内容説明
大スター歌手と異父姉との人生の光と影。時代を鮮やかにとらえた力作。人の幸せとは何かを問うモデル小説――戦後間もないころ、いつも街角に流れていた、甘美なメロディー。その大ヒット曲「テネシーワルツ」を歌ったスター歌手・葉山サチと異父姉・向井とき江。この二人の交錯する人生を織りなす、光と闇のドラマを追いながら、人間にとって、また女にとって幸せとは何かを問いつめる、衝撃の長編モデル小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おいりー
2
・芸能界⇔身の回りのこと(家族、家、恋人)、という2つの世界 ・芸能界にしがみつく主人公、芸能界と恋人の両方を手に入れる妹には嫉妬する主人公 ・家を捨て、芸能界でも幸福を得られなかった。妹の幸福に預かることが出来なかった主人公が、家も芸能界も両方失わせる。破滅させる。 ・テネシーワルツがカタルシスをもたらす。テネシーワルツに凄みを感じた主人公は救われ、今までのことを振り返る ・(芸能界に憧れる主人公目線)人は少しずつ不幸になる=芸能界から忘れられる。早めた。芸能界と不幸を尺度にして考える主人公の人生観。 2023/11/19
とりみ
2
自分が とき江さんだったらと思いながら 面白すぎて一気読みしました。ここまで できる勇気はないとは思いますが 煌びやかな世界にときめいたり サチに対する嫉妬は理解できます。『私が必死にならなくても、人はゆっくりとだんだん不幸になっていくものなのです。』のくだり ザワッとしました。林真理子さん やっぱりすごい!2022/02/13
かりん
2
平凡な生活を送っていたとき江は、ある日自分に父親の違う、大スターの妹がいることを知る。家庭を捨て、妹の付き人となったとき江は次第に妹への嫉妬と憎悪を募らせていく。とき江が妹を不幸へと落とし入れていく様子が淡々と書かれていてとても怖い、と思う反面、周りからちやほやされ、欲しいものは何でも手に入れられる女王様が身近にいたら、やはり嫉妬や憎悪を抱いてしまうかもしれない。女性は特に。2012/02/24
睡
2
江利チエミを知っている人は、ここにどのくらいいるのだろう? それにしても、林真理子は嫉妬が主役の小説が巧いことだ。2011/06/17
カーミン
1
江利 チエミの義姉の横領事件と思われる小説ですが、今まで極悪な犯罪者だと言われていた義姉(異父姉)の側に立って描かれています。作者の解釈によるフィクションでしょうが、犯罪をおかした義姉がどのようにして平凡な生活を捨て、スターと暮らし、そして犯罪を犯してしまったかが、流れるような表現で描かれていて、時間の経つのを忘れて読んでしまいました。2012/12/10