ちくま学芸文庫<br> 明の太祖 朱元璋

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ちくま学芸文庫
明の太祖 朱元璋

  • 著者名:檀上寛【著】
  • 価格 ¥1,210(本体¥1,100)
  • 筑摩書房(2021/01発売)
  • ポイント 11pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480510051

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内容説明

疫病と政治的混乱の中、最下層民でありながら皇帝にまで登り詰め、約550年に及ぶ明清王朝の礎を築いた朱元璋。何がこの偉業を可能にしたのか。それは「聖賢と豪傑と盗賊の性格をかね備えていた」と清の智者・趙翼が指摘した資質によるものが大きいだろう。紅巾軍に身を投じた当初は盗賊の活動をし、地方政権を樹立するとひとかどの豪傑となり、皇帝となってからは諸々の制度を定め聖賢の働きをした。しかしこの三つの性格は時系列ではなく同時に併存していたのであり、治世中の残忍極まる大粛清も「聖賢」の紛れもない一側面であった。歴史上類を見ない巨人のドラマを、膨大な史料で描き出す。

目次

プロローグ
一 順帝とその時代
天暦の内乱 順帝トゴン・テムルの即位 至正の新政 悲惨な民衆の生活
二 元末の反乱と紅巾軍
白蓮教徒の活動 反乱への序曲 起ち上がる民衆たち 紅巾軍以外の反乱者
三 朱元璋の生い立ち
濠州府鍾離県 少年時代 托鉢僧
四 紅巾軍の中へ
朱元璋の決断 郭子興との出会い 徐州集団の合流 朱元璋集団の発展
五 金陵を目指して
大宋国の盛衰 郭子興の死 渡江 集慶陥落
六 浙東地方の経略
呉国公となる 浙東進出 浙東の四先生 浙東制圧
七 呉王への道
群雄割拠 陳友諒の応天攻撃 内紛 小明王の救出 ⅱ陽湖の戦い 呉王即位
八 最後の決戦
朱呉国と張呉国 蘇州攻撃 戦後処理 紅巾軍との訣別
九 中華の回復
モンゴルの駆逐 大明帝国の誕生 中華意識の高揚 国土の復興
一〇 明帝国の内部矛盾
中都の建設 淮西集団と浙東集団 諸王の分封 南人政権の自己矛盾 改革への着手
一一 朱元璋の苦悩
矛盾の拡大 科挙の廃止 紙幣による江南経済の統制 朱元璋の焦り
一二 独裁体制の確立
空印の案 知識人の抵抗 胡惟庸の獄 江南地主への弾圧 里甲制の施行
一三 恐怖政治の拡大
馬皇后の死 郭桓の案 功臣の粛清 錦衣衛の獄 廷杖 文字の獄
一四 明王朝よ永遠なれ
法治と徳治の狭間 皇太子の死 明王朝よ永遠なれ
エピローグ
文庫版あとがき
図版目録
年表
索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

崩紫サロメ

26
以前読んだ白帝社『中国歴史人物選 明の太祖 朱元璋』(1994年)の文庫版。引用史料の出典を明記したり、多少の手直しはあるが、基本的には原著のままであるという。貧農から皇帝へ、朱元璋の生涯と丹念に描く。近年『陸海の交錯――明朝の興亡』(岩波新書、2020年)を執筆した著者であるが、本書では朱元璋の対外政策を特徴付ける海禁について全く言及していない(文庫版あとがき)など、著者の、また中国史学会の関心のあり方の変化も感じられる。2021/07/02

さとうしん

25
朱元璋の生涯のうち、明王朝成立までの前半生にかなりの紙幅を割いているという印象。疎まれても疎まれても郭子興を支え続けた青年時代から、劉基・宋濂ら江南の知識人に啓発されて自らも儒教的素養を身につけていくも、生え抜きの裏切り、知識人への不信から、「恐怖政治」に邁進していく様子を描く。ひとりで聖賢・豪傑・盗賊の三要素を兼ね備えていたとされる朱元璋、一般的なイメージとは遠そうな「聖賢」の部分も、暴君という通俗的なイメージと重ねつつうまく描き出せている。2020/09/19

ゲオルギオ・ハーン

23
1994年に刊行されたものに修正を加え文庫化した一冊。明を建国した朱元璋の一生を丁寧に書いている。個人的に面白かったのは元を北方に追いやり、中国を統一してからの治世で、儒教政治を目指し、挫折し、功臣たちも容赦なく処断する恐怖政治に移行する過程についての分析が興味深かった。戦争であれば敵との相対的な出来不出来で勝敗がつく。その点、優れた指導者であった朱元璋は群雄どころか元朝の中枢よりも抜きでた存在のため、常勝将軍として天下統一を短期間で果たした。ところが、統治となるとそうもいかなくなる。2020/11/27

MUNEKAZ

23
朱元璋の評伝。ネット上だと苛烈な粛清を行った暴君の側面ばかりが語られがちだが、なぜ彼がそのような政策を行ったかを、著者なりに解き明かす。元末の混乱期に貧農の息子から、反乱軍の頭目、そして皇帝へと登り詰める中で、自らが学んだ儒教的な聖代を実現させるため、恐怖政治に突き進む皮肉な姿が描かれる。人々におのれの分をわきまえさせる他律的な支配は、混乱を鎮め、民を思いやる気持ちから起こったものとはいえ、徳治からは程遠いもの。たたき上げの人ほど苦労した分だけ、他人に厳しいというのを地でいく方だという印象を持った。2020/09/25

ようはん

18
何で朱元璋はあそこまでの粛清をしでかしたのかという疑問を持って読んでみたけど、とにかく政治に対しては理想主義者かつ完璧主義者というのが皇帝に即位した後の朱元璋の人物像のイメージ。元末期からの弊害であった官僚や地主の不正や腐敗を許せず、傲慢気味になってきた古い功臣への不満や疑念といった辺りから粛清が始まったのは全く理解できなくもないがやはり上記の性格故に必要以上に粛清に苛烈になり過ぎたとしか言いようがない。2021/07/31

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