ちくま新書<br> 飯舘村からの挑戦 ――自然との共生をめざして

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ちくま新書
飯舘村からの挑戦 ――自然との共生をめざして

  • 著者名:田尾陽一【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2020/12発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480073631

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内容説明

学生時代に東大大学院で高エネルギー加速器物理学を研究していた著者は、福島第一原発事故に際して「被災地の放射線量はどうなっているのか」と疑問をもち、福島県飯舘村の農民と協働して再生への活動を始めた。ボランティアと研究者を結集して「ふくしま再生の会」を結成し、飯舘村で自然と人間の共生を訴える著者が、震災から十年の節目にこれまでの活動を振り返り、都市から地方への流れが進むポストコロナの時代に不可欠な、自然との共生理念とその実践の道を提示する。

目次

まえがき──福島での一〇年間を振り返って
現代は真の文明社会か?
福島・飯舘村へ
福島で自然と人間の共生を取り戻す
本書の意図と構成
第一章 飯舘村の日常生活
豊かな毎日
薪ストーブとミツバチ
草野館址
真野川の幻の水力発電所
集落にある遺跡をめぐる
村の日常生活を破壊した原発事故
山津見神社の焼失
山津見神社のオオカミの絵を再生
お葬式への参列
ブドウ畑をつくる
交流の家の建設
第二章 周辺をさまよう
福島への道を走り始める
東海村の原子力研究開発機構訪問
第二原発まで走る
行政組織どうしの連携
技術戦略専門委員会に出席
福島原発事故直後の東京大学を訪ねる
ブログで声明を発表
第三章 飯舘村に入る──ふくしま再生の会創設
二〇一一年五月六日──東京で友人が集まる
小名浜漁港から相馬市松川浦へ
話し合い
南相馬市の農業経営
飯舘村に初めて入る──菅野宗夫さん・千恵子さん夫妻との出会い
協働の原則
調査・交流・実験・行動計画の起草
自由な雰囲気で再生の協働作業開始
第四章 試行錯誤──二〇一一年六月~二〇一二年二月
二〇一一年六月──放射線量の測定開始
二〇一一年七月──除染テストと多くの課題
二〇一一年八月──除染・測定・実験
東北大学の天体観測所の発見──放射線観測でも協力関係をつくる
二〇一一年九月──山林の除染の試み・落ち葉吸引作戦
除染の実証実験──二〇一一年一〇~一一月
被害地域の医療・看護・介護・生活支援サービスを支える連携
山津見神社、仮設住宅でのミニコンサートと築地本願寺での虎捕太鼓
二〇一一年一二月──オンライン留学生討論会と第二回報告会
田畑の除染と農業再生
二〇一二年一月──凍土 ぎ取り法による除染
実証実験から事業実施のプロセスへ
正念場
第五章 課題の解決を目指す
環境放射線測定──GPSガイガー携帯測定器を手造りする
車載放射線測定
田圃や山地の空間線量測定──明神岳に放射線測定器を置く
村境の山の峰を一周して計測する人たち
定点測定
居住環境の継続的放射線観測(居宅測定)
実験小屋の建設
空間放射線と個人放射線の相関研究──村内希望者の個人放射線詳細測定
放射線講習会・説明会
シニア放射能測定隊、測定サンプル数一〇〇〇を突破
サークルまでいの活動──放射能データベースの作成
田畑の土壌放射能の測定
大気中の放射性セシウムの濃度
ため池の放射性セシウム
植物の放射能測定
飛びぬけてセシウム濃度が高いコケ
ハウスチームの活躍──土壌博物館、放射能測定小屋等の建設
農業の再生──代 きによる田んぼの除染実験
そういう「手」があったか
すぐにやってみた
試験栽培と稲の分析結果
各地のホダ木を採取し、ナメコを栽培
宿舎の確保
宿泊施設建設へ
杉・ヒノキの幹のセシウム濃度
焼却炉の実験
イノシシプロジェクト
動物と共存するということ
生活の再生に向けて──心と体の健康のために
地域コミュニティ再生
第六章 いろいろな地域の人をつなぐ
多彩な交流事業の展開
GVJ実行委員会による要望書──「外国人被災者に確実な支援を」
オンライン会合Talk Inふくしまの再生
韓国での報告
スウェーデン視察団来訪
SGRAスタディ・ツアー「飯舘村へ行ってみよう」報告
アメリカ土壌学会での「ふくしま再生の会」についての発表
フィリピンの原子力発電所見学とセミナー
報告会での村民との対話
分科会報告──失敗と成功と
台湾からの声
四年目の報告会──講演会ではなく懇談会に
大学生の声
ワシントンでの講演と討論
東大生への講義と反響
五年目の報告会──創造的な検討の場をめざして
高校生の声
外国人の視点
佐須の田植え
都会と農村の交流を目指して
アートの視点から
国際教育プログラムの実施
第七章 自然の中で人間の新しい生き方を創る
地域活性化事業で未来を開く
現代アートが、飯舘村の再生に協働する
北川フラム氏とアーティストとの飯舘村視察ツアー
コロナ時代における芸術祭の模索
終 章 地域を主役に、自然と人間が共生する社会へ
飯舘村を再生する意味
新型コロナウイルス襲来の意味
腰を据えて活動の未来像を考えよう
自然の中で、人間の新しい生き方のモデルをつくろう
NPOふくしま再生の会の持続力はどこから?
二項対立の原理主義は地域を再生できない
若者グループの盛り上がり
阿武隈ロマンチック街道再生構想
あとがき・資料

