内容説明
埼玉県秩父山中にある大学の寮「りら荘」に避暑にやってきた7人の男女。みな画家や音楽家を志す芸術家の卵だ。都会の喧噪を逃れて休暇を送ろうとした矢先、婚約を発表した二人が相次いで変死した。そして災厄は次々と学生たちに……。鮎川作品の中でも特に人気の高い傑作長編に加え、著者がデビュー以前に同人誌に書いた“プレりら荘”とも言える中編も収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みや
26
本格ミステリの定番である「個性豊かな大学生が集う館もの」だが、クローズド・サークルではない。警察のみならず、事件現場に遺族や友人が来て通夜と葬式を連日するほどに開放的で驚いた。死体の数が多い上に殺害方法が多種多様で非常に楽しい。「こうした些細な会話のなかに、あとになってみると謎を解くに足るキイが秘められていた」と伏線の場所を丁寧に教えてくれる親切設計から、著者の絶対的自信が伝わってきた。なかなかに複雑な構成だが、探偵役が終盤で一気に伏線を回収するスマートな真相解明が気持ちいい。巨匠の傑作、面白かった!2023/04/10
見切り発車
16
謎解きの道筋は素晴らしいの一言。だがかなり前の作品だけあって時代背景や文体がやや自分には合わず。淡々と日々を過ごして行く登場人物は皆ロボットのように感じてしまう。自分が時代の最先端をいっているのか、はたまた単純に読書への柔軟性が欠如しているのか(おそらく後者)考えさせられる一冊。2021/02/26
乱歩太郎
7
りら荘事件、読了。 60年以上前の傑作。何故今まで読んでなかったのか? クローズドサークルではないものの、邸のなかで1人ずつ消えていくという超王道。言葉は少し古いですが全く飽きませんでした。 論理的な解決と伏線回収も圧巻です。しかし、犯人天才過ぎない?(笑)2021/05/22
Inzaghico
7
秩父にある実業家の邸宅を芸術大学の季節寮に変換した屋敷が舞台、というのが時代を感じさせる。そこで婚約を発表するカップル、それを祝福しつつも内心は悲嘆にくれる恋に破れた男女。事件が起きないはずがない。本編は素人探偵(ただし日本で唯一ピンカートン社と契約しているらしい 笑)が謎を解くが、ボーナス・トラックである本編の原型となった中編では、この素人探偵は鼻を明かされる。個人的には、ボーナス・トラックくらいの長さでじゅうぶんだったと思う。本編はちょっと長い。ペパーミント・リキュールを使った伏線には素直に感心した。2020/11/25
餅屋
5
表題作は既読なので併録「呪縛再現」を読むため手に取る▲著者がデビュー以前に執筆した「プレりら荘」ともいえる中編▼舞台は熊本県人吉の緑風荘、事件の流れは同じですが登場人物名が若干違う。そこに颯爽と登場するのが「髭の剃り跡が真っ蒼で、商売女ならばふるいつきたい程の魅力を感じるに違いない」星影竜三、とても嫌味な素人迷探偵で単なる賑やかし。結局は鬼貫警部が時刻表を見ながら足で稼ぐ。中編なのに、本格トリックとアリバイ崩しが楽しめる贅沢仕様です。鬼貫派の方は初期長編4冊のあとに読むほうが幸せになれますよ(1953年)2023/01/30