内容説明
女子高生が自宅の中庭で倒れているのが発見された。母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。母の手記と娘の回想が交錯し、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも――。圧倒的に新しい、「母と娘」を巡る物語(ミステリー)。(解説・間室道子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
765
“母性は全ての母親に等しく備わっている”、この思い込みが無意識のうちに世の母親と子どもの両方を苦しめているという現実。まさかの『母性』という作品名、その深く掘り下げられる内容に強い衝撃を受けたこの作品。人間も一つの生物、動物にすぎない。それが故に『本能』という生まれ持った性質には決して逆らえない。でも人間だから、そのこと自体を考え、思いを巡らせることにもなります。人間ってなんと辛い生き物なのだろうと思うと共にそれでも人間だから、人間ならではの見方、考え方ができるはず。色々な事に思いを巡らされた作品でした。2021/03/14
馨
597
母娘それぞれの立場から語られる人生が食い違い、逆の思いが互いに芽生える。清佳側の視点が何となく本当っぽいけれど、ルミ子のお母さん(清佳のおばあちゃん)が凄すぎて、本当ならお母さん以上に我が子に愛情を与えてあげるところを自分の娘でさえ母以上には愛せないルミ子の気持ちはちょっとわかります。なるほど…と理解したつもりで読み進めると最後になってあれ!?冒頭ニュース記事と違う??何故?となり、皆さんの感想を読んでやっと自分が完全に騙されながら読んでいたことを知りました。解説の通り二人共信用ならない語り手だったな。2022/07/01
ポプラ🌴
577
読み始めからスッと引き込まれる様に深くこの作品の世界に誘ってくれます。母と娘、2人の視点が食い違う様が、あ~この人の立場なら、こう考えるよね~と妙に納得させられると同時に、私達現実社会でも同様に、いろんな人それぞれ違う立場から違う視点、考え方があるのだなと改めて考えさせられました。イヤミスの女王の湊さんだけあって、この作品でも読んでての気分の悪さは健在なのですが、でも、もっと読み進めたい!とページを括る手を止められませんでした。秋には映画化です。戸田恵梨香さん永野芽郁さん主演。楽しみに待ちたいです。2022/07/13
ちくわ
555
冒頭から『母と言う呪縛 娘という牢獄』に近い重苦しさや不安を感じた。あの作品は娘のあかり目線で真相に迫るが、こちらでは母親目線で綴られる話が多く、あかりの母親の心理を本作の母や義祖母を通じて垣間見たような気持ちになって恐ろしかった。加えて各々が語る内容がバラバラで、何が真実なのか謎のまま話が進む。だが、それらは全てミスリードだった? 人が感じる善悪なんて、断片を恣意的に評価した思い込みなのだろう。愛も普遍的な定義は無いもんね…皆が夫々に思い描く理想があるだけで。真実は見え難い!と突き付けられた作品だった。2025/07/27
hideko
464
女子高生が庭で倒れているのが発見された。 自殺か?他殺か? (母の手記)(娘の回想)(母性について)と三人がそれぞれの立場で語って行く。 共感出来る人物は居なかった。まあ、生い立ちが違うと言えばそれまでだが。 幸いにも嫁姑の仲も良かったし、夫婦仲も良いと思う。あくまでも、娘からの立場から見てだ。 湊さんの作品にしては、まあハッピーエンドの方ではないかな。2017/07/17