内容説明
英国を代表する脳外科医が生命と人生の意味を問い、患者たちの死、そしてやがてくる自らの死に想いを馳せる自伝的ノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひさしぶり
22
イギリスの脳外外科医が海外の医療現場で数々の救われない命に向き合う。手術や判断の失敗や後悔、医療事情への嘆きを正直に表現されている。治療の苦痛や不快さと引き換えに人生の追加の年月を獲得する方をほとんどの人が選択する。豚や体のない人の頭部を高額な機器を使って研修医が練習するアメリカ。世界中が貧困国を助けようと莫大な額の援助を寄せるが、跡形もなく消えてしまう。悪路を数日かけ即効性のある治療を望みやってくる人、人工呼吸をつけたまま家族が連れてきて治療法がないと知るとまた自力で連れて帰る。格差にめまいがする。2021/06/09
羽
20
わたしたちの多くは、不吉な死を避けて生きている。無意識のうちに「死」について考えることを遠ざけている。一方、「死」にまつわる恐ろしいニュースを熱心に読んでしまう心理が人間には備わっている。自分が同じような状況に陥った時、危険回避の行動をシュミレーションをするためだと、どこかで読んだ記憶がある。そんな「死」に、常日頃から直面しているのが脳外科医だ。老脳外科医マーシュはわたしたちに、穏やかな口調で死について語る。誰にでも平等におとずれる「死」について、老医師の心から溢れる思いが記された一冊だった。2021/12/03
Apple
16
マーシュ先生が本書で語ることは、命に関する重大な真実の一部であると感じました。人間のからだは結局は壊れゆくものであり、死を直視しない医療は命の尊厳を歪めかねないと警鐘を鳴らしている気がしました。とくに脆弱で障害に対して不可逆的な脳を扱ってきたマーシュ先生が述べるからこそ説得力があります。多くの命が救われる傍ら、医学の限界・人の限界によりうまくいかなかった治療の不幸な結果について述べられております。すべての医療行為、治療を受けることは絶対安全などあり得ず、常に綱渡りなのだと認識しないといけないと感じました。2022/01/16
teddy11015544
16
ほぼ同じ世代の脳を扱う同じ仕事をしているものとして、マーシュ先生の諦観や絶望、そしてかすかに生き残っているかもしれない希望や、その希望をつかもうとする生活のありようは切実に胸に迫ってきました。あんまり深く考えるとできない仕事だけど、深く考えないと心が食われちゃう商売ですから。ところで訳文は脳外科医だったらそうはいわないという表現があります。でも細かいことは言ったら野暮です。死の香りのする名文に酔いしれましょう。2021/02/14
teddy11015544
9
また読んでしまいました。私も外科医はリタイアですが、別にやることがけっこうあります。今の方が苦しくないかもしれません。ゾーンに入ることもありませんが。2021/09/15
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