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

小鈴

17
今から百年ほど前、田中正造は「真の文明は山を荒らさず、川を破らず、村を破らず、人を殺さざるべし」と述べたが、原発事故は「山を荒らし、川を荒らし、村を破り、避難の過程で結果的に人を殺してしまった」。彼らは被災者ではなく被害者で、被害者がいれば加害者がいる。加害者は地域再生に本当の責任をもとうとしない。せいぜい不十分な見舞金を出し、他人事として同情の気持ちを表すことでお茶を濁し続けるだろう。そんなもんだとニヒルになって私たちは日常に戻る。私たちはどうすればよいのか。虚しさより一歩前へ。彼らの取り組みの全容。2021/05/06

小鈴

16
この本の読み方は二通りあって、一つは文字通りの原発事故で被爆した飯舘村を除染し、コミニュティを回復しようとする活動の記録。もう一つが東大闘争でドロップアウトした著者が現代の「田中正造」のように活動する姿だ。東大時代のネットワークで人脈も豊富、実務能力が高くテキパキと問題を解決して前に進む。しかし、なぜここまでのめり込むのか分からない。著者が広島で四歳にして原爆のきのこ雲を見たからだけでは説明がつかない。60年代の学生運動で挫折したものの胸にはあのときのアツさを残していた。著者の人生を知りたくなった。2021/05/06

新橋九段

3
地域目線での復興過程を知ることが出来る。とはいえ、著者の「謎に張り切っているよそから来た人」感に違和感と既視感も覚える。2022/06/13

Go Extreme

2
福島での10年間:現代は真の文明社会か 自然と人間の共生を取り戻す 飯舘村の日常生活:豊かな毎日 薪ストーブとミツバチ 村の日常生活を破壊した原発事故 ブドウ畑をつくる 交流の家の建設 周辺をさまよう:行政組織同士の連携 技術戦略戦専門委員会 ブログで生命発表 飯舘村に入るーふくしま再生の会創設 試行錯誤 課題の解決を目指す:地域コミュニティ再生 いろいろな地域の人をつなぐ:都会と農村の交流 自然の中で人間の新しい生き方を創る 地域を主役に、自然と人間が共生する社会へ:二項対立の原理主義は地域を再生できず2021/01/24

錦織 祐一

0
放射能・放射線を「正しく恐れる」。原発事故当時よく耳にしたフレーズですけど、事故から14年の今もまったくできておらず、あまりにも不条理が多いことを福島に勤務して痛感する日々です。この本は「ふくしま再生の会」が飯舘村民の皆さんぐるみで汗を流して科学的なデータを集めて提示し、どうすれば克服できるのかの知恵を学者から住民まで一体となって出し合った日々の記録が極めて克明に記録されています。理不尽さに打ちのめされず「事実」をきちんと提示し、みんなができることを持ち寄って掛け合わせ、楽しむ。すごいコミュニティーです。2025/01/02

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