講談社文芸文庫<br> 回想の太宰治

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講談社文芸文庫
回想の太宰治

  • 著者名:津島美知子【著】
  • 価格 ¥1,540(本体¥1,400)
  • 講談社(2020/12発売)
  • ポイント 14pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062900072

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内容説明

濃やかな愛情と明晰な目がとらえた人間・太宰治――太宰治は、文字通り文学のために生まれ、文学のために育ち、文学のために生きた「文学の寵児」だった。彼から文学を取り除くと、そこには嬰児のようなおとなが途方に暮れて立ちつくす姿があった。戦中戦後の10年間、妻であった著者が、共に暮らした日々のさま、友人知人との交流、疎開した青森の思い出など、豊富なエピソードで綴る回想記。淡々とした文にも人間太宰の赤裸な姿が躍如とする好著。
◎「これは、凄い本に出会ったものであります。質も量も。明晰さも、たしかさも、怖ろしさも。科学者の随筆みたいな、美しい揺るぎのない日本語で、太宰治は凝視され、記憶され、保存される。この著者が、昭和の初期に、太宰の妻であり、ともに暮らし、子をなして、日々会話し、身の回りの世話をし、親戚や食卓や経済を共有していたかと思うと、トカトントン。そこらの男の何十倍も聡明だった女の記録であり、記録をよそおった文学であります。」<伊藤比呂美「解説」より>
※本書は、『回想の太宰治』(昭和58年6月 講談社文庫刊)を底本としましたが、「アヤの懐旧談」を削除し、『増補改訂版 回想の太宰治』(平成9年8月 人文書院刊)より、「蔵の前の渡り廊下」「南台寺」「父のこと、兄のこと」「『水中の友』」の4篇を収録しました。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

70
ひととしての太宰も、作家としての太宰も愛していたひとだということが伝わってきて、ひどく切ない気持ちになった。ただ太宰というひとは、いつの時代に生まれていてもこういうひとだったろうという根拠のない確信が私にはある。知人にいたら迷惑だが、才能はどうしようもなくあるという。2018/05/21

Willie the Wildcat

66
著者の”喜怒哀楽”で振り返ってみる。義母見舞いで訪れた初めての金木。行き詰まる滞在の最終日、「太宰が町案内に著者を誘う」が”喜”。対照的な「時計」は”怒”。但し、読む側は笑うけど。そして”哀”はもれなく「京姉の死」。心の支えの喪失という感。最後の”楽”は「りんご箱の木箱の裏側」。旧稿か、秘宝だね。その他にも、筆名の謂れや”くしゃみ連発、津島家の家訓”トリ/味噌”!?など盛りだくさん。作品のエピソードから1点選ぶとすると、やはり『パンドラの匣』。2つの”喪失”を乗り越えた想いと運命。踏まえて熟読したい。2018/07/18

けぴ

56
太宰治の妻、津島美知子さんによるエッセイ。時系列というより、テーマごとに分類されている。何でも人に物をあげてしまう気前の良さ、子供時代は演劇にハマっていた様子など意外と陽気。しかし戦前戦後の時代のせいでそれほど裕福な暮らしではなさそう。井伏鱒二や佐藤春夫など、現在の評価は必ずしも高くない作家を師匠的に仰いでいるのも興味深かった。玉川上水入水自殺で亡くなったのは38歳、1948年。生きている期間が短いながら、多作。失敗原稿を貼った箱から原稿を剥がして太宰治の貴重な資料とする話が良かった。2021/06/27

Y2K☮

45
美知子夫人のエッセイ。夫とは異なる理知的で引き締まった文章。真面目で粘り強い人間性が垣間見える。太宰のダメな点に呆れつつ、立てる所はちゃんと立てる。たけさんについて書かれた章は「津軽」ファンに軽い衝撃。ただ小説という虚構の中でのみ浮かび上がる真実もあるから、これは別の側面として受け止めておく。津軽の様々な風習や方言が面白いし、戦後売れっ子になった太宰の収入に関する誤情報もしっかり正されている。創作の背景なども興味深いので太宰ファンはぜひどうぞ。なお山崎富栄や太田静子への言及は無し。支え続けた妻の矜持、か。2015/07/07

Y2K☮

39
想像や偏見、思い入れを抜きにした太宰治のフェアな実像を綴ってくれた随筆集。たとえば戦後の農地改革で生家が苦しくなるまではずっと月額九十円の仕送りを受けていたとか(いまだと三十~四十万の間ぐらいか。大学出の初任給が七、八十円だったらしい)。原稿料は殆ど家に入れず己のために浪費し、税金が高いと泣いて夫人に処理を押し付ける。「津軽」のヒロイン、ではない実際のたけさんが発した一言を覚えておく。一方で作家・文士としての戦慄的な才覚、意外な器用さ、律義さなども伝わってきた。創作しかできない人。支える存在あっての名声。2024/09/25

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