内容説明
近代精神医学が成立する契機となった精神病者の「鎖からの解放」は、なぜ可能となったのか? ナチズム期の精神障害者大量殺人は、なぜ引き起こされたのか?
本書の目的は、近代精神医学史の出来事を記述することだけではない。その出来事の背景、そこにどのようなアイデアや思想が、歴史の流れがあったのか、そしてそれがどのように現代につながっていくのかを明らかにしていくことを主眼としている。
戦争、安楽死、反精神医学、優生思想など、精神医学との関係が真正面から語られてこなかったテーマに深く切り込む。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobu
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旧優生保護法と精神医学の関係を調べる中で、手にとった書物である。近代精神医学は主に欧州で発展してきたが、その背景に欧州の思想の流れが背景にあることを説明。それは古代ギリシア時代にも遡るが、それはさておき、その思想的流れが精神医学の生物学的流れと心理学的流れに影響していることを説明されている。優生学との関係ではナチスへの精神医学の関わりが著述されているのは著者ならでは。反精神医学に関しても、客観性を保ちながら述べられているのは読み応えがある。現代に通じる精神医学の歴史を知るには一読の価値があると思った。2021/05/31