内容説明
横丁には庶民に活力を与える不思議な力がある。そんな「戦後」の呑み屋横丁が、東京五輪開催に際し、絶滅の危機に瀕している。横丁をつくり、横丁に生きた名もなき人々は概して記録を残していない。このままでは、昭和の香り残るパラダイスは、人々の記憶から消えてしまう。そんな危機感から、筆者は立ち上がった。テキヤ、よそ者、周縁に置かれたひとびと。「みんな」で作った横丁の歴史を掘り起こした「横丁ジャーナリズム」の真骨頂。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fwhd8325
60
けっして特別な場所ではなかったはずの横丁ですが、最近ではそこが観光地化していることに違和感を感じています。生まれ育った町Ⅱも横丁がありました。横丁ならではの道幅、匂い、人。著書は横丁の生命を描いているように感じました。戦後史というやや大仰なタイトルだけれど、横丁ならではこその歴史があります。読み応えのある一冊でした。2021/08/06
おいしゃん
18
戦後、横丁を形作った背景や人々を、足を使って丹念にまとめた一冊。横丁が、外国人をはじめ、居場所を見出しにくい人々の受け皿であったことがよくわかる。独り言のようなクセのある文体は、好みが分かれるかもしれない。2025/06/04
DEE
16
主な所では渋谷、東上野、浅草、横須賀、高田馬場など、横丁の歴史や成り立ちを掘り下げるルポ。 こういうニッチなルポは好き。 横丁の定義は細かく言えば千差万別かもしれないけど、道か狭く密集してて、いい意味で汚くて美味いところという認識でいいと思う。 環境やら法律やらの影響で、いずれはなくなるか大きくカタチを変えていくであろう横丁。行くのは今のうちかも。2021/02/24
田中峰和
8
戦後の横丁のもとをたどれば、焼け野原に自発的に出来上がったバラック群。人々が食べるために群がった場所は、はしこく強い者だけが仕切る闇市だった。愚連隊もいれば、博徒、テキヤもいる。彼らと敵対したのは、三国人と呼ばれた朝鮮、台湾、中国の人々。70年以上経過すれば、当事者は見つからず、関係者たちも老人ばかり。ようやく見つけた取材対象を根気よく訪ねる。さらに時間を経れば、出稼ぎや故国を捨てたエスニックの人々が集住する横丁が出現。路地裏の飲み屋が消えるのは、五輪の開発より若者の飲酒離れの方が大きいのではないか。2021/09/07
しんさん
7
横丁、路地裏、ヤミ市跡。昭和が残るパラダイス。カオスな時代を生き抜いたパワフルな人々のストーリーや、集まった人たちがつくってきた独特の街の空気みたいなのが大好きです。2022/10/23