ちくま新書<br> アメリカ黒人史 ――奴隷制からBLMまで

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ちくま新書
アメリカ黒人史 ――奴隷制からBLMまで

  • ISBN:9784480073587

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内容説明

奴隷制が始まって以来、黒人は白人による差別や迫害に常に遭ってきた。奴隷船やプランテーションでの非人間的な扱いを生き延び、解放され自由民になっても、「約束の地」である北部に逃れても、彼らが人種差別から解放されることはなかった。400年にわたり黒人の生活と命を脅かしつづけてきた差別と、地下鉄道、公民権運動、そしてブラック・ライブズ・マター(BLM)に至る「たたかい」の歴史を、アメリカ南部出身の著者が解説する。

目次

はじめに
第1章 アフリカの自由民からアメリカの奴隷へ
最初のヨーロッパ人とアフリカ人の遭遇
アフリカの中の奴隷制度
ヨーロッパ・アフリカ・アメリカ──「三角貿易」の始まり
捕獲から奴隷砦まで
「中間航路」の「船荷」
奴隷船での抵抗
オラウダー・エクイアノ
奴隷市場
初期の奴隷としての生活
第2章 奴隷としての生活
奴隷の始まり
綿花王を生んだコットン・ジン
プランテーションでの生活
奴隷たちの娯楽
民話に隠されたメッセージ
農地外での生活
自由な黒人
宗教的な信条
キリスト教と聖書の受容
結婚と家族
奴隷の抵抗のかたち
脱走による抵抗
逃亡奴隷
マルーン
地下鉄道
「約束の地」に到着して
一八五〇年──逃亡奴隷法
アンクル・トムの小屋
奴隷解放への模索
人種と肌の色の複雑な階層関係
同居による複雑な関係
第3章 南北戦争と再建──一八六一~一八七七
南北の格差
脱退への道
勝利の公算
脱退と南部連合
名ばかりの奴隷解放
南北両軍での黒人の役割
戦争の結末
解放民局と「四〇エーカーとラバ一頭」
再建のステージ
「借地人」と「小作人」
KKK設立される
教育と自決に対する欲求
自由獲得のための教育
「スピリチュアル」の誕生
奴隷解放がもたらしたさまざまな果実
移動の新しいかたち
南部再建の結果
第4章 「ジム・クロウ」とその時代──一八七七~一九四〇
法的逆戻り
ジム・クロウの法的影響
黒人に科せられたタブー
「科学的」人種論
ジム・クロウの執行
一八八〇年代から一九二〇年代のリンチ
教育面での削減
浮浪、賃貸囚人、新奴隷制度
パーチマン農場
プレッシー対ファーガソン訴訟
ブッカー・T・ワシントン
W・E・B・デュボイス
南部を後にして
「大移動」の第一波
大恐慌
「大移動」にともなう経済的向上
マーカス・ガーヴィーと「アフリカへの帰還」
ハーレム・ルネッサンス
一九三〇年代の連邦作家プロジェクト
第5章 第二の「大移動」から公民権運動まで──一九四〇~一九六八
世の中は変わる
第二の「大移動」
第二次世界大戦での兵役
終戦直後の変化
公民権運動に火をつけた二つの事件
公民権運動とブラックパワー運動
運動の始まり
一歩前へ
戦略としての座り込み抗議
フリーダム・ライダーズ
特別な年──一九六三年
ワシントン大行進
KKK再び(一九六四年)
一九六五年、南部
マルコムⅩ
たいまつを運ぶ
都心暴動の衝撃
一九六八年四月四日──キング牧師暗殺
第6章 公民権運動後からオバマ政権まで──一九六八~二〇一七
一九六八年──公民権運動の後
「でかい声で言ってみろ──おれは黒人で、誇らしい」
一九七〇年代──時代は変わる
雇用と住居
カーター大統領の四年間
レーガン大統領の時代
アファーマティブ・アクションへの反発
薬物との闘い
ロサンゼルス暴動
歪んだ刑事司法システム
世紀の転換期
オバマ大統領の八年間
第7章 アメリカ黒人の現在と未来
ジョージ・フロイド事件とBLM運動
シャーロッツビルの悲劇
「栄誉」のシンボル
アスリートたちによる抗議活動
白人優位性のかげり
今、アメリカで黒人として生きること
選挙における差別
教育における差別
住居をめぐる差別
「世代的な富」の欠如
レイシズムとは何か
人種的アイデンティティ
賠償問題
「ブラック・ライブズ・マター」の意味
これから
関連年表
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

54
10年ほど前にNHKブックスから『アメリカ黒人の歴史』を出していて、その改訂版ともいうべき内容だが、トピックを交えて独立時の奴隷制、南北戦争後の特に南部の状況、第二次世界大戦後の公民権運動とその帰結、現在のBLMまで、黒人の置かれた状況、あるいはアメリカ社会のありように深い憂慮を示しながら、日本の読者向けに分かりやすく概説する。著者は日本での生活と研究・著作活動が長く、おそらく日本語を完璧に解している。したがって訳書とは思えない読みやすさだ。アメリカを理解するための必読書の1冊に加えて良いと思う。良書。2021/01/12

Aster

53
濃い一冊だった。「私はあなたのニグロではない」を観てから興味を持って手に取った。何かを考える前に、事実をまず知らねばならないと感じた。悲観的で冷笑的な態度は自分の一時の感情しか救わない。壮絶な歴史と人間に対して正面で向き合う機会を与えてくれた。2021/01/21

ロビン

25
1441年にポルトガル人がヨーロッパでアフリカ人奴隷の貿易を始めたことから始まり、2020年のジョージ・フロイド事件とBLMまで時系列順にアメリカ黒人の歴史を概説した一冊。白人たちの、黒人が自分たちと対等になったり、成功したりすることに対する抵抗感や嫌悪感の根強さには慄然とさせられる。白人の黒人に対するリンチや暴力行為があっても警察がまともに動いてくれず、裁判でも白人の陪審員が白人に有利な判決を下す絶望感。奴隷制の頃よりもいいとはいえ経済的・教育的格差も大きく、まだまだ本当に平等な社会への道のりは遠い。2021/06/07

kan

20
アメリカ黒人史が非常によく整理されていて勉強になった。政治史や法律の変遷を追いつつ文化史とも絡ませ、黒人に関するあらゆる物事を縦横無尽に網羅していて興味深い。翻訳も非常に良く、翻訳本と気付かなかったほど。構造的差別への戦いの歴史がよく理解できた。アメリカの大学院出願の際、人種や親の学歴に関する質問があった。アジア人でfirst generationな私は優遇を受けたのだろうと思う。人種的多様性や経済的背景を考慮し大学合格者を決定するアメリカは進歩的に見えるが、歴史的負債を抱えているとも言えると思う。2022/03/27

崩紫サロメ

20
奴隷貿易から現代まで、アメリカ黒人の歴史を総合的に叙述する。10年ほど前にNHKブックスから出たものの改訂版であるが、2013年以降の「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」運動についても多くの紙幅が割かれている。つまりこれは、黒人の命が大切に扱われていなかった歴史を表している。アメリカの黒人たちは自分たちの地位向上のために様々な方法を取ったが、個人的に興味を持ったのはブッカー・T・ワシントン(タスキーギ大学創立者)など教育関係。2021/06/09

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