内容説明
生きることの迫真性を求めて里山へ移り住んだ若き農耕民が構想する、生き物たちとの貪欲で不道徳な共生宣言。一般に禁欲や清貧といった観念に結び付けられている里山を、人間を含む多種たちの賑やかな吹き溜まりとして捉え直し、現代社会において希釈・隠蔽されている「生の悦び」を基底から問い直す。真に切実な問いと、根源を目指す思考とを、地についた生活に支えられた文章で表した、読む人に鮮烈な印象を与える第一著作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
114
タイトルからして過激な遺体コンポストの話かな、と思ったら、違った。 ほなみちゃん(稲)、ニック(鶏)達と暮らす山里は猥雑でにぎやかし、と書いてるけど、やっぱりほのぼの。 人間こそ異種動物のペットに向いてるんじゃない?という話では、星の王子さまと狐のやり取りを思い出す2024/11/29
路地
47
理想論が先行していた自然農法や地方移住の裏側が語られるようになってきたが、本書の著者は里山で生きることは悦びを得るための手段として突き抜けた理論を展開する。タイトルを含め独特な言葉選びと悪ぶったような態度が面白いのと同時に、理論的な農家生活を実践されていることも伺える興味深い一冊。2023/10/29
活字スキー
22
【もし足下の暗がりから離れることが立派で上等な人間らしい生き方だというなら、わたしは人間をやめる。望むところだ】今年のベスト間違いなし、文句なしの名著。著者はなんとサタニックなナチュラリストであることよ。「生きる」という行為の獰猛さ、ミもフタも無さ、そして芳しき腐臭沸き立つ悦びをここまで開けっ広げに語る著者に限りない敬意と羨望を覚えた。その貪欲さは探検家の角幡さんやサバイバル登山家の服部さん以上かもしれない。惚れた。【わたしたちの堆肥化を阻むものは、欲望の貧困に他ならない】 2021/12/02
ショア
21
図書館本。タイトルと装填に惹かれ手に取る。消費だけの資本主義や綺麗事、利権者の中途半端な腐敗に対する中卒里山農耕著者のアンチテーゼ。自然農耕の堆肥と腐敗をメタファーに宇宙全史の生と死、道徳的哲学的に腐敗しながら生きる、生かされていることの再認識。各章に挟まれる里山の春夏秋冬が哲学とリアルを行き来できて良い臨場感。本書で紹介されている他書も興味深い。2022/04/23
Sakie
21
攻撃的な里山主義と呼ぼうか。殺気だち殴りかかるごとく、腐敗、堕落、殺害と物騒な言葉を並べ、里山に求める思想を著者は綴る。山尾三省すら感傷的な自然崇拝者と断じ、中途半端な罪悪感を糾弾する。間に挟まれた満ちて足る季節の章から、暮らしの中で得た言葉と知れる。堆肥とは人も含めて、なべて同じ土壌で育まれ育む存在の在り、行く先。自ら落伍者と称する著者は生気に満ち、既に拡がろうとしている。自らの堆肥化のみならず人類の堆肥化と題している辺り、更なる企みを感じさせる。そうか、これは檄文なのだ。挑発されてやろうじゃないか。2020/12/31