集英社新書<br> 悲しみとともにどう生きるか

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集英社新書
悲しみとともにどう生きるか

  • ISBN:9784087211450

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内容説明

悲しみから目を背けようとする社会は、実は生きることを大切にしていない社会なのではないか。共感と支え合いの中で、「悲しみの物語」は「希望の物語」へと変容していく。「グリーフケア」に希望の灯を見出した入江杏の呼びかけに、ノンフィクション作家・柳田邦男、批評家・若松英輔、小説家・星野智幸、臨床心理学者・東畑開人、小説家・平野啓一郎、宗教学者・島薗進が応え、自身の喪失体験や悲しみとの向き合い方などについて語る。悲しみを生きる力に変えていくための珠玉のメッセージ集。
【まえがき――入江杏 より】(抜粋)「世田谷事件」を覚えておられる方はどれほどいらっしゃるだろうか? 未だ解決を見ていないこの事件で、私の二歳年下の妹、宮澤泰子とそのお連れ合いのみきおさん、姪のにいなちゃんと甥の礼くんを含む妹一家四人を喪った。事件解決を願わない日はない。あの事件は私たち家族の運命を変えた。
妹一家が逝ってしまってから6年経った2006年の年末。私は「悲しみ」について思いを馳せる会を「ミシュカの森」と題して開催するようになった。(中略)犯罪や事件と直接関係のない人たちにも、それぞれに意味のある催しにしたい。そしてその思いが、共感と共生に満ちた社会につながっていけばと願ったからだ。それ以来、毎年、事件のあった12月にゲストをお招きして、集いの場を設けている。この活動を継続することができたのは、たくさんの方々との出逢いと支えのおかげだ。本書はこれまでに「ミシュカの森」にご登壇くださった方々の中から、6人の方の講演や寄稿を収録したものである。

目次

まえがき 入江杏
第一章 「ゆるやかなつながり」が生き直す力を与える 柳田邦男
第二章 光は、ときに悲しみを伴う 若松英輔
第三章 沈黙を強いるメカニズムに抗して 星野智幸
第四章 限りなく透明に近い居場所 東畑開人
第五章 悲しみとともにどう生きるか 平野啓一郎
第六章 悲しみをともに分かち合う 島薗進
あとがき 入江杏

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

114
世田谷事件の被害者遺族である入江杏さんが主宰するグリーフケアを目指した集い「ミシュカの森」での講演集。心に響く言葉に多く出会う。柳田邦男さんの「死の人称制(二・五人称の死)」、星野智幸さんの「沈黙を強いるメカニズムの暴力」、東畑開人さんの「ケアとセラピー、アジールとアサイラム」、平野啓一郎さんの「分人」。「被害者遺族らしく生きろ」と強いる社会ではなく、「個人の哀しみを準当事者として皆が支え合う社会」を求める平野さん。当事者と非当事者という二項対立ではなく、「準当事者」という意識を持つことの大切さを思う。2023/08/29

たかこ

68
入江杏さんは、世田谷一家殺害事件の被害者である。被害者家族というカテゴリーでくくってしまうのはよくないが…。柳田邦男、若松英輔、星野智幸、東畑開人、平野啓一郎、島薗進、どの先生方の言葉も胸にささる。「日々ともに生きてきた人との死別は、大きな衝撃となって人々を襲う。」「今、悲しみの中にいる人も、悲しみを知る者だからこそ、誰かを幸せにできるし、自分自身が幸せを得ることもできる。」「やはり死者の唯一の願というのは生者の幸せだと思うのです。その人がどんなに苦しい死に方をしたとしても、そこは揺るがないと思います。」2023/08/10

pohcho

63
「世田谷事件」の被害者の姉が開催する「ミシュカの森」での講演とトークセッション。星野智幸さんの今の社会に対する危機感、「大きな物語に対抗するには個人の言葉を探し続けることが必要」という言葉に共感。心理学者の東畑さんの話も興味深かった。(「居るのはつらいよ」以前から気になっているのでいつか読みたい)平野啓一郎さんの死刑制度の話にはとても考えさせられた。悲しみとともに生きること。悲しみを抱えた人を社会全体で支えていくこと。団結ではなくゆるやかなつながりが今、求められているのだと思う。2021/01/21

読特

41
殺人事件の遺族が主催する「ミシュカの森」で死刑反対を語る~家族を失う。喪失感に浸る。対応すべき現実がある。喪失と立ち直りの間で揺れる時。グリーフケア、さりげなく寄り添い援助する。事件や事故の報道。死者が出る。遺族の気持ちは図りしれない。第三者でいてはいけない。我々の社会で起きたこと。準当事者、二・五人称で受け止める。遺族というカテゴリー。そこは共通だが、それとは違う属性がある。遺族もいろいろ、思いもいろいろ。一律に見てはいけない。ケアに答えはない。ささやかな6人のメッセージ。示唆されたままに受け止める。2021/10/03

鴨ミール

35
家族や友人の死を経験すると、悲しみから立ち直れないと感じることがある。(それはペットも同じ)生きている限り、この苦しみや悲しみからは誰も逃れられないものであるからこそ、そのときにどうしたら良いかという言葉を求めてしまうのかもしれない。この本は、世田谷事件の被害者となった宮澤泰子さんの妹さんである入江杏さんが立ち上げた「ミシュカの森」(悲しみについて思いを馳せる会)での六人の講演や寄稿を収録した本。 個人的には平野啓一郎さんの章を期待していた。もちろんこちらも読み応えがあったが若松英輔さんの講演も良かった。2020/12/31

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