殴り合いの文化史

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殴り合いの文化史

  • 著者名:樫永真佐夫
  • 価格 ¥4,070(本体¥3,700)
  • 左右社(2020/12発売)
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  • ISBN:9784865282238

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内容説明

名誉と屈辱、本能と理性、男らしさと女らしさ。
太古から現代にいたるまで、人間は、このきわめて「人間的」な暴力とともにあった。
いや、その歴史は、人間の歴史そのものなのだ。
リングにあがった人類学者が描き出す暴力が孕むすべてのもの。


1章  人間的な暴力
2章  理性の暴力
3章  殴り合うカラダ
4章  拳のシンボリズム
5章  殴り合いのゲーム化
6章  「殴り合い」は海を越えて
7章  一発逆転の拳
8章  名誉と不名誉
9章  殴り合いの快楽
10章 女性化する拳
あとがき

参考文献

目次



1章 人間的な暴力
1-1 そこにある暴力
  血みどろの共同体/身内の殺害
1-2 闘争の擬態
  儀式から見世物へ/闘争を見る喜び/モハメド・アリ―闘争のしゃべり/にらめっこ/目の暴力
1-3 残忍な喜び
  矢を射刺された聖人/賛美される残忍さ


2章 理性の暴力
2-1 本能と暴力
  世界最強の男/攻撃は本能か/子殺しとリンチ/闘争のプロセス
2-2 口から手へ
  人間の本質/「殴る」類人猿/口の武装解除
2-3 遊びと闘争
  気晴らしの発生/遊びと成熟/ホモ・ルーデンス/模倣と競争/ラッキーパンチ―運と眩暈/狩猟からスポーツへ/sportの語源/殴り合いのルール


3章  殴り合うカラダ
3-1 殴り合うカラダのイメージ
  自転車ドロボーへの復讐/ベイヨーンの流血男/敗者が勝つ物語/ロッキーのカラダ/アスリートのカラダ/かっこいいカラダ
3-2 つくられるカラダ
  殴り合いのプロのカラダ/古代ギリシアのスポーツクラブ/拳闘のシンボルは?/太った腹の使い方/減量の職人
3-3 名がつくるカラダ
  マサト?コボリ?/「五つ星焼き鳥」のパンチ/リングネームとニックネーム/「海老原」はヤバい!?/姓は「ガッツ」?


4章  拳のシンボリズム
4-1 拳と手のひら
  拳の親指/誓いの手のひら/殴る拳
4-2 拳はペニス
  ガッツポーズの日/ガッツポーズは文化的/生殖器崇拝/凶暴な拳/殴り合いの挨拶/オバマが広めたフィスト・バンプ
4-3 正義の拳
  鉄腕アトム/鉄腕とパンチ/正義の味方はパンチしない/柔よく剛を制する/スーパーマンの誕生/アメリカのニューシンボル/都市労働者のヒーロー/大統領はボクサー/白人男性の「男らしさ」/ヒーローのカラダ
4-4 国家による拳の暴力
  拷問と清め/司法との対決/拷問の拳/文化と残忍さ


5章  殴り合いのゲーム化
5-1 闘争のゲーム
  戦闘と決闘/決闘というゲーム/殴り合う民族競技/こぶしうち/足技があっても「拳法」
5-2 古代オリンピックの拳闘
  ホメロスが語る拳闘/オリンピアの祭典/ソクラテスも拳闘ファン/拳の装着具/古代オリンピックの終焉
5-3 イギリスの拳闘─流血と底力
  イギリス初の拳闘試合/初のチャンピオン/ブロートン・ルール/流血の楽しみ/暴力からゲームへ/プライズ・ファイトの急衰
5-4 ボクシングの成立
  ボックス!/スパーリングの発生/高貴な自己防衛の技術/プライズ・ファイトからボクシングへ/クイーンズベリー・ルール/時計の時間/流血と底力の排除/決闘の面影


6章  「殴り合い」は海を越えて
6-1 ボクシングは港から
  黒船とともに/アメリカのピュジリズム/イギリスとアメリカのチャンピオン対決/金メッキ時代の殴り合い/日本初のボクシング/横浜のメリケン練習所/異種格闘技の人気
6-2 「一石四鳥」のスポーツ
  柔道対ボクシングのケンカ/日本ボクシングの発足/キャッチコピーは「東郷」/メリケンから拳闘へ
6-3 「拳闘」がやってきた!
  ボクシング史の時代区分/初のスーパーアイドル・ボクサー/血の十回戦!/ヤクザも覆せない判定/槍とピストン
6-4 玉砕から科学へ
ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

tom

15
作者は文化人類学者。格闘技を愛する人でもあるらしい。この本は、殴り合い、あるいはボクシングについての文化誌という風情の本。ボクシングに関するエピソードというかウンチクがちりばめられていて、それはそれで面白い。例えば、ボクシングの舞台は、四角なのに、どうして「リング」というのか、などなど。でも、殴り合いがどうして好まれ、ギリシアの昔から、延々とつづいているのかは、結局のところ不明(中毒するらしいけれど)。2019/09/16

kenitirokikuti

10
ボクシング映画。映画『波止場』(1954)と『ロッキー』(1976)。ロッキーはボクシングのイメージを改めた▲「ピストン堀口」はニックネーム、「ユーリ海老原」はリングネーム。「拳四朗」は姓:拳、名:四朗という扱い▲手塚漫画には拳が多い。水木しげるはビンタ。日本の伝統では、こぶしは悪役。正義の味方は手刀や手の平、投げ、斬りなど。正義の味方がパンチするのは「太陽にほえろ」など刑事ドラマから。決め技がパンチなのはアンパンマンか▲北米にてマッチョさが中産階級男性の美徳になるのは19世紀末。JOJO第一部はマッチョ2019/11/06

imagine

9
あとがきの通り、ボクシングの文化史を書くつもりが冗舌になり、人類の暴力性の検証にまで構想が膨らんでいる。そのため、ボクシング史の非常にマニアックなデータと、文化人類学的な見地からの学術的な考察が濃密に共存している稀有な一冊。両者の融合点として印象に残ったのが9章。三島由紀夫が神輿を担いだ際に経験した恍惚。平和と安逸からは得られない、この「最適経験」が作り出す「フロー」の状態こそ、人類が己の存在価値を賭けて殴り合いを続けてきた理由に思えた。2020/01/17

5
人類学者がボクシングを題材に文化人類学を考察した本。近世以降の「ボクシングの歴史」に留まらず、原型となった古代ボクシングや中世のベアナックル・ボクシングまで壮大な「殴り合いの文化史」を語る中で、暴力に関する選手や観客の意味合いを探る。流血や後遺症、最悪の場合死に至る危険を孕みながらリングに立つのは、勝利が社会的な地位をもたらすためであり、現在でも成人儀式で痛みを伴う行為を受けることで社会の一員として認められる風習がある。健全・健康なスポーツ化を進めつつも、おそらく「体を張った努力」は容認されるだろう。2019/08/19

minami

3
ボクシングを中心に、人間にとって「殴る」とはどういう意味を持つ行為なのかを歴史的・文化的に紐解いた一冊。殴るとは人間的な行為である(手を使った動作はほとんどの獣にはできない)という出発点から、なるほどと膝を打った。古今東西の殴ることに関する膨大な量の蘊蓄が散りばめられた文章は、あちらこちらへと話題を変えるが、しかし妙に味があってグイグイと読ませる。面白かったです。2020/06/02

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