内容説明
小林一茶はなぜ妻との交合をつぶさに書き留めたのか.生まれた子は自分の子ではないと言い張る夫と妻の裁判の行方は.難産に立ち合った医者の診療記録にみる妊婦の声や,町人が記す遊女の姿…….史料の丹念な読み込みから,江戸時代に生きた女と男の性の日常と,それを規定する「家」意識,藩や幕府の政策に迫る.
目次
はじめに┴第一章 交わる,孕む 小林一茶『七番日記』┴1 交合を記録する一茶┴2 一茶と菊の性の営み┴3 性と禁忌┴第二章 「不義の子」をめぐって 善次郎ときやのもめごと┴1 村・藩を巻き込んだ騒動┴2 裁定の背景┴3 善次郎ときやの,その後 家,村,藩┴第三章 産む,堕ろす,間引く 千葉理安の診療記録┴1 記録された産の現場┴2 産と堕胎の両義性┴3 堕胎を試みる女たち┴第四章 買う男,身を売る女 太助の日記┴1 性買売の大衆化┴2 「隠売女」の出自を探る┴3 売られる娘┴第五章 江戸時代の性┴1 生類憐み政策から妊娠・出産管理政策へ┴2 養生論にみる性意識┴3 農民にとっての家と「仕合」┴4 江戸時代から近代への転換┴おわりに 生きることと性┴主要参考文献および史料┴あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
97
仕事の合間の楽しみで読む本じゃなく、「史料の丹念な読み込みから、江戸時代に生きた女と男の性の日常と、それを規定する「家」意識、藩や幕府の政策に迫る」という労作であり、本格的な研究書。江戸時代は女性も含め、性的におおらかだとか、呆気ラカンとしているというイメージ(先入観)がある。ホントにおおらかなのか。2020/11/02
パトラッシュ
64
江戸期の性に関する書物は遊郭や春画、艶本絡みが多く対象も大名や商人など富裕層が中心だが、目線を下げて町人や農民の日常の性生活を史料をもとづいて描き出す。小林一茶のように性が家を絶やさぬためという建前に縛られた時代だが、実際には快楽としての性を求めるものが多かったことを離婚や売買春の実情から明らかにする。当時の医学は現代に比べ無に等しく、出産時に命を落とす妊婦や子供の有様は怖いほどだ。人口増のため権力が堕胎や間引きを監視するようになる実態は、時代物にある「江戸の性はおおらかだった」という常識に警鐘を鳴らす。2020/12/16
こばまり
63
時代劇などで目にする子の間引きのシーンは、タブーを侵すが故にあのような後ろめたい表情をと思っていたのだがそれだけではない。人口減少に繋がる行為は即ち、お上への反抗に他ならない。江戸時代に抱いていたロマンが少し萎んだ。女は大変。2021/05/24
小鈴
41
小林一茶はなぜ性交渉について詳細にメモしていたのか、からはじまり最後までぐいぐい読ませます。江戸時代の性は自由と言われてましたが、武士の「家」規範が江戸末期には庶民にまで浸透し、人口政策として管理されるまでになる。農村の女性は人口増産のため婚姻から妊娠出産が管理され、都市下層社会で女性は性売買される。私娼は検挙され価格をつけられて公娼の遊所に入札される矛盾。名前、年齢、入札額などが記録され今に残る。意外だったのは江戸時代の子どもの数は3-4人。子沢山は明治の堕胎禁止が大きい。近代の産物だった。2020/12/02
Nat
37
図書館本。小林一茶の妻との記録にびっくり!他にも様々な史料があるものだと知り、驚いた。2020/10/06
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