内容説明
半世紀の時空を超えて、太郎の言葉はぼくたちの胸にまっすぐ届きます。むしろ先の見えない不安な時代だからこそ、ズシッと響くのかもしれません。そして読み進むうちに、いつのまにか自信が湧いてきて、誇らかな気持ちになる。不思議な感覚です。
やっと時代が太郎に追いついた。そう言う人もいるけれど、ぼくの見方は少しちがいます。追いつく対象ならやがて追い抜かれるはずだけれど、けっしてそうはならないと考えているからです。
再生を果たした太陽の塔が50年のときを超えてぼくたちを挑発するのは、太郎が未来を先取りしていたからではありません。太郎は生涯をとおして「人間とはなにか」「芸術とはなにか」を考えつづけただけです。
人間の本質は千年や二千年では変わりません。太陽の塔がいつまでも古くならないのは、きわめて高度な普遍性を備えているから。おなじように太郎の言葉も古くなりようがないのです。
平野暁臣(文庫版「おわりに」より)
太陽の塔から半世紀を超えた今尚、岡本芸術は「人間とはなにか」「芸術とはなにか」を挑発し続けてくる。世界のパラダイムが大きく変換する混迷の時代だからこそ読みたい岡本太郎の言葉。それらは迷ったとき、困ったとき、ブレそうになったとき、生きることの真の意味を教え、自分の芯を思い出させてくれる。心に響く普遍的な言葉の数々は、読む人の血肉となり、明日を生きる自信や誇りとなる。
書籍未収録原稿を収録し、再編集した充実の人生論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
100
44
前半は怒りすぎてて、読んでるこちらはポカーンって感じ。昔、近所にいた喜怒哀楽の強いおっさんのよう。数々の言葉は芸術家には不要のものに思われるが、本人が自身の肩書きを人間としている以上当然か…2021/01/18
Shoji
33
岡本太郎さんの歯に衣を着せぬエッセイ。様々なテーマについて、毒を巻き散らかしています。例えば、1970年の万博。開催に反対する奴等が大勢いて、そいつらは自身を安全な場所に置いて批判ばかりしていたそうだ。そんな奴らに一石を投じたのが「太陽の塔」。火中に飛び込むのが好き、ではなくて、批判ばかりで何の生産性も産まない奴らに対して行動で示したわけだ。全編通して「俺が岡本太郎だ、文句があるか」と叫んでいる。岡本太郎、恰好いいなあ。2024/12/10
kum
32
断片的にしか知らなかった岡本太郎氏。これほどまでに人間本来の純粋さと情熱を併せ持った人だったことを今になって知った。「子供は自分の考えていることを親にぶつけたい。だが本当に親が率直に受けてくれるかどうか、不安なのである。話そうとしても、何か自分の気持と親の受け取り方がくい違ってしまう、という予感がある。」この本を読もうと思ったキッカケは、別の本でこの言葉が引用されていたから。大人の子供に対する態度、人間としての精神の高貴さに触れる鋭くもまっすぐな言葉の数々に、背筋が伸びる思い。2022/12/30
ロビン
30
1965年に「週刊朝日」に連載されたエッセイをベースにそれが書籍化された角川の新書『美しく怒れ』などの内容・構成を大幅に増補改定したもの。文化論、社会論、教育論、女性論、人生論・・この世の中のあらゆることに心を開き、保険も打算もなくナマ身でぶつかっていく太郎のノーブルな潔さ。カメレオンの如き「自覚なき変節」を本能的に行い恥じることのないエリートたちの中で己を貫く生き方をするにはどれだけの覚悟とエネルギーが必要か。正岡子規やルター、日蓮にも通じる炎上覚悟の改革者の気概、惰性や形骸化と闘う熱い心がここにある。2021/05/02
no.ma
16
太郎ならではの眼と言葉にはっとさせられます。《誕生日はコヨミの上でくりかえされる偶然の符号であり、永遠の時間の流れにこまっしゃくれたシミをつける必要はない。誕生日というなら、その日その日がそうであり、常に充実して生きていれば、空虚な日付なんか吹き飛ばして思い出すこともない。/(野球観戦など)代用の生きがいにうつつをぬかして、自分をごまかしてしまうのは空しい。ご自身は指一本動かしたわけではない》。ごもっともなのですが、オリンピックは許してくださいね。2024/07/28
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