内容説明
ウーパールーパー、カエル、蛾、蝶と、ちょっと不思議な生き物を飼う人々が、いつしかその生き物たちに依存するかのごとく、不穏な領域に踏み込んでいく姿を描いた異色連作集。
全米図書賞受賞で話題の作家の最新作。
夫との生活に疲れた中年女は、家にいた毛虫に「トーマス」という名前をつけて飼うようになった。トーマスへの愛着が深まることで、なじんでいると思っていた夫のことが、いままでとは違って見えてくる。夫の本心とは何なのか。夫の好きなものは何か。夫は何に関心があるのか。夫は何も関心を持っていないかもしれない。じゃあ、わたしは夫の何に関心があるのか。何もないかもしれない。わたしは自分に対しても関心を持つことができない。どうしてこんなことになってしまったんだろう。何がいけなかったんだろう?
疲れた。ほんとうに疲れた……。中年女の心情をリアルに描く――「イボタガ」。
ウーパールーパーに「アポロ」という名前をつけたコンビニで働く青年の話――「ウーパールーパー」。
シングルマザーの母親との軋轢にもめげず、健気に生きていこうとする少年の話――「イエアメガエル」。
「トーマスは羽化しませんでした」という謎のメッセージと共に妻に去られた中年男の話――「ツマグロヒョウモン」。
※この電子書籍は2017年12月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
373
4つの短篇からなる。呼応する第1話と第4話に挟まれて2つの独立した短篇から構成される。まず第1の共通項は、タイトルにあるように、それぞれの主人公たちが何らかのモノを飼育している。ただ、それは一風変わっていて、イボタガ、ウーパールーパー、イエアメガエル、ツマグロヒョウモンである。しかし、飼育する彼らはけっして偏執的なタイプではない。むしろ、ある意味では普通の人格を有していると言える。第2の共通項は、彼らが抱える本質的な"孤独"である。そもそも彼らの世界は狭いのだが、その中にあって彼らは本質的には誰とも⇒2021/11/11
さこちゃん
25
意外な生き物を飼う人達四篇。可愛がるというより、世話をする事で自分の生きる辛さを紛らわせているよう。最初と最後に納められた、疲れきった夫婦それぞれ目線の物語が印象的。自分がいいと思ってしている事は相手が望んでいない事。それは譲る事ができない価値観の違い。年明けから柳美里作品を続けて読み、心が疲れた。2021/01/09
さち@毎日に感謝♪
20
独特の世界観で読むのが難しく、どの話も暗いイメージばかりでした。生き物を飼っているそれぞれの人達の絶望しか感じられませんでした。2021/05/17
CCC
16
現実に摩耗して気力を根こそぎにされている、そんな人ばかりが出てくる短編集。虫やらなにやらを飼ったりするが、それが救いになるような話ではなかった。すごい閉塞感。人生はつらいなあ。2021/09/18
常盤そら
13
マイナーな生き物を飼っている方々の短編集でした。 正直名前だけじゃどんな生き物か想像つかなかったので調べてみましたがどれも自分には触れそうにない生き物ばかりでした:(っ'ヮ'c):。1つ目と4つめの話が繋がってて結構好きでした。2021/08/18
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