内容説明
日本人にとって特別な食・コメ。稲はどこから日本列島にきたのか、最初の水田を作ったのは誰か、なぜ東北地方で栽培が遅れたのかなど、稲作の起源を解説。インディカ米が盛んに作られていた中世、地下水路を建設するほど水利に力を入れ、和菓子や酒づくりなど米食文化が花開いた近世の実態を紹介。さらに富国強兵を支えた近代を経て現代まで、農学や文化の視点を交えながら「米食悲願民族」の歴史を解き明かす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さきん
36
米というと他の農作物よりも気持ちが入ってしまって本来の姿が見えてこないところがあって、そこを明らかにしようという試みを感じた。品種や遺伝性の話が深く掘り下げられていて著者の専門色が強い。2020/03/19
Tomoichi
27
私の父方にも母方にも、そして嫁さんの方も米農家はなく、住んでいた地域は耕地面積0。そう米だけでなく農業に一切関係しない世界で生きてきた。だから本書で語られる米作りや品種の変遷など全く知らない世界。改めて米と日本・日本人の関係を知る事ができ、また理系のアプローチがいいですね。2023/04/08
みこ
26
社会の形成、国家による土地の支配、戦いの必須アイテム、そして庶民の食卓に至るまで米と日本及び日本人との関りを丁寧にたどる。農学や遺伝子学の話も交えているので実に多岐に渡って語られている。古代中世近世とか弥生平安鎌倉室町とかいった括りで分けていないのでその辺が斬新ではあるがやや読みずらさを感じた。2020/06/07
パトラッシュ
25
日本人と米との関係を論じた本は多いが、主に米作の歴史や政治との関わりが中心だった。農学者の書いた本書は理系の視点から、従来の本では出てこない一味違った視点を提示する。稲作伝来や品種の誕生、米料理の定着を気象や土地の違いから分析し、水分配や害虫駆除、農具や品種の改良など文系研究者が見落としてきた事項にも目配りを怠らない。これらが積み重なって「米を腹いっぱい食べたい」という日本人の心性が形成されてきたとの主張に納得してしまう。歴史上初めて米をありがたがらなくなった現代人だが、その心身は米で作られているのだと。2020/07/14
ようはん
22
日本といえばジャポニカ米であるが、大唐米と云われるインディカ米系の米が平安時代に流入していた事等、米に関して今まで知らなかった事実が多い。鮨のルーツも水田の登場により淡水魚が増えて食料になった背景があるのを知るとしっくりくる。2021/05/03