 宗教と知識のはざまで
 六 文化・心性としてのカトリックの継承

第2章 社会主義政権下での宗教実践――スターリン期ポーランドの新興工業都市の暮らし[加藤久子]
 一 カトリック教会をめぐる両義性
 二 コンビナート都市の建設
 三 新興都市におけるカトリック信徒
 四 日常生活のなかのカトリシズム

第II部 近代政治とカトリック

第3章 カトリシズム・リベラリズム・デモクラシー――ラムネ、トクヴィルの見たアイルランド[勝田俊輔]
 一 ウィーン体制下のカトリシズム
 二 ラムネとアイルランド
 三 トクヴィルとアイルランド
 四 アイルランド・カトリシズムの広がり

第4章 言論統制下のカトリック――スペイン・フランコ独裁における経験[渡邊千秋]
 一 「新国家」の言論統制と教会
 二 「カトリック」的ジャーナリズムの系譜
 三 フランコ独裁下の言論・思想統制
 四 兄弟会連盟、その創設・活動と葛藤
 五 兄弟会連盟とはなんだったのか

第5章 もうひとつの「近代政治」――オランダのカトリック政党と「豊かなローマ的生活」[水島治郎]
 一 キリスト教民主主義の「社会的基礎」
 二 「豊かなローマ的生活」カトリック社会による信徒の包摂
 三 ローマ・カトリック国家党と「赤」

第III部 工業化・都市化のなかの聖職者

第6章 労働者の司教ケテラー――一九世紀ドイツの社会問題とカトリック社会思想[桜井健吾]
 一 社会問題とケテラー
 二 ケテラーは社会問題への認識をどのように深めていったか
 三 ケテラーの社会思想にはどのような特徴があるのか
 四 社会回勅の先駆者

第7章 世紀転換期ドイツの赤い司祭――H・ブラウンスとカトリック労働運動[尾崎修治]
 一 ドイツの労働問題とカトリック聖職者
 二 工業都市の赤い司祭
 三 労働運動の司令塔として
 四 信仰実践としての労働運動

第8章 都市化とカトリック教会――ピエール・ランドが見た両大戦間期のパリ郊外[長井伸仁]
 一 宗教史と都市史の交点
 二 ピエール・ランド
 三 『郊外のキリスト』
 四 転換期の教会

第IV部 社会問題とカトリックの世界観

第9章 奇蹟の聖地と医師――ルルド傷病者巡礼を通してみる宗教と科学[寺戸淳子]
 一 聖地ルルド
 二 医師・科学者とルルド
 三 カトリック医師の社会活動
 四 ルルドにおける医学と宗教

第10章 マフィアとカトリック教会――犯罪と悔悛[村上信一郎]
 一 マフィアに対するカトリック教会の沈黙
 二 マフィアとは何か
 三 信心深いマフィア
 四 マフィアと聖職者
 五 告白と悔悛
 六 罪には厳しく罪びとには寛大に
 七 おくればせながらの破門宣告

第11章 カトリック慈善の近代――ドイツ・ヴァイマル福祉国家におけるカリタス[中野智世]
 一 現代のカリタス
 二 一九世紀のカトリック慈善事業
ほか