「シェルパ」と道の人類学

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「シェルパ」と道の人類学

  • 著者名:古川不可知【著】
  • 価格 ¥3,520(本体¥3,200)
  • 亜紀書房(2020/12発売)
  • ポイント 32pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784750516349

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内容説明

ネパール東部、ソルクンブ郡。エベレストの南麓にあたる北部のクンブ地方は、“勇敢で忠実な山岳民族”と謳われるシェルパの人々の居住地である。標高三〇〇〇メートルを超えるこの険しい山岳地帯では、山道は天候によって質感を変え、しばしば土砂崩れや降雪によって流失しては再び姿を変えて現れる。

ヤクを追うシェルパたちが自給自足に近い暮らしを営んでいたこの地域は、次第に山岳観光の名所として知られるようになり、現在では年間数万人もの観光客が訪れるようになった。シェルパの人々はヒマラヤ登山の手助けをして働くようになり、ネパール各地からはポーターやガイドなどの職を求めて、「シェルパ」を名乗る多様な出自の人々も集まってくる。

変転する自然環境のなか、観光客のために道を見出しながら山中をゆく彼らとの出会いは、存在をめぐる根源的な問いへと通じていた――「世界」「自己」の自明性をゆるがすフィールド体験をもとに、ティム・インゴルドらの議論を補助線にして気鋭の人類学者が描き出す、刺激的なエスノグラフィ。

世界を歩むとき、自己は道であり、道は自己である

われわれは世界のうちで無数の人やモノや事物と対等な関係のなかで生を営んでおり、人間社会とはそのうちの一部を恣意的に切り出したものに過ぎない。そしてわれわれが一歩を踏み出すとき、自己の身体は他者の身体やモノや概念からなる環境中の諸要素とそのつど一回的な関係を取り結び、道のアレンジメントの一部となる。世界を歩むとき、自己は道であり、道は自己である。(本文より)

電子版では写真をすべてカラーで掲載しています。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

榊原 香織

70
博士論文改稿出版。なかなか興味深い。道とは、歩くとは、という概念的なことはフランス現代思想使って説明しててちょい難。 でもヒマラヤの村でのフィールドワークいいよね。当地の登山学校KCCでシェルパたちがアメリカ人教官からシェルパらしさを学ぶのって逆説的で面白みが。カリキュラムも紹介2024/01/21

まさ

32
著者の同名博士論文を基にした考察。焦点が当てられている「シェルパ」と「道」の2点は、私も2年前にエベレスト街道を歩いてみて関心を持っていたこともあり、このフィールドワークは興味深く読むことができた。シェルパ族と職業「シェルパ」。混在しているものの、トレッカーが求めているのは、信頼できる現地人なのだろう。K2冬季登頂の快挙を今年1月に成し遂げたのが「ネパールの登山家チーム」であるように、シェルパ族であるかどうかは求められていないのでは。→2021/02/27

sayan

26
星野道夫氏を彷彿させる写真表紙が印象的で本書を手に取る。文化人類学者の博論が下地だが「その日暮らし(小川さやか)」同様フィールドワークの追体験感覚が愉しめる。出自を示す民族名「シェルパ」が、今や「職業名」も兼ねるアイデンティティ問題、そしてこの名称を背負う世代別のキャリア形成を分析するパートは読み所だ。私見だがそれはマイアミ大学のA・ヘラーが「多様性や新規性のある移動(歩く)を検知すると…人は喜びや幸福感を生み出す」という論文に「資本主義社会で職業シェルパとして歩く事は何か」と強烈な皮肉をもって応答する。2020/05/30

kuukazoo

10
面白かった!元が博論なのでややきつかったが引き込まれた。エベレスト周辺の観光地化と住民の仕事(ポーター、ガイド、ロッジ経営等)や職業観のフィールドワーク、人と道の関係や歩行と身体についての論考、の2つが主な内容。職業の選択肢の少ない山間部では観光客相手の仕事が人気だが、荷物運びのポーターからガチの登山ガイド「シェルパ」までピンキリであり、シェルパ養成学校まであるという。都会から離れた地方がいかに外貨を稼ぐかは日本にも通じるものがある。元々自然には存在しない「道」を見つけ刻みこむ人の営みにもわくわくした。2021/04/30

8
古川不可知さん著の「シェルパと道の人類学」という本を読み終えました。大阪大学人類学研究室所属の著者の博士論文を書籍化したものになっています。シェルパとはエベレスト地域で道案内や荷物運びをする人。彼らの実践から道についての重要な示唆が得られます。個人的に印象に残っていることは観光される側とする側の視点で、観光される側、すなわち地元民は自分たちの地域のことを特段に特別視はしていない。しかし、観光客が来ることで豊かさを齎されるため、観光する側の視点をもち、案内などのサービスをしようとすることでした!最高です。2024/06/13

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